近畿で甲子園に一番近いのは大阪桐蔭か! 夏の甲子園、近畿2府4県の展望
2年ぶりの夏の甲子園をめざす戦いが始まった。近畿でも、28日に大阪大会の3回戦までの組み合わせが決まり、奈良を除いて、当面の目標設定ができる状態になった。近畿の展望を記したい。
大阪大会 大阪桐蔭がライバル校を引き離す
初のシード制導入で、3回戦までの組み合わせが決まった。春の近畿大会で優勝した大阪桐蔭(タイトル写真)は2回戦からの登場で、大阪学院大高と摂津の勝者と初戦を迎える。大院大高とは、3年前の北大阪大会決勝で当たっている。続く3回戦でも、4年前の決勝で顔を合わせた公立の大冠と当たる可能性があり、夏に絞って調整中の松浦慶斗(3年)、関戸康介(3年)の二枚看板をどこで起用するか、注目したい。本来なら、対抗に挙がってくるはずの履正社はシードを逃し、1回戦からの登場になった。相手は伝統校の市岡で、2回戦は門真なみはやと。優勝までには8勝が必要になる。早期に大阪桐蔭との直接対決を期待したいところだ。昨夏独自大会で履正社と優勝を分け合った関大北陽は、寝屋川と淀商の勝者と2回戦で当たる。昨秋近畿出場の東海大大阪仰星は、大産大付と東淀川の勝者が相手。また、秋に履正社を破って話題になったノーシードの山田は、大商学園と1回戦で当たり、2回戦ではシード校の大阪が待ち受ける。4回戦以降の組み合わせ次第では、波乱も考えられるが、投手力、攻撃力とも、大阪桐蔭の総合力は他校を大きく引き離していて、近畿で最も甲子園に近い位置にいると言っても過言ではない。
兵庫大会 神戸国際大付が一番手だが、波乱も
4回戦までの組み合わせが決まった。センバツ開幕試合で北海(北海道)を延長で倒した神戸国際大付が、左腕・楠本晴紀(2年)の成長で、戦力的にはナンバーワン。有力校は、相対的に投手力に優れ、優勝争いは混沌としている。神戸国際が、4回戦で当たる可能性のある武庫荘総合には、最速146キロを誇る本格右腕・斉藤汰直(たいち=3年)がいて、最初の難関になるだろう。春の県大会優勝の神港学園は、加藤大(3年)、三木勇人(3年)の本格右腕2枚が看板で、比較的対戦相手に恵まれた。また報徳学園には、近畿屈指の大型左腕と言われる久野(ひさの)悠斗(3年)がいる。神戸弘陵は、投打でチームをけん引する時沢健斗(3年)の活躍で、秋から強豪を次々と倒してきた。センバツ出場で試合巧者の東播磨や、昨春まで4季連続甲子園の明石商は実力がある。さらに、東洋大姫路、滝川二などの強豪も差はない。Aシードに尼崎小田、Bシードに昨秋近畿出場の長田が入ったブロックでは、初戦から淡路島の有力校の淡路三原と津名が当たるなど熱戦が続きそうだ。
京都大会 京都国際、平安は序盤戦がカギ
有力校のシード落ちで、組み合わせが決まった段階から、波乱の要素が充満している。センバツ出場で、春も圧倒的な強さを見せた京都国際が大本命だが、初戦で当たる可能性がある京都翔英は難敵だ。春はコロナによるクラスターで出場辞退となり、府下強豪にとっては未知のチーム。京都国際の山口吟太主将(3年)は、「練習試合でも強いチームに勝っているし、戦力がわからないのでやりにくい」と警戒している。秋優勝もシード落ちした名門・龍谷大平安は、一つ勝つと、秋2位で春4強の乙訓と早くもぶつかる可能性がある。秋の直接対決では平安が勝ったが、この試合で乙訓のエース・北見隆侑(3年)は先発していない。春準優勝の京都成章も初戦の京都文教は侮れない相手。秋春4強の東山は、北嵯峨、京都先端科学大付(旧京都学園、京都商)、山城などノーシードの甲子園経験校と同じブロックに入った。ほかにも、京都外大西、鳥羽、福知山成美、京都共栄学園などの有力校がシードを逃したが、一気に頂点まで駆け上がる力を秘めている。
