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#バンクシー が教えてくれた消えた1億5000万円権利の行方 消費税だけでも3000万円

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
『GIRL WITH BALLOON (少女と風船)』出典:サザビーズ

KNNポール神田です。

英国で覆面アーティストとして活動するBanksy(バンクシー)の代表作「Girl with Balloon」(少女と風船)が(2018年)10月5日、104万2000ポンド(約1億5000万円)で落札された直後に“自壊”しました。オークションを実施したサザビーズによると、額縁にシュレッダーが仕掛けられていたためとしています。

出典:バンクシーの作品が約1億5000万円で落札された直後に“自壊” 額縁にシュレッダーの仕掛け

これは、有名オークションのSotheby'sにおいての大事件となった

Sotheby'sは、世界的に有名なリアルなオークションハウス。芸術作品を中心に高値のオークションを開催し、その手数料をビジネスモデルとしている。

Sotheby'sの公式サイトにおいてもこの『事件』はトップページで告知されている。

https://www.sothebys.com/en/articles/sothebys-gets-banksyed-at-contemporary-art-auction-in-london?locale=en

そして、この1億5000万円を裁断するイタズラをしかけたbanksy自身がその手口を動画で公開している。

banksy自身が、もしもこの絵がオークションにかけられたらということを想定して電動のシュレッダーをしこんでいたのだ。

http://www.banksy.co.uk/

風刺作家集団、banksyの狙い

banksyとは…イギリスのロンドンを中心に活動する覆面芸術家。社会風刺的グラフィティアート、ストリートアートを世界各地にゲリラ的に描くという手法を取る。

https://ja.wikipedia.org/wiki/バンクシー

正体不明の芸術テロリストとも呼ばれる…

1億5000万円もの高値で、競り落とされたbanksy作の『GIRL WITH BALLOON (少女と風船)』が自ら仕掛けたシュレッダーによって裁断された…。なんというもったいないことを…と普通は想像する。しかし、ショックを受けるのは、その高値で競り落とした人だ。

おそらく、その人は、所有することによって、1億5000万円以上の『価値』を想像してその作品が生み出す『価値創造』に期待して落札というか投資をしている。それは、競り落とすことによって生まれる作品に対しての『権利』を所有できるからだ。

しかし、裁断されたことによって、その『価値』は一瞬にして『喪失』されたことになる。実際は、banksyの芸術として、その裁断された絵画はさらに『価値創造』を生み出すことになると筆者は考えている。

そして、banksyの風刺の狙いは、オークションの利益の行方だったのだろう。

作者に1銭の価値も、渡らないオークション二次流通の課題

英国の覆面創作集団のbanksyは、オークションの本質を『問題視』し、風刺しているように筆者は思う。

もちろん、1億5000万円はbanksyの手元に入らない。Sotheby'sに手数料をさらに支払い。英国の付加価値税VATを支払う。

ちなみに英国の消費税は20%なので、消費税だけでも3000万円になる。そして、banksyには1銭も支払われない。もちろん、banksyの価値向上に多大なる貢献をするが…。banksyは、そこにアンチテーゼとして、絵をシュレッダーで断裁するという仕掛けをほどこしたのだ。

むしろ、私たちが考えないといけないのは、大量生産の作品の場合は、『著作権』や『出版権』や『印税』という多種多様な『権利』があり、それを代理で徴収してくれる『機関』も多い。しかし、希少な1点モノの作品には、それらの『権利』が何も存在しないのだ。

21世紀のシェアリング時代にふさわしいクリエイティブに対する『権利』が必要だ!

1億5000万円の、売上に対する英国への付加価値税(VAT)だけでも,3000万円だ。

ゾゾタウンの前澤友作社長が落札したジャン=ミッシェル・バスキアの《Untitled》は123億円だった。しかし、付加価値税だけでも単純計算で24.6億円となる。さらにSotheby'sに対して一定の手数料を支払うのでさらに高額となる。『バスキア』の価値は上がるが、『バスキア』の遺族には1銭もはいる仕組みになっていない。

これは、どこかがおかしい。二次流通が繰り返されればされるほど、希少品の現物限りの創作者は、作品が『流動化』すればするほど、少なくとも付加価値税よりも『付加価値』を担保されるべきだと思う。価値を認めて、オークションハウスの手数料と付加価値税を支払う落札者がいるのだから、『著作者税』というような税金、もしくは『権利』に対してのコストも発生するべきだと筆者は思う。それらが担保されて、はじめて『文化』でメシが食えるクリエイターが育つのだ。

最近、メルカリで新刊本を買って、その場で出品してから、売れてから発送するまでに読み切るという読書をおこなっているが、著者や出版社には、その利益が還元されていないことに疑問を思い、メルカリの小泉社長に直談判してみた。即答は避けられたが、著作者や版元にも『流動化』に対する利益が還元されるべきだという考えを示していただいた。

サザビーズやクリスティーズにも同様に、アーティストやクリエイターに利益が分配されるよう、識者は働きかけるべきだろう。banksyの世界を驚かすようなこの潮流の中で、当然、存在しうる作者の『分配の権利』が担保されることが必要だと強く思った。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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