日本製鉄のUSスチール買収がもめる意外な理由。国家安全保障を「米国視点」で考察 #専門家のまとめ
日本製鉄による、USスチールの買収計画が難航しています。
この買収計画は成長戦略においてwin-winのはずでした。しかし米鉄鋼業界の労働組合に加え、バイデン&ハリス氏、トランプ&J.D.ヴァンス氏ほか多数の議員が買収に反対の立場を表明しています。
米国家安全保障上の懸念などが理由とされ、トランプ氏はSNSで「Buyer Beware!!!」とやや強い警告メッセージを突きつけました(以下2つ目の記事参照)。
日本とアメリカは同盟国のはずですが何が問題なのでしょうか?米現地情報も含め、ここにまとめます。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
USスチールの本社が激戦州ペンシルベニア州にあることから、大統領選の報道が加熱していた時は買収反対のアピールが票につながるとする見方がありました。しかしこの問題を調べれば調べるほどそれほど単純な話ではないようです。
より深い分析を追求すると、上記3つ目や4つ目の(外交問題評議会による)記事にある通り、対中強硬姿勢を強める米政府にとって、産業基盤の脅威に加え日本製鉄と中国との関係が懸念材料であると窺えます。
シェロッド・ブラウン上院議員(オハイオ州、民主党)はこの取引を最初に反対表明した一人でした。
その一方で同盟国、日本との取引を認めないのであれば、ほかにどの国の企業が買収を許してもらえるかと疑問を呈する専門家もいます。
安保の懸念は現在、対米外国投資委員会(CFIUS)が審査している段階で(バイデン大統領が大統領選挙後まで延長していた)、審査期限はFOXニュースなどによると「来月」とのことです。
外交問題評議会の前述の記事によると、取引を阻止する唯一の権限を持つのが大統領とされています。
審査結果がどうであれ、現役&次期大統領が共に統合に反対の立場を示していることから、筆者は買収の合意に至るのは少々難しいのではないかと感じています。しかしバイデン大統領の「任期中」であれば、意外な展開となる可能性もあります。CFIUSによる審査結果と大統領の決断がどう下されるのか、今後の行方を見守りたいと思います。
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