少女の頃から12年、良質な曲を届け続けられた理由。東京女子流の4人だからできたこと
デビュー12周年を迎える東京女子流。メンバー4人がローティーンだった頃から、その楽曲は一貫して高い評価を受け、本人たちの年齢を重ねての成長と共に、幅と奥行きも増している。ニューシングル『days ~キミだけがいない街~』は90年代の和製R&Bサウンドでクールかつ温かい、新たな名作となった。ガールズグループが同じメンバーで12年続くことから稀だが、ここまで音楽的クオリティを高め続けている裏にあるものは?
寒さには強くないけど雪は好きです
――東北出身の芽生さんとひとみさんは、今の時期も寒さには強い感じですか?
新井ひとみ 実はそんなに強くないんですよね(笑)。
庄司芽生 早々とヒートテックを着始めました(笑)。
新井 でも、雪はすごく好きです。今年は2年ぶりにお正月に宮城に帰れて、家族にスノボに連れて行ってもらって滑ってきました。去年より多めに降ったみたいで、すごいパウダースノーでした。
庄司 私も山形の雪景色は恋しくなります。子どもの頃、腰くらいまで雪が積もったところを、自分たちで歩いて道を作りながら学校に行ったのが、今となっては良い思い出。通学班の小さい子をおんぶしたのも懐かしくて。東京でたまに雪が降ると「山形の匂いだ」と思います。
山邊未夢 私は子どもの頃から雪が苦手で、降るとみんなが外で遊んでいても、家の中に籠ってました(笑)。
新井 女子流が結成されて2~3年後に、東京でも雪が結構降って、キャリーケースを持ち運びするのが大変だったのを覚えています。
中江友梨 でも、大阪は本当に雪が降らないので、東京で降るとテンションがめっちゃ上がります。この前降ったときも、「激寒!」と思いながら楽しくなりました。
フリフリのスカートから初めてパンツに
――この数年、東京女子流の新曲が出るたびに、皆さんのヴィジュアルが大人っぽくなっていくのを感じますが、今回の『days ~キミだけがいない街~』のジャケット写真では、特に未夢さんの大人度が上がりましたかね?
山邊 やった! メイクをちょっと変えました。赤系のシャドーが好きだったのが、最近はグレー系にハマって、今回初めてアーティスト写真でも使いました。こっちのほうがクールで、意外と自分に合っていると思います。あと、珍しくポニーテールにして、おでこをツルッと出しました(笑)。
中江 衣装は前作と同様、カラーを入れながら、くすんだ黄色とかレトロっぽい感じになっていて。それぞれの体型に合ったデザインで作っていただいて、嬉しいです。
――友梨さんは肩が強調されたようで。
中江 私のジャケットはちょっとオーバーサイズで、あえてダボッと着ているのが、ファンの方にかわいいと言ってもらっています。本当は肩幅はもっと小さいんですけど、こういう着こなしを取り入れてもらいました。
――芽生さんはオシャレな感じですね。
庄司 ジャケットがアシンメトリーで、右肩から見えるシャツにフリルを付けてくださったんです。着ると“今日もルンルン”みたいにテンションが上がります(笑)。
――ひとみさんはお嬢様ふうですか?
