「能登には来ないで」の現実~能登半島地震2か月 第5回
最終回の第5回は、基幹メディアといわれる新聞・放送の取材・報道をみていきます。
■放送
テレビをつけると、NHKのテレビ画面はまだL字です。ちなみにNHK-BS(衛星放送)でもL字を続けており、被災地以外でも見ることができます。AMラジオのNHKラジオ第1は、全国放送にカットインする形で、定時的に給水情報が流れます。また、自動音声システムを使ったライフライン情報の放送も実施しています。北陸放送MROラジオは、一部地区のAM局の運用休止予定を「一時延期」する旨を、放送の合間に流しています。民放各局の情報は、民放連がまとめています。
気になっていたコミュニティFM放送「ラジオななお」の情報は、NHK放送文化研究所の文研ブログで紹介されています。地元ケーブルテレビには、七尾市が運営する「ケーブルテレビななお」があります。311の時は臨時局が開設されたりと、注目を集めた地元のコミュニティメディアですが、今回はあまり注目されていない印象があります。地元自治体がLINEでライフライン情報を発信するのが一般化したためでしょうか。
■新聞
当たり前ですが、報道機関も被災しました。たとえば、北陸中日新聞七尾支局でも、資料庫のファイルは散乱し、2月までトイレは使えず、穴水通信部は建物自体使用ができなくなったそうです。
石川県に本社をおく新聞には、発行部数順で北國新聞、北陸中日新聞の2つがあります。発行部数も記者の数でも2倍近いと言われていますが、紙面では互角の内容といってよいのではないでしょうか。今回の震災報道も、取材記者の総数では北國新聞が目立つとされていますが、北陸中日新聞もオール中日で石川県以外からの記者を特派しています。ちなみに、筆者の所属学科OBの新聞記者も、在京紙・地方紙含め何人も珠洲に応援に入っています。北國新聞も販売店の多くが被災したと聞いていますが、取材拠点はおおかたしっかりしているように見受けられました。
直近の報道課題としては、石川県が犠牲者氏名の公表を遺族同意を条件としていること、関連死の認定・公表が地元自治体の判断のため作業が滞っていること、避難所の取材が強く規制されていること、地元報道機関間で協調が取れていないこと、などが指摘できるかと思います。この点については、民放online3月1日配信「能登半島地震をめぐる取材・報道の課題」で書いています。
また震災関連記事としては、琉球新報1月12日付「能登半島地震 問われる報道の真価」、FNNプライムオンライン1月23日配信「能登半島地震 メディアはどのように機能したのか」、東京新聞2月25日付「復旧へ報道 中長期的視点を」をご覧ください。