レノファ山口:初先発の原口、2得点で勝利呼ぶ。「J2ライセンス」取得視野、決意示したゴールラッシュ
明治安田生命J3リーグ第17節は6月20日に1試合が行われ、レノファ山口FCがYSCC横浜を6-1で下した。今季初スタメンのFW原口拓人が2ゴールの活躍。前節の負けを振り払う快勝で、勝点を39に伸ばした。J3同節の他のゲームは21日に開催される。
J3第17節:山口6-1YS横浜▽得点者=前半9分鳥養祐矢(山口)、同25分小塚和季(同)、同43分原口拓人(同)、後半10分原口拓人(同)、同23分岸田和人(同)、同25分吉田明生(YS横浜)、同38分島屋八徳(山口)▽3722人=維新公園陸
チーム力が発揮された原口の今季初得点
今季未だ負けなしの維新百年記念公園陸上競技場(山口市)で再びのゴールラッシュだ。
前半9分、DF黒木恭平のフリーキックをMF鳥養祐矢がしずめて先制すると、同25分にはその鳥養を起点に廣木雄磨が繋いでMF小塚和季がミドル弾。「本当によくやってくれたと思う」と上野展裕監督が称えた鳥養が活躍し、山口は早い時間からリードを広げていく。
山口のチームとしての一体感を感じられたのは3点目のシーン。鳥養のパスを右に流れながら受けたFW岸田和人は、シュートコースを拓くこともできたが「迷わずパスを出しました」と鋭いラストパスを左サイドから上がった原口拓人に送り、原口の今季初ゴールをアシストした。「僕が原口の立場だったら1点取るまで緊張してしまう。1点取れば変わると思ったので」と仲間を思った岸田のパスに、「本当にありがたかった。(初先発で)ちょっと緊張して硬かった。1点目がすごく大事だった」と原口。このゴールで緊張も取れ、原口は後半10分にもカウンターから2点目のゴールを奪った。
岸田、慢心なく己に課題突きつける
さらに後半23分には今度は岸田自身が原口に預けたボールを再び呼び込んで4試合連続となるゴラッソ。決めて天を仰いだ岸田。ゆっくりと歩き始めた瞬間、表情が少しゆるんだ。
「3試合続けて決めていた中でどこで点を取れるか、自分の中に試練を与えてみようと思っていた。開幕から4試合決めていたので、それに並ぶゴールをと意識していた」。あえて意識させる中でゴールを奪えるか自分への挑戦だった。果たしてゴールを射貫き、己に科した枷を自ら取り払う。岸田にとって今季13点目、チームとしてはリードを5点に広げる一撃となった。
YS横浜は後半25分にPKから1点を返すが、山口は攻撃の勢いを落とすことなく攻め続けた。後半38分、途中出場のMF平林輝良寛が右サイドを深く突いてクロス。流れたボールをMF島屋八徳が流し込み、6点目のネットを揺らした。6-1。今季初のナイトゲームに3722人が集まった維新陸は歓喜に酔いしれた。
一方でYS横浜は12試合、勝ちから見放される結果となった。ただ、YS横浜の有馬賢二監督は「ゲーム自体は悪い入りではなかったが、自分たちからボールを失った1失点目が最後まで響いた。選手たちは前半の0-3の中でもよくやってくれた。(山口には)前に前に出てくる圧力、精度がある。普通だとシュートを外して終わる場面が多々あるが精度の部分でやられたのかなと思う」と話し、最後まで戦った選手たちをねぎらった。途中で退場者を出したり、失点は重なったりしたが、ホイッスルまでゴールを追いかける姿勢は途切れなかった。厳しい戦いの中でひとつひとつ試合を重ねながら成長していきたい。
もちろん山口も6点取ったことに甘んじてはいけない。立ち上がりでもたついたり、連係ミスを突かれてシュートに持ち込まれるなど、前半はゲームを落ち着かせるのに時間がかかった。
「はじめの5分は押し込まれたり、コーナーキックにされたり。気を抜いたわけではないが、飛び込んで裏を取られたりとか、積極的なことの現れだと思う」と上野監督。また島屋は「ちょっとラインが低かったのが原因かなと思う。もう少し前めの守備がはまれば。相手に繋がれてかいくぐられることもあったので、そのあたりの守備のやりかたをチームとして統一し、全体的に嵌めれるように守備していきたい」と話した。
多少の課題は出しつつも、攻め抜いての白星。前節では町田ゼルビアに敗戦を喫したが悪い流れに引き込まれずに勝ちきった。
J2ライセンス取得申請へ。チームも昇格圏内へ決意
また、山口は試合前日の6月19日、J2ライセンス取得を目指した手続きに入ることを表明。6月末の申請書類提出期限に向けて準備を急ぐ構えだ。
財務や組織、施設などが評価されるクラブライセンス制度で山口がJ2ライセンスを取得できれば、残る昇格障壁は事実上、成績要件だけ。原則としてJ3の1位が自動昇格、2位はJ2の21位との入れ替え戦となる。チームができることはこの2位以内に入ることだ。
ライセンス申請に向けた準備表明を受け、上野展裕監督は「選手もそうですが(現場の)みんなが喜んでいました。山口のみなさんが上に上がれるように準備してくださる。選手も自分も嬉しく思っています。その期待に応えられるように日々練習していって、一戦一戦しっかり戦っていきたいなと思います」と話し、笑顔の中にも決意が浮かんだ。
またキャプテンの平林輝良寛は「チームはそこ(昇格)を目指していて、クラブとしても動いてくれている。全力で向かっていく。実際に(申請への準備が)報道され、やはり身が引き締まる思い。監督も昇格を目指してやっていますし、ゴールというか、目標とする道が見えていると感じます。監督の描くサッカーを自分たちは信じて積み重ねていけば、取りこぼしもないし、あとは上位決戦で勝つだけ。(勝つことで)変な自信にならないように、一つ一つ勝っていくだけだと思います」と話し、浮き足立たないようチームを引き締めた。
山口の次戦は6月28日、敵地でカターレ富山と対戦。次のホームゲームは7月5日。維新百年記念公園陸上競技場にブラウブリッツ秋田を迎える。午後6時半キックオフ。勝利に驕ることなく一戦一戦、昇格圏内を確かにするJ3街道の戦いを続けていく。