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「参院選で比例代表の投票用紙に候補者名を書くと2倍の効果がある」は誤り。政党名も候補者名も1票分

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
拡散しているツイート。Twitterより

 Twitterで「参院選の比例代表の投票用紙に候補者名を書くと、個人と党両方のカウントとなるから2倍の効果がある」とのツイートが5,000件以上拡散していますが、誤りです。

個人と党両方のカウントで2倍の効果に?

 問題のツイートはインターネット放送番組に出演している、さかきゆい氏が6月18日にTwitterに投稿したものです。

 内容は「参院選の投票用紙の2枚目に候補者名を書くと、個人と党両方のカウントとなるから2倍の効果がある」というもので、記事執筆時点で3,500件以上のリツイートが行われています。

問題のツイート。Twitterより
問題のツイート。Twitterより

 また、9.1万フォロワーを抱える動物行動学研究家の竹内久美子氏が問題のツイートを「これ、知っておかないと損ですよ。一粒で二度おいしいから」と引用リツイートしており、こちらも2,000件以上拡散する事態となっています。

デマをさらに拡散させるツイート。2度美味しいこともない。Twitterより
デマをさらに拡散させるツイート。2度美味しいこともない。Twitterより

 どちらもまるで真実かのように書いていますが、これらの内容は間違っています。

政党名を書いても候補者名を書いても1票分

 参議院の比例代表選挙において、政党名を書いても候補者名を書いてもカウントは2倍になりません。1票のままです。

 正しくは「候補者名を書いても政党の得票数として数えられる」です。

 これは総務省の参議院比例代表選挙のパンフレットでも案内されています。

政党の得票数計算の仕組み。総務省のパンフレット「変わります21世紀の参議院議員選挙」より
政党の得票数計算の仕組み。総務省のパンフレット「変わります21世紀の参議院議員選挙」より

候補者名を書くとその人が当選しやすくなる

 それでは、なぜこのような「2倍カウントされる」との誤った情報が発信されているのでしょうか?

 おそらく参議院比例代表選挙の非拘束名簿式の仕組みを誤解しているか、うまく説明できていないものだと思われます。

 非拘束名簿式では各政党に比例配分された議席は、その政党のなかで得票数の多い候補者から順に振り分けられます。

参院選の議席の比例配分の仕組み。総務省のパンフレット「変わります21世紀の参議院議員選挙」より
参院選の議席の比例配分の仕組み。総務省のパンフレット「変わります21世紀の参議院議員選挙」より

 つまり候補者名を書くことでまず政党に1票入り、その後に比例配分された議席が名前を書いた候補者に対して振り分けられる可能性は上がりますが、もう1票分入るわけではありません。

 候補者名を書くことで、その候補者が当選しやすくなることを「個人と党両方のカウントとなるから2倍の効果がある」と表現したのだと思われますが、2倍にはなりません。1票は1票です。

衆議院の比例代表選挙だと無効票に

 ここで気をつけたいのは、2025年に予定されている第50回衆議院議員総選挙です。

 参議院の比例代表選挙では候補者名を書いても1票として計上されますが、衆議院の比例代表選挙では候補者名を書くと無効票となってしまいます。

 これは衆議院の比例代表選挙は、あらかじめ政党が当選順位を決める拘束名簿式だからです。

 今回の誤った情報は参議院選挙においては大きな問題となりませんが、衆議院選挙では無効票を生み出してしまう可能性があるという大きな問題を抱えています。間違えないよう、注意してください。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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