ドル円、約2ヶ月ぶりに一時125円台回復の背景
8月5日のニューヨーク外国為替市場では、主要通貨に対してドル買いが進み、ドル/円相場も一時的ながら1ドル=125円の節目を突破した。ドル円相場は6月5日に125.86円までの円安・ドル高を記録しているが、6月10日の衆院財務金融委員会で黒田・日本銀行総裁が「実効レートではかなり円安の水準になっている」、「(これ以上の円安は)普通で考えればありそうにない」と発言したことなどから、その後は125円台回復が躊躇されていた。いわゆる「黒田ライン」の存在である(参考:為替市場で噂される「黒田ライン」の存在)。
しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ着手が確実視される状況になる中、円安というよりもドル高の形で、ドル/円相場に対する上昇圧力が強くなっている。ドルインデックスは4月23日以来の高値を更新しており、その流れでこれまで出遅れていたドル/円相場の上昇も再開されつつあるのが現状である。
125円台回復の直接的なきっかけとしては、米国のサービス業の景況感を示す7月ISM非製造業指数が前月の56.0から60.3まで急伸し、2005年8月以来となる10年ぶりの高水準を記録した影響などが指摘されている。ISMの調査担当者は「(単月でのここまでの大きな伸びは)通常ではあまりないこと」としているが、「成長は続くことを指標が示している」として、実体経済を反映した数値との見方を示している。
ただ、ドル/円相場の急伸が始まっていたのは、この指標が発表される日本時間8日23:00より前の22:30前後からであり、一つの指標に反応した値動きというよりも、マクロな円安・ドル高のトレンドを追認した動きと評価するのが妥当だろう。
その予兆となったのが、8月5日に米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューにおいて、アトランタ連銀ロックハート総裁が、9月利上げが適切であり、行動しないハードルは高いとの見方を示したことである。既にイエレンFRB議長は年内利上げの可能性が高いとの見方を示していたが、更に具体的に「9月」というワードを頻繁に目にするようになっていることが、ドルの先高感を強め、その流れでドル/円相場も115円の節目を回復したとみられる。
もっとも実際に9月利上げ着手が妥当かを判断するには、労働市場の更なる改善を示す指標が必要と見る向きも多く、市場関係者の間では、日本時間7日21:30に発表される7月米雇用統計がどのような結果になるかが、ドル/円相場の短期トレンドを決定付ける天王山になるとの見方が強い。ここで強めの指標内容になれば、125円の節目を完全に突破し、円安・ドル高は130円に向けて新たなステージに突入する可能性も十分にある。