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現棋界四強筆頭・渡辺明名人(36)快勝で永瀬拓矢王座(28)を降し朝日杯準決勝進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月16日。愛知県・名古屋国際会議場において第14回朝日杯将棋オープン戦、本戦2回戦▲渡辺明名人(36歳)-△永瀬拓矢王座(28歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 14時に始まった対局は15時49分に終局。結果は129手で渡辺名人の勝ちとなりました。

 渡辺名人は2月11日におこなわれる準決勝に進出しました。

渡辺名人、快勝

 渡辺名人先手で戦型は角換わり腰掛銀となりました。先日の王将戦第1局で指された形です。その経験もあり、両者ともに事前準備で、さらには朝日杯は持ち時間40分の早指しということもあって、驚くほどに早く進んでいきます。

 王将戦で敗れた側の永瀬王座は54手目で手を変えます。そのあともしばらくは実戦例のある進行。開始から10分も経たないうちに終盤戦に入りました。

 73手目。渡辺名人は永瀬陣に銀を打ち込んで攻め続けます。この瞬間、永瀬王座はややがっかりしたような仕草をしたように見えました。どこか誤算があったのでしょうか。ほどなく、形勢は渡辺よしがはっきりとしてきます。

永瀬「早い段階でバランスを崩してしまった」

 局後に永瀬王座はそう語っていました。

 80手目。永瀬王座は自陣二段目に桂を打って粘ります。持ち時間を使い切ってここからは一手60秒未満で指す一分将棋に。対して渡辺名人は18分を残しています。

 才能に加え、努力と根性でトップ棋士となった永瀬王座。苦境に陥ったあとも観戦者をうならせるような辛抱を続けます。

 対して渡辺名人は自玉を金銀3枚の矢倉囲いに入城させて、後顧の憂いをなくしたあと、シャープに攻め続けます。永瀬玉に粘る形を与えず、上下はさみ撃ちの寄せ形を築きました。

 117手目からは渡辺名人も一分将棋に。しかし名人は誤ることなく寄せの網をしぼり続けます。

 128手目。永瀬王座は打ち歩詰めの形に逃げ込みます。さらには逆王手の罠も仕掛けてあります。

渡辺「最後はなんとか」

 渡辺名人は最後まで誤らず、適切な順で永瀬玉を即詰みに討ち取って快勝を決めました。

 渡辺名人はこれで準決勝進出決定です。

 渡辺名人と永瀬王座の対戦成績は、渡辺12勝、永瀬3勝となりました。

 明日は名古屋対局2日目。地元愛知県出身の豊島将之竜王(一宮市)と藤井聡太二冠(瀬戸市)が登場します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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