【K-POP論】LOVELYZ帰国。ファンの「あるある」、来日公演後の“ロス”への処方箋
ああ、もう彼女たちは日本にいないんだな。
K-POPの8人組ガールズグループLOVELYZが9月12日から23日までの来日スケジュールを終え、24日に韓国に帰国した。
その間、タワーレコードなどが主催したアルバムリリースイベントをのべ10会場で計17回行い、さらに大阪と東京でコンサートを4公演行った。リリースイベント(リリイベ)では連日、握手会、サイン会、写真撮影会をバリエーション豊かに開催。ファンと多く交流する機会となった。
それが終わったときの”ロス”。
日本でK-POPを楽しむ以上、避けられない感情だ。どのグループを応援していたって同じはず。いつ来るか分からない来日を待つ。来たのなら心行くまではしゃぐ。楽しい。そしてその後に訪れる虚脱感。当たり前だが、彼女たち・彼らは自国に帰ってしまうのだ。
日本の現場では右から見ても左から見てもよかった彼女たちのフォルム。再びその自由に制限がかかる。インターネットの中の人たち。平面の世界で見る時間が再びやってくるのだ。
リリイベ、コンサートで垣間見たメンバーの多彩な表情
本当に色濃い日々だった。
ベイビーソウル、ジエ、ジス、ミジュ、Kei、JIN、スジョン、イェイン。8人とリリイベで直接ふれあい、その前後のコンサートでじっくりグループの良さを堪能できた。
オフ日を除いた12日間では、初っ端からいい意味で想像と違うものを目にできた。
今回のリリースイベントのタイトルは「LOVELYZ 6th Mini Album『Once Upon A Time』発売記念リリースイベント」。目玉のひとつはこのアルバムのタイトル曲(リードトラック)の「Beautiful Days」が日本で初披露されることだった。イベントの序盤では、こちらも取材者ながらに意気込みのようなものがあった。
「よっしゃYouTubeで観てきたもの、そのままを直で観られる」
しかし、これは少々予想違いのところがあった。メンバーたちの目の前にファンがいる。当然、メンバーに気づいてもらうべく手を振る。メンバーの名前の入ったグッズを身に着ける。その文字を光らせる。あるいはスマホやタブレットで文字を動かす。
するとメンバーは曲の途中、特に自分が歌っていないパートでは振付を少し休めてでもリアクションをしてみせた。どんどん手を振り返していく。ピースしたり。ああこれぞ「リリイベ」。ライブ感ありまくり。考えてみれば当たり前のことなのだが。これを含め、メンバーの様々な表情を見る楽しみがあった。
9月20日、立川ではミニライブ後の特典会での「グループ写真撮影(写メ)会」のグループ分けをくじ引きで決めた。AとBに分ける。Aに入ったスジョンは、ふと「A A A A」とRAINBOWの名曲「A」のサビを口ずさんでいた。これまたライブ感。
「ああその歌、知ってる」と思った。日本でK-POPガールズグループのブームが始まった2010年に韓国で発表された有名な楽曲。後で調べたら、97年生まれの彼女が13歳の時の曲だった。そうやって少女が大人になるくらいの時間、日本でもK-POP文化が続いてきたんだなと時の流れを感じたりもした。
また、10日以上イベントが続いていくと、彼女たちの言葉を拾っていける点も興味深かった。
今回は、イベント開催地の地名にちなんだ「あいうえお作文」が秀逸だった。なかでも”オモロい美女”ジスの活躍が目立った(イベントMCのORI氏が丹念にイベント中のメンバーの言葉を文字に起こし、SNSにアップしていた)。
渋谷では
し:しくしく
ぶ:ぶたになったら
や:やぁだ
柏では
か:かなぁ?
し:しあわせかなぁ?
わ:わたしも!
