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夏の熱海 大混雑を回避できる優雅な「裏観光地」とは?

とらべるじゃーな!穴場ずらし旅、愛好家

関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。

まもなくお盆休み。関東で最も混雑する観光地の1つが、熱海です。今回は、特に人出が集中する花火大会当日(8月8日)に熱海を訪ねるチャンスがあり、大混雑を回避する「穴場ずらし旅」に挑戦してみました。

鎌倉幕府の原点 伊豆山神社は、絶景なのになぜかすいている!

まずは、伊豆山神社へ。源頼朝、北条政子が結ばれた地であり、鎌倉幕府の原点の1つとも言える由緒ある神社です。熱海駅から路線バス、車とも約7分の高台にあります。

初島と伊豆大島の素晴らしい眺望です!

しかし、花火大会当日のお昼頃でも、写真のようにベンチは余裕あり。

ゆっくりと参拝を済ませることができました。路線バスに乗らなければならないのは、熱海の他の観光スポットと同じ条件なのですが、なぜかあまり混まないのが、伊豆山神社の7不思議。

駐車場(上駐車場)には、歌手の小泉今日子さんが奉納した鳥居があります。

なお、車で訪ねる際には、上駐車場と下駐車場があり、上駐車場は、837段の石段を登らず、直接本殿を訪ねることができます。

海を望む絶景のMOA美術館は、混雑が控えめ!

伊豆山神社から、車(またはタクシー)で4分のMOA美術館も、混雑は控えめ。熱海駅からは1時間に最大4本の路線バスが出ていますが、訪ねる人は想像よりは少なめです。

MOA美術館でも、相模湾の絶景が出迎えてくれます!

海の絶景は、冷房が効いた館内からも望むことができます。花火大会の日も、ベンチには余裕がありました。

館内の展示は、歌川広重など和の風景がテーマです。首都圏の各所を描いた絵は、現在の様子を示す写真との比較ができ、若い人にも人気があり、少し待つこともありましたが、終始ゆとりを持って、回ることができました。

写真のように、シニア、若いカップル、子ども(家族)、ひとり旅と、人を選ばない分かりやすい絵の展示が特徴です。

お気に入りの1枚「役者舞台之姿絵 やまとや」 MOA美術館は、写真撮影が自由なもの大きな魅力です。回った範囲で撮影禁止の場所は、ありませんでした。

このようにその親しみやすい魅力の割には、さほど混雑しないMOA美術館。伊豆山神社同様、熱海でも目立たない山側にあるため、存在を知らない人がいたり、回りづらかったりということかも知れません。(法則 混雑日の熱海は、山側を狙え

MOA美術館では、カフェや飲食も充実。お昼時でしたが、5分待ちで入ることができました。

混雑する観光地では、場所代だと考えて、少し割高なお店を狙うのが法則。「ラ パティスリー デュ ミュゼー パール トシ・ヨロイヅカ」は、ケーキと紅茶で1500円コースと少し割高で、他に入場料のハードルがある(カフェのみの利用者がいない)のもポイント。

晴天でも涼しいテラス席は、特にゆったりと過ごせます。

選んだケーキは、カシスとキャラメル、イチジクという甘い物好きの女子が気絶しそうな組み合わせ。味も絶品です。

お勘定は1540円でしたが、仮に場所代を500円とすると、このセットに払った金額は実質1040円とも考えられ、この質なら格安だと感じました。

十国峠の絶景は、「熱海を訪ねたらここの絶景を忘れるな」と伝わる名所だが、訪ねる人は限られる

続いて訪ねた十国峠は、クルマならMOA美術館からわずか17分の場所にあります(公共交通の場合、熱海駅まで戻り、路線バスで40分弱)。

まずは、道の駅(森の駅 箱根十国峠)を訪ねます。

道の駅から、15分ごとにケーブルカーが出ています。お昼過ぎに訪ねましたが、並ばずに乗車できました。

十国峠は、十の国を見ることができる場所という意味で、360度の眺望! 東には、湯河原や真鶴の景色を望みます。

夏場は気温が高いため雲が上がりやすく、富士山は見えませんでしたが、西には駿河湾と、三島や沼津の町を望むことができました。

熱海からJR東海道線ですぐの、熱海と三島・沼津は、十国峠から見ると、山並みに隔てられた「別の国」のように感じます。この下にトンネルが掘られる前は、かなりの距離感があったことでしょう。

十国峠は、実は熱海市ではなく、函南町に属します。しかし、昭和4年の『熱海漫談』には「熱海に遊んで、此の山上の大観を極めないのは大きな忘れ物である」(熱海で遊んだなら、十国峠の絶景を見ないのは大きな忘れ物である)と記されたように、熱海来訪の足で訪ねたい場所です。このルートは思いつく方が少ないようで、ケーブルカーも空席がある便もあったほどです。

十国峠まで来たら、丹那断層を見てみよう!

