温泉街のシンボルともいえる存在が「共同浴場（外湯）」だ。温泉街が形成される端緒となった源泉とともに生まれ、長い歴史をもつ共同浴場も少なくない。

うれしいことに、その多くが源泉かけ流しで泉質がよく、料金も数百円と一般的な入浴料金よりもリーズナブルだ。なかには無料で開放されている外湯もある。

たとえば、予算的に厳しいときは、温泉のついていないリーズナブルな宿（民宿、ビジネスホテルなど）に部屋を確保し、そこを拠点に共同浴場に通ってもいい。また、宿の温泉の質がいまいち（たとえば循環ろ過している）であれば、湯の質が担保されている共同浴場を利用するのも選択肢のひとつだろう。

そこで、今回は温泉好きなら一生に一度は訪ねておきたい、とっておきの共同浴場を関東周辺に絞って紹介したい。

草津温泉・白旗の湯（群馬県）

日本を代表する人気温泉地で、湧出量でも全国トップクラス。温泉地として「泉質主義宣言」をしているように、源泉の質には絶対的な自信をもっており、ほとんどの施設が源泉かけ流しである。ありがたいことに、湯畑の近くにある共同浴場「白旗の湯」「千代の湯」、そして地蔵源泉の近くにある「地蔵の湯」は観光客にも無料で開放されている。いずれも源泉が異なるので入り比べてみるのも楽しいが、湯畑に最も近い「白旗の湯」は源頼朝が発見したと伝わる歴史ある湯だ。

伊東温泉・七福神の湯（静岡県）

全国屈指の源泉湧出量を誇る東伊豆の名湯。熱海や箱根ほど混雑していないので、落ち着いて湯巡りを楽しめる。「七福神の湯」と呼ばれる共同浴場が温泉街に点在し、いずれも源泉かけ流し。昔ながらの銭湯の雰囲気が漂う「松原大黒天神の湯」、最も規模が大きく観光客も利用しやすい「毘沙門天芝の湯」など、それぞれ個性が異なるのも楽しい。料金は350～450円。共同浴場のほかにも、東海館をはじめ文化的な観光スポットや飲食店が多いのも魅力である。

四万温泉・御夢想の湯（群馬県）

上州を代表する出湯のひとつ四万温泉は、草津や伊香保ほどではないが、同エリアでは人気の温泉地のひとつ。それでも鄙びた風情が漂う温泉街は混雑とは無縁だ。温泉街にある共同浴場「御夢想の湯」「上の湯」「河原の湯」は無料で入浴できる。いずれも新鮮でアツアツの湯が楽しめる。特に御夢想の湯は小さな湯船だが、そのぶん新鮮な湯が常時あふれ出している。ただし、一般客は9時から15時までと時間制限があるので要注意。

川原湯温泉・王湯（群馬県）

ダムの湖畔にある温泉地。八ッ場ダム建設の影響で旧温泉街はダムの底に沈み、新天地に引っ越してきたという経緯がある。ダム湖畔にある共同浴場「王湯」は、温泉地のシンボルといえる施設で、ダムを一望できる露天風呂もある。内湯、露天ともに源泉かけ流しで、透明湯は硫黄（硫化水素）が香る本格派だ。施設自体が新しくキレイなこともあり、観光客でも臆することなく気軽に入浴できる。入浴料金500円。

喜連川温泉・市営露天風呂（栃木県）

さくら市にある温泉地で、「日本三大美肌の湯」と評される泉質の湯が湧く。全国的な知名度があるわけでも、情緒ある温泉街が存在するわけでもないが、気軽に日帰り入浴できる温泉施設が点在している。特に広々とした岩風呂が自慢の「市営露天風呂」は、厳密には共同浴場とはいえないが、利用者のほとんどが地元住民。50人が同時に入れるほどの広さで、開放感もたっぷり。茶褐色の湯がかけ流しだ。入浴料金は400円。