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NY金16日:ギリシャ情勢の混乱続くも、ドル高で反落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

COMEX金8月限 前日比比4.90ドル安

始値 1,185.30ドル

高値 1,187.40ドル

安値 1,175.40ドル

終値 1,180.90ドル

為替相場がドル高方向に振れたことが嫌気され、反落した。

ギリシャ情勢を巡る緊張状態が下値を支えるが、それに伴い為替相場がユーロ安・ドル高方向に振れたことが、ドル建て金相場の上値を圧迫している。ニューヨークタイム入り後は一時1,175.40ドルまで値位置を切り下げた。ただ、明日の引け後に米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文の発表を控える中、積極的に売り込むような動きまではみられず、引けにかけては下げ幅を削る展開になっている。

債券市場では、ギリシャ債に対する売り圧力が継続し、ギリシャ10年債利回りは12.49%に達している。徐々に交渉のために残された時間は少なくなってきているが、ギリシャのチプラス首相は、国際通貨基金(IMF)や欧州中央銀行(ECB)に対する批判を繰り返すのみであり、債権団に対する譲歩の動きは見られない状況になっている。18日のユーロ圏財務相会合でも進展がなければ、25~26日の欧州連合(EU)首脳会合が事実上に最後のチャンスとなる。ドイツのメルケル首相はユーロ圏財務相会合に期待を寄せているが、このまま30日までに救済プログラムの延長が認められなければ、ギリシャは約3,130億ユーロ(約43.4兆円)の債務支払いができなくなる。マーケットでは、ギリシャに対する資本規制やユーロ圏離脱の場合の影響を検証する動きが活発化しており、「安全資産」としての金相場の下値はサポートされている。

もっとも、本日は米株式相場が底固く推移したこともあり、ギリシャリスクのみで大きく買い進むような動きは見られなかった。最終的にはギリシャと債権団は合意するとの楽観的な見方も根強く、寧ろユーロ安(=ドル高)圧力が金価格に対してネガティブ材料と評価されている。

ギリシャ問題と米金融政策という二つの糸が複雑に絡み合う中、金価格は方向性を欠いている。米金融政策環境に関しては、少なくとも金価格に対してポジティブ材料とはなりづらい。今会合での政策変更は想定されていないが、米経済が1~3月期の落ち込みから回復しているとの見方が再確認できれば、利上げ着手に対する警戒感が上値を圧迫するフローは維持されよう。足元では世界的な金利上昇傾向が混乱をもたらしているが、米金利上昇・ドル高の流れがドル建て金相場の上値を圧迫するフローは維持されることになる。

問題はギリシャ情勢の方であり、仮にギリシャのユーロ圏離脱といった動きに発展していくと、金価格は急伸する可能性が浮上することになる。最終的には危機収束の方向で合意形成に進むとみているが、合意形成に失敗した際には1,200ドル台後半を試すようなリスクを抱えた相場環境にあることは認識しておきたい。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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