滋賀大会 近江のシード落ちで大混戦に
長く近江の1強状態が続いていたが、王者は秋春とも優勝を逃し、近年まれにみる混戦模様。戦力的には、滋賀学園が一番手だが、山口達也監督(50)は、「4月以降、調子が上がってこない」と大黒柱・阿字悠真(3年)の状態にやきもきしている。春の近畿でも智弁学園(奈良)に打ち込まれた。初戦の水口は楽な相手ではないし、一つ勝っても古豪・比叡山との対戦になりそうで、厳しい戦いが続きそう。シード落ちの近江は1回戦から登場し、虎姫と対戦。2回戦は北大津と甲西の勝者で、いずれも甲子園の勝利経験校だ。3回戦で八幡商と当たる可能性もあり、こちらも息が抜けない。これまで救援が多かったエース・山田陽翔(2年)は、夏も抑えでの起用か。ただ、滋賀学園と近江が当たるとすれば決勝になる。春優勝で、近畿でも大阪桐蔭に善戦した綾羽は、投打のバランスがよく、悲願の甲子園初出場も夢ではない。投手力のいい立命館守山や、近年、常に上位の水口東も楽しみなチーム。また1年生が主力の彦根総合は、北大津を6回、甲子園へ導いた宮崎裕也監督(59)が率い、大暴れを狙う。
和歌山大会 市和歌山と智弁和歌山の一騎打ち
秋、市和歌山に3連敗も、春に雪辱した智弁和歌山が万全の仕上がりを見せる。エースの中西聖輝(3年)、4番・徳丸天晴(3年)の投打の柱が揺るぎない。初戦の箕島は油断ならないが、控えの層も厚く、戦力的には全国でもトップクラスと言える。対抗する市和歌山は、小園健太(3年)と松川虎生(3年=主将)の大型バッテリーが健在。ともに秋のドラフト上位候補で、小園が本来の力を発揮すれば智弁打線も沈黙させられるだろう。ただ、センバツでも小園を援護できなかったように、打力では智弁とかなりの差がある。和歌山は準決勝を前に再抽選があり、この両校が残った場合、準決勝で当たる可能性がある。市和歌山は、小園の消耗が少ない準決勝での対戦が望ましく、控えの米田天翼(つばさ=2年)らが、それまでの試合でどれだけ小園を休ませられるかもポイント。いずれにしても、今年の和歌山2強の対戦は、全国屈指のハイレベルな試合になるだろう。この2強を追う一番手は和歌山東だが、向陽、熊野などの有力校に囲まれたゾーンに入っている。
奈良大会 半世紀にわたるライバル対決は今年も
近畿で唯一、抽選が終わっていないが、和歌山同様、2強の一騎打ちムード。天理と智弁学園の2強対決は半世紀近い歴史があり、全国的にも、ここまで長く、レベルの高いライバル関係は見当たらない。45年前の春、初めて2強がセンバツで揃い踏みし、翌年、智弁が4強、天理が8強だった。今春、天理が4強、智弁が8強まで勝ち進み、レベルの高さを証明した。今チームでの直接対決は1勝1敗。ただ、投手、野手とも、トータルでは智弁の方が、やや上の印象がある。エース・西村王雅(3年)が腰痛から復活し、小畠一心(3年)との左右両輪は盤石。強打・前川右京(3年)も復調気配で、戦力に不安はない。一方、天理の強みは、193センチのエース・達孝太(3年)の潜在能力の高さにある。達の投球は見るたびに進化していて、センバツで大阪桐蔭投手陣を圧倒した智弁打線といえども、攻略は容易ではないだろう。しかし、達はまだまだ発展途上で、炎暑の連戦で投げ続けられるかという不安がある。左腕・仲川一平(3年)らがカバーし、達を万全な状態で大一番に送り出したい。2強を脅かすとすれば、奈良大付や公立の郡山、畝傍などで、序盤で当たれば好勝負も期待できる。