新井 衣装合わせのときはベロアの長いスカートだったのを、短くしてもらって、初めてパンツスタイルになりました。
中江 ひとみはスカートのイメージがあるからね。
新井 いつもはフリフリのスカートをお願いしてますけど、今回はかわいらしさの中にカッコ良さもある感じで、腰にコルセットを巻いているのもお気に入りです。
ご時世で会えない人を想って歌いました
――『days ~キミだけがいない街~』のサウンドは90年代の和製R&Bふうですが、流行ったのは皆さんがまだ物心ついてない頃でした。
庄司 でも、懐かしさを感じます。なぜかと言うと、結成当時の定期ライブで、自分たちのオリジナル曲がまだなかったから、いろいろな方たちのカバーをさせていただいて。その中にこういうR&B系が結構あったんです。EARTHさんの『time after time』とか、久保田利伸さんの曲とか。
山邊 私は普段聴く音楽が、クリス・ハートさんやK-POPのミディアムで温かみのある曲が多いんです。だから、『days~』はどストライク。最初に聴いたのは去年の春で、そのときから「うわっ、好き!」となったんです。今回歌うことになって、「キターっ!!」と嬉しすぎました(笑)。
――遠距離恋愛のイメージで、クールさと温かさが共存している曲ですね。
中江 このご時世で、私たちも去年はなかなか地方に行けなかったりして、会えない人たちを思い浮かべながら歌いました。だから、メンバーの声にエモさを感じます。昔はただ一生懸命、まっすぐに歌っていましたけど、今回は特にメンバーの感情が声や息づかいに自然に乗っていて。4人の声が揃った歌を聴いたとき、自分たちの曲ながらグッときました。
庄司 パッと見、遠距離恋愛で会えない中、思い出を胸に1人で頑張っていくという詞です。でも、いろいろな捉え方ができて、私たちからしたら、友梨が言ったように地方のファンの皆さんだったり、地元の友だちや家族を想っていました。それが声を聴くと伝わるかなと思います。
山邊 私たちの感情が上乗せされたことで、出た味があって。
新井 私は家族がめっちゃ好きなんです。離れていて、なかなか会えないからこそ生まれる気持ちが、リンクする部分もありました。パフォーマンスにもグッと力が入ります。
ミックスボイスから力強く歌えるようになって
――そうした感情面の一方、歌う難易度は高い楽曲ですか?
中江 力の抜き具合が難しいです。やさしく温かい気持ちで歌うので、自然とそういう声は出ましたけど、ライブごとにいい意味で歌い方は変わると思います。エモくても芯のある歌声になったり、包み込むように歌ったり。
新井 4人いるから、それぞれ合うところを歌っていますけど、1人で歌うと大変かもしれません。
――歌割りは最初から決まっていたんですか?
庄司 最近は決まっていることが多くて、今回も事前に歌割りをいただいてました。私はわりとAメロとかの中低音のパートで支える役割が多いかなと、自分では思っています。
中江 私は今回も高音パートを担当させてもらいました。声を張り上げるところもありますけど、その前にちょっと抜いてミックスボイスでやさしくしてから、また力強く歌うことができるようになったと思います。
――ミックスボイスは自分でも得意感があります?
中江 気持ちいいところに当たることも、張りすぎちゃうこともあって、まだ抜き方をコントロールできない部分があります。でも、ライブでうまくいくときもあるので、その感覚を忘れないで意識的に歌えるように研究しています。
新井 私は楽曲の世界観の入口を担当させていただくことが多くて、今回は低いパートをやさしく歌うように指導を受けました。最近は高いパートも声を調整して歌えるようになって、幅広くやらせていただいています。
山邊 私は昔から曲のシーンが切り替わるところを、よく担当させてもらっています。今回もBメロの雰囲気が変わるパートでしたけど、初めて聴いたとき、2サビの<止めたはずの涙がまた溢れる>のところは歌いたかったんです。そしたら、自分の歌割りになっていて、やった!と思いました。
――その分、歌に気持ちが乗ったと?
山邊 死んじゃった愛犬のことを思いながら歌って、感情が入りすぎちゃうくらいでした。
新井 そうだったんだ。レコーディングしたあとに聴いても、何度かライブでやったときも、そこは確かに印象に残りました。
ラテンのテンポを意識しながら自分を解放して
――カップリングの『夢の中に連れてって』も、まさに夢うつつにいるようなボーカルが絶妙ですね。
新井 最初の入りのところとか、本当に夢の中のような柔らかさにするのが、すごく難しかったです。どれくらい声を出したらいいのか、何回も歌わせていただいて「これ!」というのを見つけるまで、時間がかかってしまいました。
中江 自分を解放して歌わないといけない部分もあるし、曲がラテン調でテンポ感も要るし、音が急に上がったり下がったりもするんです。そういうところに神経を使いながら、解き放つ感じで歌いました。
庄司 私はこの曲でもAメロ、Bメロの低いパートが多くて。声に芯がありすぎても世界観に合わないので、息を使いつつ脱力感を歌に乗せるのが、最初は探り探りでした。
――聴いていると心地良い曲ですが、歌っていても気持ち良さはあります?