丹那盆地は、十国峠からクルマでわずか15分。熱海から見て、山向こう(十国峠のふもと)。

田んぼが広がり、古くから酪農も盛んな場所です(公共交通機関の場合、函南駅からバス便があるが、本数が少なく、少なくとも片道はタクシーを使いたい)。新幹線や東海道線は、ちょうどこの真下、トンネルの中を走っています。

丹那断層は、地元の高校生のおすすめで知りました。
「地震の跡など自然に触れられます」「ジオパークという伊豆半島に多くある有名スポットのひとつで、地震により池の淵がずれている事などを見る事が出来ます」

1930年(昭和5年)11月のこと。のどかな丹那盆地に大きな断層が生じ、甚大な被害をもたらした、北伊豆地震が発生しました(死者272名)。その丹那断層を実際に見ることができる場所があります(函南町)。

丹那断層公園です。元は丸い池の淵(ふち)だった石垣が、完全にずれているのが分かります! このほか、水路の石垣、農家の敷地を区切る石垣のずれも見学できます。

半地下の場所で、断層の断面も見学できます。写真の昭和5年の断層は、まさに北伊豆地震を引き起こした断層です。

断層は、NHK番組の「ブラタモリ」でもよく出てくるテーマ。直近では、関ヶ原の戦い編で、石田三成の側近を敗北に導いた要因の1つが「断層」の存在だったという話題がありました。しかし、断層を直に見る機会は少なくなかなかイメージがわかないもの。その意味でも、丹那断層は必見です。

【ブラタモリ関が原】タモリさんが関ヶ原の戦いの舞台を探る|ロケ地#239(とらべるじゃーな!)

仮に断層に興味がなくても、絶品のソフトクリームが待っている?

さて、ひとり旅なら良いのですが、同行者がいる場合、断層には興味がないかも知れません。しかし、好都合なことに、クルマで2分(徒歩約14分)の場所に、オラッチェという酪農施設があります(函南町)。

酪農施設オラッチェは、地元の高校生のおすすめで知りました。
「動物に餌やりできる場所です」

ソフトクリームが絶品! 折からの日差しで溶け出してしましましたが、ギュッと重く歯応えを感じるような濃厚なソフトクリームは、他では味わえないもの。

日差しは強いものの、涼しい風が吹き抜ける、避暑地のような気候でした。

オラッチェは、派手な商業施設の雰囲気がなく、田んぼの中の農場を、そのまま見学できるような雰囲気。ヤギや牛に、至近距離で触れ合うことができます。首都圏からの観光客が押し寄せることもないため、非常にゆとりがありました。

熱海駅から、十国峠に寄らずに直行すれば、クルマでわずか16分! これほどののどかな場所があったとは、驚きです。(法則 函南町は、熱海から車ですぐなのに余裕がある

お土産も充実しています。静岡県でよく見かける丹那牛乳の工場は、すぐ隣にあります。

※公共交通機関が不便なエリアですが、次のルートが考えられます(お出かけの場合は、細心の時刻をお調べください)。

少し足を伸ばせばレアな「新幹線」の地名!

酪農施設のオラッチェからクルマで16分。知る人ぞ知る「新幹線」という地名の場所を訪ねることもできます。

カーナビに、「新幹線公民館」または静岡県田方郡函南町上沢747−4を入力してみてください。公共交通機関なら、函南駅から路線バスの幹線下停で下車します。

かねてから1度訪ねてみたかった、新幹線公民館です!

新幹線という地名は、熱海と三島を結ぶ、丹那トンネル(東海道線)や新丹那トンネル(新幹線)の建設に携わった人たちが作った集落です。あの丹那断層や酪農施設のオラッチェの真下を通るのが、丹那(新丹那)トンネル。(法則 よく調べるとレアなスポットが見つかる

いずれも、熱海駅のホームから見えているトンネルです。

丹那トンネルが開通(1933年)するまで、東海道線は、現在の御殿場線のルートを大回りしていました。トンネルの工事中に、丹那断層による北伊豆地震も起き、多くの犠牲を払い、現在の便利な移動が可能になっています。

今回は、熱海旅行から、函南町まで足を伸ばしましたが、クルマならアクセスは容易です。熱海駅のホームから見える丹那(新丹那)トンネルの真上にある、十国峠や丹那断層、丹那盆地も、熱海旅行の選択肢に入れておくと、混雑を回避し、ゆっくりとした旅行が楽しめるはずです。

なお、多少混んでも熱海市街!という方は、熱海は江戸から令和時代まで、地層のように積み重なった町であることがポイント。興味のある時代を絞って、深く狭く動けば、混雑は緩和できることが多いです。

詳しくは、下のページの「【特集】《熱海》大混雑を避けるには見たい時代を絞ってじっくり回る!」をご確認ください。

【伊豆の絶景】電車で行くモデルコース|1~2泊・日帰り・穴場あり(とらべるじゃーな!)

穴場ずらし旅、愛好家

宿泊歴500泊。関東周辺の穴場★ずらし旅スポットを紹介。日本テレビ(2023年)、TBSテレビ(2024年)に旅の専門家として登場。Yahoo!ニュースエキスパート公式旅行ライター(2023年7月企画賞)。JTB運営・地理旅行検定取得済み。東京都在住。

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