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AppleもAmazonに続いて大麻合法化に向けて動き出した

園田寿甲南大学名誉教授、弁護士
(写真:ロイター/アフロ)

世界的な超巨大ハイテク企業は、何年もの間、娯楽用はもちろんのこと、医療用または産業用大麻の合法化を頑なに拒否してきました。ところが、世界的に大麻規制緩和の動きが進んできたことで、2021年6月にAmazonが「大麻合法化を支持する」と表明して、大きな衝撃が走りました。

今までAmazonは、一般の企業と同じように、薬物検査で陽性反応が出た従業員を解雇してきましたが、今後は、連邦レベルでの大麻の合法化を支持し、大麻使用の犯罪記録を抹消すると発表し、他の企業も大麻合法化を支持するべきだとしたのです。

世界的な超巨大企業の決定ですから、その影響力は間違いなく想像以上に大きなものがあります。

そして、ほとんど気づかれなかったのですが、実は、Appleもほぼ同じ時期に大麻の合法化に向けて大きく方針転換していたのです。

AppStoreでアプリを提供する場合、Appleの厳格な基準をクリアする必要がありますが、そのガイドラインが昨年の夏に改正されていたのが分かりました。大麻に関する改正箇所は、次のとおりです(太字は筆者)。

1.4 物理的な危害

1.4.3 たばこや電子タバコ(関連製品を含む)、違法な薬物、過度のアルコールの摂取を助長するAppは、App Storeでは許可されません。未成年者にこれらの摂取を促すAppは却下されます。また、規制薬物の販売(許認可を受けた薬局、または許認可済みかその他の合法的な大麻ディスペンサリによる販売を除く)、およびたばこの販売を幇助することは認められません。

5.1.1 データの収集および保存

(ix)規制の多い分野(バンキングや金融サービス、ヘルスケア、ギャンブル、合法大麻の使用、航空旅行など)でのサービスを提供するApp、機密性の高いユーザー情報を必要とするAppは、個人のデベロッパではなく、そうしたサービスを提供する法人によって提出される必要があります。大麻の合法的な販売を促進するためのAppは、それが合法とみなされる法的管轄地域でのみ利用できるよう、地域制限を設定する必要があります。

App Store Reviewガイドライン(英文:App Store Review Guidelines - Apple Developer

つまり、第一に、規制物質の販売促進は従来通り禁止されていますが、合法的な大麻販売店の販売促進は例外とされました。

第二に、大麻購入に関するアプリの提供は、個人ではなく、法人による提供に限定されています。

第三に、合法的な大麻販売を促進するアプリの利用は、大麻が合法な地域に限定されている必要があります。

そして、大麻が合法化されているカリフォルニア州では、すでにAppStoreによって合法な大麻販売を促進するアプリが提供され、21歳以上の消費者はそのアプリを使って大麻を注文し、電子決済を行っています。現在は州レベルでは大麻を合法化しているところはありますが、連邦レベルでは依然として大麻は非合法であるという、ねじれた関係が生じています。しかし、バイデン政権は任期中に連邦レベルでの大麻合法化を実現するだろうと言われていて、そうなるとこのアプリが全米で使えることになります。

なお、Google Playストアは、2019年に合法か違法かに関係なく大麻販売を促進するアプリを、(とくに未成年保護の観点から)禁止しており、THC(陶酔成分)を含むCBDオイルなどのTHC製品のアプリによる販売、注文や決済は禁止されています。(了)

甲南大学名誉教授、弁護士

1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。

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