大学教員がChatGPTに講義中の質問を答えさせてみて思うこと 〜AIは心の悩みを救えるのか〜
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こんにちは、赤田太郎です。
わたしは現在3箇所の大学・短大で教鞭をとっています。いま大学では、その人工知能AIをどのように活用していくのかまさに議論されています。私のところにも、その活用と注意点について大学当局からメールが送られてきていて、ちゃんと考えないとな〜思いながらも、すでに仕事で活用しています。
先日、ある講義中に学生に対してChatGPTを使うか尋ねたところ、意外にもまだ誰も使っていない様子でした。せっかくなので、講義の質問に対して私が答えるのではなく、ChatGPTを使って答えさせる実演をしました。
結論からいうと、まだまだ厳しいかなぁーという感じでした。
この記事では、その出来事と厳しいなぁと感じた理由をお話したいと思います。ある調査では心理カウンセラーがAIに置き換わる率は0.1%だそうですが、置き換わることはあるのか考えたいと思います。
ChatGPTに講義中の質問を代わりにさせてみる
まず、「社会構成主義を説明して」と質問しました。
社会構成主義とは、心理学や哲学の一つでざっくり言うと「ものごとの存在を決めているのは、人々が存在すると認識する意識そのものである」というような意味なのですが、これはまぁ上手に説明してくれました。
始めて見るChatGPTが吐き出す文章に、学生は驚きを感じていました。私のほうは、その文章を読みながら、なるほどなぁと思いながら読んでいたのですが、一方で、これ学生さんにとって分かるんかなぁと思いました。その理由を言うと、具体性がないのです。
例えば、「無意識は存在するのか」というような議論ってあると思うのですが、みなさんは無意識は存在すると思いますか?
これに答えるのは結構難しくて、まさに議論があるんですね。無意識は誰も実物を見たことがないのに、存在すると思っていませんか?笑
ChatGPTはその点は素晴らしくて、このような議論にも触れているんですね。なのにその記述には具体的なことが書かれていないんです。結局、私が学生にその文章を使いながら解説しました。わかってる人にはわかるけど。と思ったのが率直な感想です。
さみしいから助けてほしいと質問してみる
そして次に、「寂しいので助けてほしい」と尋ねてみました。学生さんも、AIがどう答えてくれるかドキドキしながら見ています。
実際に、記事を読まれているみなさんもchatGPTに同様の質問してみていただければと思いますが、その答えは、素晴らしくて私も学生も大納得しました!なるほど、なるほど、。。うーん。
その内容とは、趣味の合うグループに入るだの、自分から積極的に話しかけるだの、極めつけはコミュケーションスキルを身につけるだの、全くその通りのことが並んでいたのですが、これを読んで思ったことは、ここに書いていることをわかってても、それが出来ないから悩んでるんちゃうの?ということでした。
人の悩みというのは、同じに見えても、全く同じであることは絶対にありません。教科書にもこういう人にはこうしろと、それらしいことが書かかれてありますし、なんならインスタやらティックトックにもこうしたらこうしろのような動画が溢れています。なんなら私もそれに加担してます。しかし、現実として実際に援助しようとしたときには、その相談者の個別の事情を加味しなければ、解決にはつながりません。
特に心理カウンセリングは、本人が自覚していないことをカウンセラーが質問することによって意識させることが大切で、また、言葉のみならず相談者の様子を観察してカウンセリングを行っています。文章上だけのアルゴリズムでは処理できないことを行ってるので、AIに質問をこちらからするだけでは、適切な回答は得られないのではないかと思います。
さいごに 〜AIの可能性〜
今のAI技術では、こちらから質問したことに対して答えてくれるレベルですが、もしAIのほうから質問することができるようになるなら、ひょっとしてカウンセリングがAIでもできるようになるかもしれません。人を信用しない人が、AIしか信用しない、という時代も来るかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
きっとこれからAIと向き合う時代が来ると思います。ドラえもんのようなパートナーが気持ちを支えてくれる未来が来るかもしれません。そんなときに、生身の人間としてカウンセラーができることをあらためて考え直す必要がありそうです。