東京ディズニーリゾート・コロナ禍の後遺症で顧客満足度低下
2022年度の顧客満足度は低下
東京ディズニーリゾートの顧客満足度(公益財団法人日本生産性本部サービス産業生産性協議会JCSI日本版顧客満足度指数)の推移(図1)をみると、2013年は劇団四季、宝塚歌劇団を上回りエンターテイメント業種1位であったが、その後減少に転じ、2015年から2017年に底を打つまで大きく低下した。2018年から2019年は再び上昇傾向にあったところにコロナ禍となった。2020年は調査が実施されなかったが、2021年も満足度は上昇した。しかし、先月発表された2022年(調査期間は8月25日~9月9日)は、顧客満足度が再び低下した。
図1 東京ディズニーリゾートの顧客満足度推移
顧客満足度と1日平均入園者数の関係
この顧客満足度の推移は、1日平均入園者数との関係から4つに区分できる(図2)。2009年度から2012年度までは1日平均7.1〜7.5万人(年間約2600〜2750万人)の水準を維持しながら満足度は上昇した。しかし、2013年度から2017年度は、1日8.2〜8.6万人(年間3000〜3100万人)に拡大してその水準を維持しながら、満足度は大きく低下していった。そして、2018年度と2019年度は、1日9万人近くにさらに拡大したが、人混みは増していても満足度は改善した。混雑が必ずしも顧客満足度を下げることにつながったとはいえない。
さらに、2020年度からのコロナ禍により、1日平均入園者数を大きく抑える運営がなされた。2020年の調査データはないが、各種イベント等による盛り上がりには欠けても、空いているパークを満喫したゲストの満足度は大きく向上していたのではないか。2021年度も往時の半分以下の入園者数に抑えられ、顧客満足度は高水準にあった。
だが、2022年度は徐々に入園者数の制限が緩和され、その分だけパークの人混みも戻ってきた。2022年度上半期は1日平均5万人近くまで引き上げられたが、顧客満足度は前年から大きく下がった。
図2 東京ディズニーリゾートの顧客満足度と1日平均入園者数の関係(4区分)
パークのコロナ禍の後遺症と顧客満足度の低下
2022年の顧客満足度低下の要因として、チケット料金等の値上げが思い当たるが、それは2021年にも行われ、それでも顧客満足度は高水準にあったことから、その影響が大きいとはいえない。むしろ、コロナ禍の2020年から2021年にかけて、入園者数制限で空いている快適なパークを体験したゲストが、その印象を引きずっていたことが影響したのではないか。
ディズニーテーマパークは、混雑しすぎると満足度が落ちるが、空きすぎても盛り上がりに欠け、満足度は落ちるとされてきた。しかし、長らく混雑に慣れてきたゲストにとって、コロナ禍の空いたパークは極めて新鮮に映った。一時的に空いたパークでの楽しみ方がゲストの脳裏に焼き付いた。それゆえ、再び混雑を見せ始め、往時の状態に近づこうとするパークは、期待値の変容したゲストの満足度を下げたものと推察する。これはいわば「パークのコロナ禍の後遺症」といえる。
今後の東京ディズニーリゾートは、年間入園者数2600万人(1日平均7.1万人)の水準で高い顧客満足度を目指すという。これは2010年前後の入園者数の水準に戻すことを意味するが、それでも人混みが再び日常化し、パークのコロナ後遺症が消えた後は、改めてゲストの満足度向上に向け、以前より一層高度な施策が求められる。