あのー、ジスさん。あいうえお作文は、できれば名詞・形容詞・副詞で言いましょう! 「かなぁ?」は若干禁じ手に見えるが、セーフ。かわいいからOK。
リリイベの合間に行われたコンサート「Alwayz2 in Japan」でも名言があった。9月19日の東京での第1部公演では、中間のMC時に”強気な姫”ミジュが感極まり、言葉に詰まるシーンが。その後、締めの挨拶で本人から本当にリアルな日本語表現が飛び出した。
「さっき 目から水、違う~」
泣いてない、あるいは涙は流していないと言いたい。この表現は本当に素晴らしかった。筆者は外国語専攻だから言うが、彼女は日本語がきっと上手くなる。言いたい表現に対し語彙数が追い付いていなくとも、なんとか気持ちで伝える。これは外国語学習で非常に重要な要素だ。ペラペラに話そうとする人が上手いのではないのだ。伝えられる人が上手い。しかも彼女の場合、間違いをあまり恥ずかしがらないメンタリティが素晴らしい。
いっぽうでこの公演時には、リーダーのベイビーソウルが日本のファンへこんなメッセージを口にした。さすがリーダー。こちらのことをよく分かっていてくれるというものだった。
「同じ場所で、ずっと待っていただいていることは決して簡単じゃないと思います。だからこそありがたく思っています」
再び”待つ時間”をどう捉えるのか
”待つ”という時間をどうとらえるか。これが日本のK-POP文化ではとても大切なことではないか。
応援するグループの再来日を待つ時間を、嘆くのか、楽しむのか。
もちろん、これも徹底的に楽しもう。応援するグループの帰国は、「現実に戻る」ことではない。会った時の鮮烈な記憶を基に「日常生活にK-POPをプラスしていくために、愛情を猛烈チャージ(充電)して再スタートする」瞬間でもある。待つことが主体だと考えるくらいでもいい。だってしょうがないじゃないか。自分たちは海外のものを好んで見ているのだ。彼女たち・彼らは韓国に帰る。仮に自分たちが韓国に出向いた時も同じことで、日本に帰る。
勇気を持とう。自分たちにはYouTubeがある。日本でK-POPガールズグループのブームが始まった2010年頃に、時を同じくして世界的に大成長したプラットフォームだ。ベタに検索サイトで「LOVELYZ YouTube」と入力しても306万もの検索結果が出てくる。ここからいいものを発掘していこう。これとタワーレコードで買ったCDを合わせ、楽しんでいくのだ。
動画を見ていく際、どんどん想像・妄想を加えていこう。韓国語だから分からない部分が圧倒的に多い。インプットできる情報量がじつは少ない。だからアウトプットする。想像・妄想。これぞ海外(日本)のK-POPファンの特権だ。本連載はこの時間のちょっとした補助の役割も果たせればと考えている。
筆者はこう見る。今回の2楽曲の動画から
今回のLOVELYZに関しては、リリイベで披露された2曲について見ていこう。ミニアルバムのタイトル曲「Beautiful Days」以外の2曲だ。現場ではうわーっと騒ぐことに夢中だっただろうから、改めて曲の背景からじっくりと。
まずは「Close to you」。
以下、この動画についての筆者の勝手な想像・妄想。
「Close to you」とは「あなたに近づいていく」という意味。この動画では赤の衣装がとても印象的だ。すでに終わった恋愛を歌った「Beautiful Day」でも赤の衣装が採用されたが、この曲では同じく赤ながら、よりPOPなイメージに。ここでは衣装でも高揚感を表現したかったのでは!? (正解は知りません。ただただ、想像しまくることです)。
なぜなら。ミニアルバム「Once Upon A Time」全体のコンセプトから考えると、そう感じ取れるのだ。「Once~」とは、「昔」「あの頃」といった意味。童話などでの冒頭、「むかしむかし」といったケースに使われる。このアルバムの場合、過去の一番美しい時を振り返る、という意味になる。
遡ること4ヶ月前。5月21日のソウルでのショーケースではスジョンがこんな話をしていた。
今回のアルバムのテーマは、愛です。過去の恋愛、別れ、ふたたび始まる愛、初恋などに対する思い出をLOVELYZだけのカラーで解き明かしてみました。誰にとっても愛に関する大切な思い出があるでしょう。多くの方にアルバムを聞いていただき、いちばん輝いた時を思い浮かべていただきたいという気持ちです。
つまり、様々な種類の愛を語るということ。アルバムの楽曲のなかでも、「Close To You」は楽しい気持ちを歌う点でアクセントになっている。だからかなりキャピキャピした衣装なのではないか。あくまで想像。正解は知りません。
いっぽう、同じく今回のリリイベで披露された「Secret Story」。韓国のテレビでも歌っている動画がアップされているが、こちらは韓国でのラジオ出演時のもの。リラックスしつつ、より歌唱に集中するといった姿が垣間見える。この曲に関しては、今回の日本のリリイベ時にも真剣な表情で歌っていたのでは? 少し違った姿を観ることができる。
新しくファンになられた方には、こちらがおすすめ。公式のYouTubeチャンネル。 ここからお気に入りの楽曲が見つかれば、タイトルをコピーペーストし、現地音楽番組の動画を探っていくとすごく世界が広がっていく。
……と、筆者自身も大いにロスに陥りつつ、あれこれと書いているうちに思った。今回のメインの楽曲といえる「Beautiful Days」、彼女たちが去った今聞くと、また違った感じに聞こえるんじゃないか。今回の来日、本当に美しい日々だった。仕方なく思い出になっていくが、勇気をもっていこう。再び来日を待つ時間は、必ず楽しめる。
だからといって、この楽曲のように”お別れ”という意味では決してない。
最終日、彼女たちから預かった日本のファンへのメッセージにはこう記されていた――。