またまたゴルフ界の「噂」が現実化。T・ウッズとナイキの契約終了。27年間の歴史に幕。#ゴルフ
ゴルフ界の王者タイガー・ウッズとナイキとの27年間に及んだ契約が、ついに終了し、ゴルフ界の歴史に、また1つ、ピリオドが打たれた。
ウッズは20歳でプロ転向した1996年以来、ナイキのマークが付されたウエアに身を包んできた。最終日はナイキのサンデー・レッドシャツに身を包み、メジャー15勝、通算82勝を挙げてきた。だが、そんなウッズの姿を目にすることは、今後は、もう2度とない。
「ウッズとナイキの契約が終了するらしい」という噂は、昨年の秋ごろから、米ゴルフ界で囁かれ始め、昨年12月半ばにフロリダ州のリッツカールトンGCで開催された親子大会のPNCチャンピオンシップは、ウッズがナイキのウエアを着る最後の大会になると見られていた。
同大会の開幕前、米メディアからナイキとの契約について問われたウッズは「僕はこうして今もナイキの商品を身に付けている」と答え、同様の質問を再度投げかけられたときも、ウッズは「僕はこうして今もナイキの商品を身に付けている」と同じフレーズを繰り返した。だが、噂を否定しなかったため、米メディアや周囲は「きっと噂は現実化する」と受け止めていた。
そして、暦が2024年に変わって数日が経過した1月8日(米国時間)、ウッズはナイキとの契約終了を発表した。
「世界を象徴するブランドと27年間以上、パートナーシップを組ませてもらった僕は、とても幸運だった。たくさんの素晴らしい瞬間と思い出でいっぱいだ」
【長い長い、二人三脚】
振り返れば、ウッズとナイキは固い絆で結ばれてきた。華々しい勝利を挙げたときも、悔しい敗北を喫したときも、ウッズとナイキは、いつも一心同体だった。
2009年末から起こった世紀の大スキャンダルの際は、他の契約先が次々にウッズから離れていった中、ナイキだけは契約続行を決め、どん底のウッズに寄り添い続けた。
膝の手術を4度、腰の手術を5度経験したウッズは、そのたびに戦線離脱を余儀なくされ、ナイキのウエア姿を人々に披露する機会は激減したが、それでもナイキはウッズをサポートし続けた。
ナイキが2016年にゴルフ用具部門から撤退し、ゴルフアパレル&アクセサリー部門のみに集約した際は、ウッズは他社に乗り換えることなく、ナイキの変更に歩調を合わせ、ナイキのウエアとシューズを身に付ける形で契約を続行。
ウッズとナイキの蜜月は、そうやって続いていった。
4度目の腰の手術後の2017年5月、ウッズは薬の影響下で車を運転し、DUIで逮捕された。2021年2月には交通事故を起こして右足に重傷を負い、再び、長期の戦線離脱となった。
それでもナイキはウッズとともに歩んできた。
2022年3月に世界ゴルフ殿堂入りの式典に出席したウッズは、その受賞スピーチでナイキの創業者フィル・ナイト氏との出会いのエピソードを明かし、「心から感謝している」と語っていた。
【異変のきっかけは?】
しかし、二人三脚に異変が起こったのは、交通事故後に奇跡的な戦線復帰を果たした2022年4月のマスターズだった。オーガスタ・ナショナルにやってきたウッズが履いていたのは、ナイキのシューズではなく、フットジョイのシューズだった。
「僕の足は今、とても不安定な状態だから、少しでも多く安定性をもたらすものを履いている」
そんなウッズのコメントは、ウッズとナイキの関係悪化、あるいは今後の関係悪化を人々に予想させ、SNSではさまざまな噂が飛び交った。しかし、ナイキは、他社のシューズを履いたことには一切触れず、「私たちナイキ一同は、タイガー・ウッズのカムバックを喜んでいる」と“大人”の対応を見せていた。
だが、昨年のマスターズでも、12月のヒーロー・ワールド・チャレンジでも、ウッズが履いていたのは、やっぱりフットジョイのシューズだったため、ウッズとナイキの決別の噂は一気に膨らんでいった。
そして、2024年1月8日、ウッズとナイキの27年間に及んだ二人三脚に終止符が打たれた。
米ゴルフニュースサイト「ノー・レイイングアップ」は、2016年にゴルフ用具部門を閉じてゴルフアパレル部門のみに絞ったナイキは、「今後はゴルフアパレル部門も閉鎖し、ゴルフ関連のすべてから撤退する予定」とすでに報じている。本当にそうなった場合は、ウッズのみならず、同社と契約しているローリー・マキロイやスコッティ・シェフラー、ブルックス・ケプカらも、ナイキに別れを告げて別ブランドのウエアをまとうことになる。
長年、目にしてきた姿が様変わりすることは、ファンにとっては少々淋しいことなのかもしれないが、それが時代の移り変わりというものだろう。激動の日々を生き残ってきた選手だからこそ、さまざまな変化に遭遇し、身に付けるウエアも変化するのだと考えれば、ウッズらの新たな装いは、サバイバルな生きざまの証として、頼もしく見えてくるのではないだろうか。