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【菅官房長官会見】 菅長官・東京新聞のバトルで感じたこと

安積明子政治ジャーナリスト
東京新聞とのバトルの結末は……?(写真:ロイター/アフロ)

6月23日に始まった東京都議選も、残すところ本日(7月1日)のみになりました。これまで地方選はほとんど取材しなかったのですが、毎日どこかの街宣を聞きに行っています。

そんな中、欠かさずに参加しようと務めているのが、金曜日午後だけフリーランスの参加が許される官房長官会見です。民主党政権の時は私以外にも何人か出ていたのですが、今では1人になってしまいました。私が行かなくなったら閉じられるかもしれない、だから行きます。たまにサボりますが。

でも6月30日の会見では、聞きたいことがあったので参加しました。

劉暁波氏の問題には口ごもった菅長官

さて、会見で菅義偉官房長官に何を聞きたかったのかというと、2010年にノーベル平和賞を受賞した人権活動家・劉暁波氏の件です。劉氏は肝臓がんの末期状態で、家族は国外での治療を求めていますが、中国政府が出国を許していません。

もちろん日本政府としては、これに関与したくないだろうことはわかっています。7月7日から開催のG20も控えているため、いたずらに中国を刺激したくはないでしょう。だからあえて「人道的にどう思うか」と質問しました。いつものことですが、事前通告なしです。菅長官の「反射力」を問うわけです。

菅長官は日本政府としてのコメントを避けました。想定内です。もともと聞きたいのは「人道的にどう思うか」であって、「日本政府としての意見」ではありません。

しかし最初は人道的な感想もなしでした。再度質問しました。

「フリーランスの安積です」

同じ質問を繰り返す場合でも、冒頭にこれは欠かしません。ちなみに金曜日午後の会見の時だけ、なぜか官邸報道室は「所属と名前を名乗って下さい」と事前にアナウンスをします。私に対する“配慮”かもしれませんが、もう知っていますから結構です。アホ違いますし。

2度目の質問で菅長官は、「人道的な見地から対応することが重要だ」などということを言われたようですが、他の記者がパソコンのキーボードを打つ音で語尾がよく聞こえませんでした。まあ、いいか……。

さて「恒例」の……

その後は最近「官房長官会見の恒例」となっているらしい、東京新聞さんとのやりとりです。動画では見ていたのですが、いまさらながらに驚きです。まずは質問が長い、長すぎる。自分の意見をとうとうと述べています。しかも文章に起こしたら、1文がものすごく長くて何言ってんのかわかんない。

さらに聞く相手を間違えている。週刊文春で「加計学園から200万円の裏金をもらった」と報じられた下村博文元文科大臣についても質問がありましたが、菅長官に聞いてどうするんですか。下村元大臣に聞いた方が早くないですか。その勢いで突撃すれば、何か話すでしょう。

問題は、表向きはキンキンとせめぎ合っているように見えていても、話は一向に進んでいないという点です。このチンタラ具合、どこかで見たような……。そうそう、民進党の「加計学園疑惑調査チーム」です。

加計学園問題については、東洋経済オンラインなど他の媒体でもいろいろと書いています。でも最近は、ネタが枯渇した感じですね。チームの会合は開かれますが、内閣府がメモすら出さない。参事官が「会議ではメモを取らない」と主張していますが、後ろの席で別の職員が一生懸命にメモっています。

それにキレて共同座長の桜井充参議院議員が怒鳴りつけますが、怒鳴っても出てくるはずがありません。あの参事官の顔を見ればわかります。「ここをじっと我慢すれば出世だ!」と書いてあります。そう、人事権を握るのは官邸ですからね。

端的にいえばこの繰り返しで、進展はありません。だから最近、中座することが多くなりました。

会見場を観察してみました!

しかしいくら退屈でも、官房長官会見での途中退席はちょっと憚られます。会見場の雰囲気が独特の上、バトルの最中でしたからね。ですから周囲をキョロキョロと観察することにしました。小学生なら「落ち着きのない子」と言われるかもしれませんが、まっ、大人だから気にしません。入口側の壁に沿って座っている4名の秘書官のうち、2名が苦笑いしてはりましたけど。

でもなんだか、うずうずするんですね。きっと動画などで実況をご覧になっている人たちも、同じ気持ちでしょう。すなわち「決め」がないんですよ。

もちろん会見での「決め」は難しい。私も毎回狙っていていますが、成功率は10%くらいですね。しかも会心のものは、これまで数回しかない。

それでも「決め」を狙うのは、会見での質問は他の人が聞いているからです。記者はもちろん、動画の配信もあります。多くの人がわかりやすいように質問するためには、「短く」かつ「的確」でなければなりません。個人的感想や「前の私の質問は正しかったでしょ!」という確認はいらない。多くの人は質問者個人の感想なんぞ関心がありません、ただし「お笑い」に結び付かない限りです。これは関西人としてのこだわりです。

いよいよ質問!

ですから質問したのですよ、「東京新聞さんやジャパンタイムズさんの質問はしつこいとお感じになっていますか」と。もっともジャパンタイムズさんはこの時はご欠席だったようです。巻き込んじゃってすみません!

そうしたら菅長官、見事に反射神経発揮です!

「いや、あのー、全く感じていません」

しかも満面の笑み付きです。やはり強いですね、菅長官。更迭説もありますが、次期内閣改造でも生き残るのではないでしょうか。

なお、官房長官会見前に報道室による「所属氏名を名乗って下さい」のアナウンスは「アホ違いますのでいりません」と書きましたが、何度言われても名乗らない方もいらっしゃるようなので撤回します。また質問を簡潔にまとめらない方は、まずは公文式あたりで「こくご」をお勉強されてはいかがでしょうか。

さて菅長官はこの日の夜、都議選の応援に出向いています。自民党の苦戦が伝えられていますが、菅長官の「反射力」でもって跳ね返すことはできるのでしょうか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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