いずも空母化。F-35B搭載に必要な改修は?
いずも空母化とF-35B搭載?
12月後半に見直される現防衛大綱の中で、「多用途運用母艦」を導入する方針で、そのため「いずも」型護衛艦を改修することが報じられています。
また、艦載機としては、F-35Bが想定されているようです。航空自衛隊が既に導入しているF-35Aと異なり、F-35Bは短距離離陸・垂直着陸(STOVL)型で、主にアメリカ海兵隊やイギリス海軍での運用が想定されているタイプです。
F-35Bは前述の通り、STOVLと呼ばれる離発着方式を行うタイプです。これは、燃料や武装を搭載して重くなっている離陸時は短距離の滑走を行って離陸し、燃料を消費して軽くなっている着陸時は垂直に着陸するという運用を行うもので、アメリカが保有する空母のような長大な飛行甲板を持たない空母や強襲揚陸艦に搭載することを想定しています。
F-35B搭載に必要な改修
飛行甲板は運用する航空機の重量に耐えられなければいけませんし、排気が下に向く航空機を艦艇で継続的に運用する場合、その排気の熱に耐えられる甲板が求められます。例えば、タンカーを改修したアメリカ海軍の病院船マーシーは、従来からヘリコプターを運用する甲板を持っていましたが、V-22オスプレイ運用に適さないため、オスプレイを運用できるよう改修が予定されています。
では、具体的にどういう改修が必要となるでしょうか。F-35Bの運用を想定している艦艇を見てみれば、いずもに必要とされる改修内容も見えてくるでしょう。例えば、イギリス海軍の空母クイーンエリザベスでは、ジェット・ブラスト・ディフレクターと呼ばれる「盾」が甲板に仕組まれています。これは、高熱で強力な排気の直撃から甲板上の乗員や機材を守るための装備で、甲板からせり出た盾で排気を上空に逃すことで乗員を守っています。単なる板ではなく、排気の熱に耐えるため、内部には冷却水が循環する構造になっています。
また、飛行甲板自体にも熱対策が必要です。F-35Bを継続的に運用するには、米海軍航空システム・コマンドの研究によれば、華氏1700度(摂氏約927度)以上の熱に耐える飛行甲板が必要とされています。そのため、アメリカ海軍のアメリカ級強襲揚陸艦、ワスプ級強襲揚陸艦も、F-35Bを運用するために飛行甲板に耐熱コーティングを施すなどの改修を受けています。
以前、いずもの飛行甲板でV-22オスプレイが離着陸したことがあり、オスプレイの排熱に耐えられるのではないか? という推測がされたことがありました。しかし、オスプレイの継続的な運用に必要な耐熱温度は華氏380度で、摂氏約193度とF-35Bと比べればずっと低い要求です。F-35Bはオスプレイとは桁違いの排熱を出しており、いずもの飛行甲板も改修が必要になることでしょう。
F-35Bの航続距離や多用途性を考えれば、ハード面に留まらずソフト面でも、いずも以上の管制・指揮能力が求められるでしょう。機材の更新・追加に加え、より広いスペースの確保や、人員の増員がなされると考えられます。
有用性は?
しかし、仮に艦載機としてF-35Bが導入されるとなると、運用的には現用機の後継ではなく、新規の導入という形になります。厳しい財政が続く中で新たな戦闘機を導入することの是非や、F-35B運用を担うのは海上自衛隊か航空自衛隊かといった問題も出てくるでしょう。
いずれにせよ、いずもの空母化とF-35B導入がされたならば、海上自衛隊が新たな時代を迎えることになるのは間違いないでしょう。小型の空母・強襲揚陸艦と少数のF-35Bの組み合わせの有用性については議論がありますが、これが目論見通りに行くか、中途半端に終わってしまうのか、それともまだ他の「本命」が控えているのか。結果が判るのは、まだまだ先になりそうです。