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日本代表候補合宿。浅原拓真の件には薫田真広・強化委員長が対応。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
浅原(写真左)の務める右プロップはスクラムで最も負荷のかかるポジションとされる。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 ラグビーの日本代表候補にあたる「ナショナル・デベロップメント・スコッド」「ラグビーワールドカップトレーニングスコッド」のメンバーは9月24日から4日間、和歌山・上富田スポーツセンターで合宿を張る(最終日は解散のみ)。初めてグラウンド練習をおこなった25日、薫田真広・強化委員長が取材に応じた。

 内容は、「コンディション不良」のため辞退した浅原拓真について。浅原は23日未明、東京・府中市の路上で横たわっていたところ車にひかれ軽傷を負っていた。

 そばで停車中だった車が浅原に気づかず発進したことで、浅原が下敷きに。近くにいたリーチ マイケル日本代表キャプテンらチームメイトが車を持ち上げ、浅原を救助した。浅原は検査入院をするも大きなけがはなく、チームからの本人への対処などについては今後、なされる見込みだ。

 浅原は22日、東京・秩父宮ラグビー場でのトップリーグ第4節に出場後、チームメイトと府中市内で食事していた。

――今回の経緯について。

「23日の午前中、東芝の方から『詳細は掴んでいないけれど、そういう事実があって、コンディションがよくないので辞退させてほしい』と。こちら(日本代表側)で詳細がわかったのが、きょうの午前中です(25日)。東芝からは(改めて)確認しましたが、事が起きたことに対して非常に申し訳ないということ、浅原が事故に遭ったこと、リーチ含め数名の選手が救助をしたという報告を受けました。浅原の身体が軽傷というか、無事だとも聞きました。検査のため入院し、クリアしたということをきょう聞きました」

――選考に影響は。

「東芝で起きたことで、代表活動中ではないので、(選考への影響は)考えてない。ただスコッドの選手がこういうことを起こしたので、相手の方には申し訳ない(と思う)。チーム内でも、午後の最初のミーティングで共有しました」

――今後は。

「すべてがわかってから対応したい。チームと話をしながら進めていきたいと思っています」

――ワールドカップまで1年。選手たちの意識については。

「公人(であり)、個人(私人)じゃないということを考えながら活動しなくてはならない。ジェイミー(ジョセフヘッドコーチ)からも選手に伝えました。そこはしっかり考えたいと思います」

 浅原の件がニュースになったこの日、リーチら東芝の選手の取材対応はなし。かねてジョセフヘッドコーチらチーム側が定めていた「取材対応は1日2名まで」という規則に順じ、稲垣啓太(パナソニック)、流大(サントリー)がこの日の練習内容などを語った。

 とはいえ当該の出来事がかすかに議論を呼んでいたのは確かで、同じ東芝出身で日本代表の要職に就く薫田強化委員長が対応するのは必要最低限の対処といえた。

 今年の日本代表候補のトラブルでは他に、アマナキ・レレイ・マフィのニュージーランドでの暴行容疑が報じられている。今度の浅原の件と並んで、取材で知られる範囲の事件の詳細には情状酌量の余地も見え隠れする。

 もっとも今後求められるのは、残された当事者(ここであれば日本代表選手)がこれまで起こったことの本質的な要因をひもといたうえで、自分たちだけの高潔性を見出すことだろう。現代表チームでは、選手同士での自治が重んじられている。発信されるメッセージ次第では、さらなる支持者を集められる可能性がある。

 最後に思い返されるのは、代表選手としての浅原の価値である。

 6月のツアー中のある日、練習と練習の合間に靴を履き替え、所定の場所に移動して映像をチェックするタイミングがあった。このような場面ではどうしても移動や準備がスムーズにおこなえないものだが、ここで浅原は早めに靴を履き替え、映像の見られる場所に猛ダッシュで向かった。スケジュール進行の短縮化も促すこの所作は、低い姿勢でスクラムが組めることと同時にチームの重要なファクターとなりえた。

 

 今度の取材機会で薫田強化委員長は、セレクションがジョセフヘッドコーチの専権事項であることを前提に「(今度の事件が選考に影響するとは)考えてない」との考えを示した。本人の事情説明と再挑戦の機会が待たれる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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