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米国民はスポーツに飢えてる? NFLドラフトが史上最高の視聴者数を記録した理由

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
自宅から各チームのドラフト指名選手を発表したロジャー・グッデル・コミッショナー(提供:NFL/USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【NFLがバーチャルでドラフトを実施】

 米国内で依然として新型コロナウイルスが猛威を振るう中、国内最大人気リーグのNFLが現地時間4月23日から完全バーチャルで2020年ドラフトを実施した。

 ドラフト初日となった23日は1巡目指名のみ行われ、ロジャー・グッデル・コミッショナーは自宅から各チームの指名を発表した。

 全体の1位指名権を得ていたベンガルズは、昨シーズンにルイジアナ州立大学を全米王座に導いたQB(クォーターバック)のジョー・バーロウ選手を指名した。

【史上最高の1560万人が視聴】

 ABC、NFLネットワークらともにドラフトを中継したESPNによると、NFLは声明を発表し、ドラフト初日の視聴者数が史上最高を記録したという。

 米国で視聴者数を調べるニールセンによると、ドラフト初日全体の視聴者数は1560万人に上り、過去最高を記録した2014年の1240万人を大幅に上回った。

 また昨年比で37%増となり、瞬間最高は1960万人まで達したようだ。

 NFLは指名終了後に、そのまま新型コロナウイルスの支援基金募集イベントを中継したが、こちらも700万人の視聴者数を記録している。

【米国民にとって久々のライブスポーツイベント】

 まさに異例のかたちで実施されたドラフトだが、過去最高の視聴者数を記録していることから理解できるように、米国民の関心は非常に高かったようだ。

 現在は米国内ではすべてのスポーツが活動を休止し、早くも1ヶ月以上が経過しようとしている。

 スポーツの話題といえば、リーグ再開の目処が立たないという現状と、過去の歴史を振り返る内容ばかり。そんな中で、久々にライブのスポーツイベントが実施されたのだから、人々が飛びついたのは必然といっていいだろう。

【他リーグにも好材料】

 現在も通常通り9月のシーズン開幕を模索しているNFL。MLBやNBAがドラフト実施の延期を健闘する中で、バーチャルながらドラフト実施を発表した際は、やや強行とも思える姿勢に賛否両論が上がっていた。

 さらにNFLでは各チームが開幕の準備ができるように、4月20日から完全バーチャルながらオフ活動を開始することを認めていた。

 そうした状況の中で実際にドラフトが実施されたところ、人々は前述通り久々のスポーツイベントを歓迎したのだ。これは今後ドラフトを控える他リーグにも明るい材料といっていいだろう。

 ドナルド・トランプ大統領も「人々はスポーツを求めている」と話し、主要リーグの早期再開を希望していたが、今回のドラフトから改めて人々のスポーツへの関心の高さを知ることになった。

 果たして今回のNFLのドラフト成功は、スポーツ界の追い風になるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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