中江 リズムを掴んだら、すごく楽しいです。最初はラテンのリズムがちょっとでもズレると、逆に気持ち悪くなってしまって。集中してリズムを聴き取って、振付も自分の体に入っていくほど、気持ち良くなりました。
山邊 歌とダンスを合わせるのも、また絶妙なラインがあって苦戦しました。でも、ライブで自然に乗れるような曲で、初披露のときからファンの方たちも体を動かしてくださっていました。
お風呂上がりのホットミルクでリラックス
――<深夜のバスルーム 甘めのラテがいいの>というフレーズもありますが、皆さんもそういうリラックスタイムはありますか?
新井 バスルームから上がって、髪を乾かしたりして寝る前に、ホットミルクにシロップを入れて飲んでます。この曲も、夢の中ではしがらみやイヤなことから解放されて、楽しんでいたいという感じですけど、やっぱり眠りに就くときくらいは、安らかにリラックスしたいですよね。
中江 私は寝る前にお風呂に入っています。冷え性で、上がってから時間が経つと体が冷え切って、逆に眠れなくなってしまうので。暖まって、ボディクリームを塗って、好きな匂いのお香を炊いたりは、いつもしています。寝つきが悪いので、どうしたらリラックスした状態に入れるかは、自分の中で重要です。
山邊 私は寝る前はインスタを見ていることが多いです。洋服とか今ちょうど春に向けたセールをやっていて、良いのがあったらパチパチとスクショしまくります。カフェとかも最近行けないので、とりあえず行きたいところをいっぱいスクショして、ストックする時間が楽しいです。
庄司 寝る前は暗くするのが好きで、去年ひと目惚れでゲットした間接照明があって。それをつけて、キャンドルやお香を炊きながらストレッチすると無になれて、1日をリセットできます。ストレッチポールで体をゴリゴリして、最初はめちゃ痛かったんですけど、今はリラックスタイムになりました。それをやらないと眠れません。
自分たちの歌に涙が溢れるほど感動しました
――東京女子流は12年間、ずっとハイクオリティな曲を歌ってきました。楽曲を皆さんが作っているわけではなくても、自分たちが歌ったから名曲になった自負もありますか?
中江 仮歌から私たちが歌うと全然変わります。レコーディングのとき、自分の人間らしさみたいなものがすごく出る気がします。「曲をこう感じ取っていたんだ」「こんなふうに歌いたかったんだ」というのが、自分でわかる感じ。メンバーそれぞれ声質とか違って、「この子はこう歌ったんだ」という発見もあります。理想通りに歌えないこともありますけど、自分の持っている声でどんな表現ができるか追求していきたくなったのは、進歩だと思います。
新井 4人いるからこそ、いろいろな音色が出せて、それが詰まっているのが東京女子流の楽曲なので。毎回新しい気持ちで臨んでいます。
山邊 前は仮歌のまま歌おうとしましたけど、今は同じにならないように気をつけています。自分の歌い方や解釈があるので。レコーディングではまず歌いたいように歌って、スタッフさんの指導をいただいて、みんなとすり合わせて、味付けが合わさったものが完成します。毎回良い作品ができて、自信を持ってお届けしています。
庄司 『days~』のレコーディングでも、メンバーの声を聴きながらファンの方に向けて歌いました。全員録り終わって最終的に合わせたものを、みんなでスタジオで聴いたんですけど、今までで一番心が震えました。初めて自分たちの歌に涙が溢れそうなほど感動して。それが皆さんにも伝わったら嬉しいです。
大人になったのをどう形にして届けるか
――5月には12周年記念ライブがLINE CUBE SHIBUYAでありますが、初期の『おんなじキモチ』とかもこれからも歌っていくんですか?
