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なぜ動画や音声サービスを使うのか、その利用目的を探る

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ スマホでも高解像度の動画が視聴できる時代。ではいかなる目的で利用するのか

インターネット回線のブロードバンド化や利用端末の高性能化、各種再生技術の躍進で、大きく飛躍した分野の一つが、インターネットにおけるマルチメディアの利用。今では光ディスクの再生さながらの映像や音声をインターネットを用いてリアルタイムに自宅の端末、さらには手のひらの上のモバイル端末で再生し、楽しむことができる。「好きな映像をいつでもどこでも自由自在に視聴できる」との観点では、まさに未来的な移動型テレビ時代の到来と見ても問題ないのが現状。それではそのような状況の中で、映像や音声コンテンツを提供するサービスを利用している人は、どのような目的でそれらを使っているのだろうか。総務省が2016年8月に詳細値を発表した「通信利用動向調査」の公開値を基に、その利用目的を確認していくことにする

「ファンの動画」「話題の番組や動画」が観たい

映像や音声コンテンツの配信サービス、例えばYouTubeやニコニコ動画のような共有サービス、HuluやWOWOWメンバーズオンデマンド、バンダイチャンネルなどのような動画配信サービスなどを利用している人を対象に、なぜそのサービスを使っているのかを聞いた結果が次のグラフ。最上位は「自分の好きなアーティストなどの動画などを視聴するため」で62.3%。ファン行動の一環として、動画視聴を行っている次第。

↑ 映像・音声コンテンツサービスの利用目的(複数回答、利用者限定)(2015年)
↑ 映像・音声コンテンツサービスの利用目的(複数回答、利用者限定)(2015年)

特定のアーティストのファンになれば、あらゆる機会でその作品に触れたくなる。CDを購入し、出演するラジオ番組を聴き、演じているテレビドラマを視聴し、インタビュー記事が載っている雑誌を入手する。動画の視聴もまたしかり。自分が見逃していた作品の存在に気が付くと地団駄を踏み、今後そのような失態を繰り返さないよう、さらにアンテナを広げていく。オンデマンド方式(観たい時にはいつでも観られる)ならば、CDやDVD同様、何度でも閲覧視聴できるのがありがたい。

次いで多いのは「話題になっている動画・番組を視聴するため」で46.3%。これは口コミなどで話題に登った番組や動画について、自分で視聴するのが目的。例えばYouTubeで猫が曲芸を見せる映像が世界的に話題に登っているとのニュースが流れた際、具体的に自分でも観たくなるものだ。

意外に多いのが「自分の好きな時・場所で視聴できるから」で39.6%。後ほど繰り返し、データベース的な利用方法としての「見逃した番組を視聴するため」の23.3%よりも高い値を示している。スマートフォンなどの普及に伴い「移動型テレビのようだ」とする表現が用いられるが、その利用スタイルが多くの人に受け入れられていることになる。もっともこれが「外出時、例えば通勤の際の電車内」なのか、「自宅内での移動先、例えばベッドの中など」を指すのかまでは、今件調査では判明できない。

属性別に仕切り分けすると

これを属性別に仕切り直したのが次以降のグラフ。まずは男女別。

↑ 映像・音声コンテンツサービスの利用目的(複数回答、利用者限定)(男女別)(2015年)
↑ 映像・音声コンテンツサービスの利用目的(複数回答、利用者限定)(男女別)(2015年)

「話題になっている動画・番組を視聴するため」「自分の好きな時・番組を視聴するため」「特定のサイトのみで公開される動画を視聴するため」ではやや男性の方が高い値を示しているが、「自分の好きなアーティストなどの動画などを視聴するため」「見逃した番組を視聴するため」では女性の方が明らかに高い値を示している。映像・音声コンテンツサービスは女性のファン行動において、大いに役立っているようだ。

↑ 映像・音声コンテンツサービスの利用目的(複数回答、利用者限定)(年齢階層別)(2015年)
↑ 映像・音声コンテンツサービスの利用目的(複数回答、利用者限定)(年齢階層別)(2015年)

高齢者の回答事例数が少ないため(例えば今件前提条件に適う80歳以上は、比重調整後の集計人数は62人)ややぶれが生じている部分もあるが、概して「自分の好きなアーティストなどの動画などを視聴するため」「話題になっている動画・番組を視聴するため」「自分の好きな時・場所で視聴できるから」は年上になるにつれて減少していく傾向にある。ファン行動の類や話題のテーマへの追随、移動先での動画視聴など、アクティブな行動に連なる形での映像サービスに腰が引けていくのだろう。

ただし「自分の好きなアーティストなどの動画などを視聴するため」に限れば、「アーティストへの追っかけ行動そのものの気力減退」では無く、「好きなアーティストの動画・音声そのものが無い、少ない」可能性もある。中堅者層以上向けの映像・音声コンテンツの配信が積極展開されれば、あるいは需要は大いに発掘されるかもしれない。実際、「見逃した番組の視聴」「特定のサイトのみで公開される動画を視聴するため」では年齢階層別の格差があまり見られず、歳と共にモチベーションが落ちているようには見られないからだ。

適切な環境が揃えばテレビ同様の高画質で動画が視聴できる映像、そして音声コンテンツサービスは、今後さらに配信素材の充実と共に、普及率を高めていくことは容易に想像できる。テレビ視聴ほどハードルは低くないものの、多彩な映像などが自在に楽しめる魅力は捨てがたい。それはまるで、自宅にビデオレンタルショップが登場し、いつでも利用できる状態にあるのと同じではある。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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