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ザック時代から一歩も二歩も後退! ブラジルを本気にさせられなかったハリルジャパン

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

ハリルホジッチの言い訳に騙されてはいけない

 結果、内容とも、決して驚くべきものではなかった。これが日本代表の現在地と見ていいだろう。

 試合後、ハリルホジッチ監督は「後半のパフォーマンスには満足している。後半は1-0で日本が勝った」と負け惜しみを語ったが、その言葉に騙されてはいけない。前半の45分間こそが、この試合のすべて。前半のブラジルと日本は大人と子供の差があった。3-0とリードしたブラジルが、そんな日本に後半から極端に手を緩めたのは誰の目から見ても明らかだった。

 ザッケローニ時代に対戦した2試合(2012年の0-4、2013年の0-3)と比べると、スコアはよく見えるかもしれないが、内容的には一歩も二歩も後退した感がある。ブラジルの本気度も今回のほうが低かった。裏を返せば、ブラジルを本気にさせることができなかったのが、今回の対戦だったと言える。

 最大の問題は、個人の実力差をチーム力で埋めるための作業がなされていない点。W杯最終予選の途中からその作業を放棄したハリルホジッチの仕事ぶりを、日本サッカー協会幹部はどう見ているのか。ブラジルのようにワールドクラスを揃えたチームならそれでもいいが、現在の日本の選手がそのやり方に対応できると本当に考えているのか。

 ロシアW杯後のことを考えても、多くの疑問が浮上する。

 以下、出場選手の採点と寸評。(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】川島永嗣=5.5点

PKを1本ストップ。3失点ともGKに責任はないものの、PKをストップした以外には特に目立ったプレーはなかった。

【右SB】酒井宏樹=5.5点

ネイマールとのマッチアップではフランスリーグでの経験を生かしてそれなりに上手く対処できていた。ただ、ネイマールに神経を集中させた分、得意の攻撃参加は影を潜めた。テクニカルな部分でのイージーミス、不要なファールも減らしたい。

【右CB】吉田麻也=5.0点

結果的にビデオ判定だったが、早い時間にPKを与えて失点の原因となった。ゲームを壊してしまった責任は大きく、守備のリーダーとしての信頼度を低下させてしまった。その他にもラフプレーが過ぎた印象もあり、冷静な守備対応が望まれる。

【左CB】槙野智章=5.5点

62分にコーナーキックからヘディングでゴールを決めた分が0.5点。前半に3本、後半に1本、良いフィードを見せた。3失点目は対応が遅れ、ダニーロのクロスに一歩及ばず。前方のウィリアンを長谷部が見ていただけに、ダニーロの動きを見ておくべきだった。

【左SB】長友佑都=5.5点

相手が力を緩めた後半は何度か攻撃参加できたが、前半は何もできなかったチームの中に埋没した感は否めない。キャプテンマークを巻いて代表100キャップを達成したが、その経験値をこういう苦しい試合でこそ発揮したいところ。

【右ボランチ】長谷部誠(70分交代)=5.0点

ボールを受けても相手のプレッシャーをかいくぐれず、ほとんどがバックパスか横パスに終始。セーフティ最優先のプレー選択だけでは、このポジションの役割を十分に果たしているとは言えない。そもそもパフォーマンス自体が低調だった。

【左ボランチ】山口蛍=5.0点

PKで先制点を献上してから10分も経たないうちに再びPKにつながるファールを犯した。いつものように無難にプレーしようとしたが、ブラジル相手にはごまかしがきかなかった。行くときと行かないときの判断が悪かったため、何度も中盤に穴を開けてしまった。

【右ウイング】久保裕也(ハーフタイム交代)=4.5点

最近の試合と同様に低調なプレーに終始し、前半で交代。イージーミスが目立ったばかりか、特に前半36分にはカットインからボールを奪われてカウンターを受けるきっかけを作り、それが失点につながった。いよいよメンバーの当落線上まで評価を下げてきた印象。

【トップ下】井手口陽介(86分途中交代)=4.5点

強豪国との初対戦は厳しい結果に。特に2失点目に直結したクリアミスは、このレベルの試合で犯してはならないプレー。慣れないポジションでプレーして前線で攻撃の芽を摘む役割を任されたが、少々荷が重かった。この経験を糧にレベルアップを図りたい。

【左ウイング】原口元気(70分途中交代)=5.0点

最近はW杯最終予選時のキレはなく、この試合でも存在感がなかった。まだ強豪国の選手と互角に渡り合うだけの力が足りないのか、ブラジルに洗礼を浴びた印象。所属クラブでのパフォーマンスを上げない限り、W杯本番でスタメンを確保するのは難しい状況だ。

【1トップ】大迫勇也(80分交代)=5.5点

さすがにブラジルが相手となると、十八番のポストプレーの精度も落ちた。どうしても守備に追われるため、前線で起点になることもできなかった。何より1トップのストライカーとして出場しながらシュート1本は寂しすぎる。周囲との連携も改善したい。

【FW】浅野拓磨(ハーフタイム途中出場)=5.0点

久保に代わって後半から出場するも、効果的なプレーができず。試合終了間際の好機では痛恨のシュートミス。後半のブラジルは手を緩め、途中から主力を次々とベンチに下げていたことを考えると、もう少し落ち着いたプレーをしたかった。改善点はまだ多い。

【MF】森岡亮太(70分途中出場)=5.5点

井手口が一列下がって、トップ下で出場。攻撃の起点となる役割を任されたものの、あまり存在感はなかった。久しぶりに代表でプレーし、しかもハリルホジッチ監督になってから初めての試合がブラジルだったというのは不運とも言えるが。次の試合が正念場か。

【FW】乾貴士(70分途中出場)=5.5点

試合の流れを変えるジョーカーとして原口と代わってウイングに入ったが、得意のドリブルは影を潜めた印象。もっとプレー回数を増やす必要があるが、そのためには周囲とのコンビネーションを上げて、プレーのリズムをシンクロさせる必要がある。

【FW】杉本健勇(80分途中出場)=5.5点

ヘディングシュートがネットを揺らすもオフサイドの判定。このレベルの国際試合は初めての経験だが、10分ちょっとで仕事をするにはまだレベルが足りていない。個人としてブラジルとの実力差を感じたはずなので、それを今後のプラスと受け止めて奮起したい。

【MF】遠藤航(86分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。またしても試合終盤での出場となったが、捨て身で攻めなければいけない状況で遠藤を投入した指揮官の采配そのものが問題。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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