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きょうサッカー日本代表と対戦するサウジアラビア代表。かつての「アジア最強国」を描いたマンガ3選

加山竜司漫画ジャーナリスト
日本代表は7大会連続のW杯出場を目指す。(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

きょう10月7日(水)、日本代表はカタール・ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選で、サウジアラビア代表とジェッダ(サウジアラビア)のキング・アブドゥラー・スポーツ・シティーで対戦する(キックオフ時間は日本時間で8日2時の予定)。

予選グループBの現在の順位は、サウジアラビア代表は2位(勝ち点6)、日本代表は4位(勝ち点3)。日本代表にとっては、落とすことのできない重要なアウェイでの一戦となる。

サウジアラビア代表は、かつてはアジア最強チームと呼ぶにふさわしい存在だった。日本代表が「ドーハの悲劇」で涙を飲んだアメリカW杯では本大会に出場し、ベスト16の快挙を成し遂げている。ところが、00年代後半以降は不調が続いていた。長い低迷期を経て、前回のロシアW杯アジア最終予選では最終節で日本代表にホーム(キング・アブドゥラー・スポーツ・シティー)で1-0のスコアで勝利し、3大会ぶり(通算5回目)となる本大会への出場を果たした。

近年のサッカーマンガでは、一時期の不調期を反映してか、日本代表の“ライバル国”として扱われる機会は少なくなった。いまならイラン、韓国、オーストラリアがライバル候補といったところだろうか。

しかし、「アジア最強国」の当時をリアルタイムで体感していた90年代のサッカーマンガは、サウジアラビア代表を「乗り越えるべき壁」として描いてきた。情報が少なく「未知の国」と評されることも多いサウジアラビアだが、マンガの世界からサウジアラビア代表の伝統的なサッカースタイルを紐解いていきたい。

サウジアラビア代表が登場するサッカーマンガ

『Jドリーム 完全燃焼編』(塀内夏子)

『Jドリーム』は、Jリーグ創設期および「ドーハの悲劇」を題材とした作品であり、ワールドユース(現在のU-20W杯)を舞台とする『Jドリーム 飛翔編』を経て、シリーズ完結作『Jドリーム 完全燃焼編』へと続く。

この『完全燃焼編』では、アジア最終予選で日本代表と対戦するサウジアラビア代表は「西アジアの雄」として描かれる。チームの主力はGKのアル・デアイエ。このキャラクターのモデルは、卓越した身体能力を武器に代表キャップ数178を記録し、「アジア最高のGK」と呼ばれたモハメド・アルデアイエである。この時代のサウジアラビア代表を語るうえでは、絶対に無視することができない存在といえるだろう。

GKの名選手がいるチームを相手に、日本代表側でもGKふたりのドラマが展開する物語構成の妙味にうならされる。

『俺たちのフィールド』(村枝賢一)

本作のサウジアラビア代表でキャプテンを務めるのはモハメド・ジャバド。柔和な表情とは裏腹に、駆け引きにも長けた狡猾な一面を持つベテランストライカーだ。

彼のモデルは「砂漠のペレ」の異名を取ったマジェド・アブドゥラー。1984年と1988年のアジア杯2連覇に貢献した国民的英雄である。

ちなみにテレビアニメ『キャプテン翼』がアラビア語圏でローカライズされる際に『Captain Majid(キャプテン・マジェド)』とのタイトルがつけられたが、その名前はマジェド・アブドゥラーに由来するとの説もある。

『キャプテン翼 ワールドユース編』(高橋陽一)

ワールドユース出場を目指す大空翼率いる日本ユース代表は、アジアユース選手権でサウジアラビア代表と対戦する。サウジアラビアユース代表のキャプテンは、王家の血を引くマーク・オワイラン。リベロのポジションでチームを統率し、攻め上がった際には日本の守護神・SGGK若林源三からオーバーヘッドでゴールを奪取し、アジアの難敵として強烈な印象を残した。

本キャラクターのモデルは、アメリカW杯ベスト16進出の立役者となったサイード・オワイランである。本大会グループリーグ最終戦のベルギー戦では、自陣からドリブルを開始して4人を抜き去ってゴールネットを揺らし、「砂漠のマラドーナ」とも呼ばれた。

なお、『ワールドユース編』で人気を博したマーク・オワイランは、後継作品『キャプテン翼 GOLDEN-23』(五輪のアジア予選が舞台)にも登場する。この作品でのサウジアラビア五輪代表は日本と同じグループに振り分けられたが、日本との試合はダイジェスト的な扱いだった。

U-23カテゴリのサウジアラビア代表といえば、アトランタ五輪アジア最終予選の準決勝(1996年3月24日)を記憶しているサッカーファンは多いだろう。日本は前園真聖の2ゴールで死闘を制し、28年ぶりの五輪本大会出場を決めた。この頃のサウジアラビアは、まさしくアジア最強のライバルだった。

『ワールドユース編』(1994~1997年)では強豪国だったが『GOLDEN-23』(2005~2008年)で扱いが小さくなっているあたりからも、アジア・サッカーの覇権がサウジアラビアから日本へと移った栄枯盛衰の歴史が読み取れる。

東京五輪にもオーバーエイジ枠で出場したアルドサリ選手
東京五輪にもオーバーエイジ枠で出場したアルドサリ選手写真:ロイター/アフロ

このように、かつてのサウジアラビア代表は、身体能力と技術に秀でたチームとして認識されていた。その特長は、現在の代表チームにも受け継がれている。

キーパーソンは左サイドバックのアルシャフラニ(背番号13)、左ウイングのアルドサリ(背番号10)、トップ下のアルファラジ(背番号7)。この3人は同一クラブ(アル・ヒラル)に所属し、東京五輪の男子サッカー代表にもオーバーエイジ枠で参加した。

2019年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝では、アルドサリがゴールを決め、アル・ヒラルが浦和レッズを下してアジア・チャンピオンの座に輝いている。

サウジアラビア代表の復権はまさしく「古豪復活」といったところだが、最終予選突破に向けて、日本代表には勝ち点3を期待したいところだ。

漫画ジャーナリスト

1976年生まれ。フリーライターとして、漫画をはじめとするエンターテインメント系の記事を多数執筆。「このマンガがすごい!」(宝島社)のオトコ編など、漫画家へのインタビューを数多く担当。『「この世界の片隅に」こうの史代 片渕須直 対談集 さらにいくつもの映画のこと』(文藝春秋)執筆・編集。後藤邑子著『私は元気です 病める時も健やかなる時も腐る時もイキる時も泣いた時も病める時も。』(文藝春秋)構成。 シナリオライターとして『RANBU 三国志乱舞』(スクウェア・エニックス)ゲームシナリオおよび登場武将の設定担当。

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