庄司 そうですね。そこが女子流の良さだと思っています。この12年、本当にいろいろなジャンルの曲がどんどん増えて、それをひとつのライブに詰めるのは、だんだん難しくなってきていて。だからこそ、1公演も見逃せない。女子流の幅広さをポンポン見せていきたいです。「今回はこう来たか」という感じで楽しんでいただける、いろいろなライブを作っていこうと思います。
――年女グループとして、今の東京女子流はどんな状況にいると捉えていますか?
庄司 年齢をちょっとずつ重ねてきて、また新しいフェーズに入りました。曲調も衣装も自分たちの気持ちも、ひとつ大人になった感じでいます。それをどう形にして届けていくかが勝負どころですね。
新井 12年間、このメンバーでずっと走り続けてきたのは、奇跡のような感じがしていて。だからこそ、12周年ライブは結果を残しつつ次に繋げたいです。楽曲それぞれの音色がありますけど、今の私たちの声で昔とはまた違うものが届けられると思うので、それも楽しんでいただけたら。
ライブに来てもらうために本質を発信しないと
――東京女子流がこれだけ良質な曲を歌っているのをより広めるために、必要だと思うこともありますか?
山邊 まだ女子流の音楽を聴いたことのない人のほうが割合的に多いというか、世の中のほとんどの人がそうなので(笑)、もっと頑張らないといけないですね。私たちが一番大事にしているライブに触れてほしくて、今はTikTokとか発信できる方法はいろいろあるので。サビだけでも「聴いたことがある」となって、「ちょっとMVを観てみようか」「良かったからライブに行ってみようか」みたいに繋がっていったら嬉しいなと思います。
中江 そもそも女子流がどんな音楽をやっているのか、ライブで知っていただきたいですけど、足を運んでいただくためには私たち自身の本質を見せていかないと。そこを2022年は強化していきたいです。
新井 「ライブに行こう」と思っていただくのは、結構難しいことですよね。『流TUBE』(公式YouTubeチャンネル)だったり、SHOWROOMの配信で、メンバーが日常でこんなことをしているんだ、こういう話し方や仕草をするんだ……と気になって、ライブに来てくれたという方もいました。そういうところからも繋げられたらと思います。
歌って踊るだけでない姿も見せたくて
――『流TUBE』では芽生さんと友梨さん、未夢さんとひとみさんのコンビで漫才も披露してました(笑)。友梨さんは台本も書いたんでしたっけ。
中江 最近あったことを元に作りました。ああいうのも今までの女子流からは想像できなかったと思うんです。バラエティ的なことはしてなかったので。でも、歌って踊るだけでない私たちの姿も見せたいし、ライブでもカバー曲ではいつもと違う表現を知ってほしくて、挑戦を続けているところです。
山邊 私の友だちが『流TUBE』を観てアドバイスをくれるんですけど、「いつもはもっと毒を吐いているでしょう?」と言われました(笑)。
――漫才の「ライブのあとで足の中指の爪がなくなっていた」という話は事実ですか?
山邊 その話も他のことも全部事実です。
新井 2人で「この話をネタにしない?」みたいに詰めて、何となく台本を書いて送り合って、合体させました。
――そういう新しい取り組みを、今後もしていくわけですか?
中江 いろいろなことをやっていきたいです。
庄司 今年は定期ライブも1月から4公演あって、2月も決まっていて。1人でも多くの方に観ていただきたいので、女子流の曲と私たち自身に興味を持ってもらえるように頑張ります。
――ライブで漫才をやるわけではないんでしょうけど(笑)。
山邊 でも機会があれば、そういう企画コーナーがあっても面白いかもしれません(笑)。
東京女子流(とうきょうじょしりゅう)
2010年1月1日に結成。同年5月にデビューシングル『キラリ☆』を発売。2012年12月には初の日本武道館公演を開催。当時平均年齢15歳で、女性グループの最年少記録だった。台湾や香港など海外各地でのライブも重ねた。5月4日にLINE CUBE SHIBUYAで12周年ライブを開催。
『days ~キミだけがいない街~』
1月26日発売
ミュージックカード 1320円(税込)