ゴルフ界の統合合意、広がる波紋。ついに米国議会がPGAツアー、PIF、リブゴルフの3会長を召喚
ゴルフ界を震撼させた電撃発表は、ゴルフ界の枠を超え、米国全体の問題へと発展しつつある。
PGAツアーのジェイ・モナハン会長が、欧州拠点のDPワールドツアーとともに、リブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」との統合に合意したことを、突然、発表したのは6月6日(米国時間)の朝だった。
あれからほぼ2週間後の6月21日、米国上院常任小委員会は、モナハン会長とPIFのヤセル・ルマイヤン会長、それにリブゴルフのグレッグ・ノーマンCEOの3名に召喚状を送り、7月11日に同委員会に出向いて質疑に応じるよう正式に要請した。
なぜ、米国議会がゴルフ界のこの3名を召喚したのか。
6月6日に発表された統合合意に至る過程において、交渉のテーブルについていたのは、PGAツアー側はモナハン会長と理事2名、PIF側からは、おそらくはヤセル・ルマイヤン会長のみとされており、それ以外は、選手たちも他の理事や従業員らも誰一人、何一つ、知らされていなかった。
それゆえ、この発表は、ゴルフ界のほぼ全員にとって青天の霹靂だった。
そもそも、モナハン会長は、リブゴルフが昨年6月に創始されて以来、サウジアラビアやPIF、リブゴルフを激しく批判してきた。9・11(同時多発テロ)やジャーナリスト殺害事件との関連も指摘し、PGAツアーの選手たちにも、リブゴルフは「血塗られたマネー」で創設されたツアーゆえに移籍しないよう呼び掛け続けてきた。
しかし、ここへ来て突然、サウジ側と手を携えることを決めたと一方的に通達したため、PGAツアーやDPワールドツアーの選手たちからは驚きや怒り、戸惑いの声が多数上がっている。
声を上げたのは、選手たちだけではなかった。米司法省は、この統合が反トラスト法(独占禁止法)に違反する可能性を指摘。さらに米国上院財政委員会は、この統合が米国にとって正当で妥当なものであるかを問い始め、どちらも調査に乗り出したのだ。
そして6月21日、上院常任小委員会のロン・ジョンソン会長は、モナハン会長、ルマイヤン会長、ノーマンCEOの3名に対し、7月11日に正式に召喚するレターを送り、「この統合が米国にとって何を意味するのかを米国民は知る権利がある。統合に関わった中心人物たちは、それを公けの場で説明するべきである」と記している。
注目すべきは、リブゴルフのノーマンCEOは「統合の交渉に関わった中心人物」ではないという点だ。ノーマンにとっても、統合合意は寝耳に水の話だった。そして、統合後は「モナハン会長がリブゴルフを統括する」「ノーマンはお役御免になる」と見られているため、そんな立場にあるノーマンが何をどう語るのかは、ある意味、大きな注目を集めるはずである。
そして、モナハン会長は現在は体調不良による療養中とされており、7月11日の召喚に対応できるのかどうか。
いずれにしても、この統合の話は、もはやゴルフ界の枠に留まらず、米国全体が関心と注目を寄せる大きな出来事へと発展しつつある。