森保ジャパン同様に過大評価は禁物?韓国ベント監督は「魔のジンクス」を破れるか
ロシア・ワールドカップから2か月。ついに森保一監督率いる新生・日本代表が動き出した。9月11日にコスタリカ代表を3-0で下して初陣を飾った森保ジャパンにはいろいろと関心が集まっている今日この頃だが、その結果は、韓国メディアでも「日本にとって意味が大きい勝利だ」(『スポーツ・ソウル』)などと報じられていた。
(参考記事:「日本にとって意味が大きい勝利だ!!」韓国メディアがコスタリカに完勝の森保Jを称賛)
新体制の日本代表には韓国も関心を寄せているわけだが、韓国も8月17日に就任したパウロ・ベント新監督が9月のFIFA国際マッチウィークに始動している。
9月7日には、森保ジャパンとの対戦を控えていたコスタリカとホームで対戦して2-0で勝利。11日にはチリと対戦し、0-0で引き分けている。
韓国との“因縁”。プライベートも話題に
ベント監督はスポルティングCPで指導者となり、2010年から2014年までは母国ポルトガル代表の指揮官を務め、ユーロ2012ではチームをベスト4に導いた指導者だ。その後はブラジルのクルゼイロ、ギリシャのオリンピアコス、中国の重慶力帆などの監督を歴任して、今年8月に韓国代表監督に就任した。
ただ、就任当初に韓国で注目されたのは、指導者としての経歴よりも、現役時代の韓国との“因縁”の方だろう。
というのも、ベント監督はポルトガル代表として2002年の日韓ワールドカップに出場し、グループリーグ第3戦では韓国代表と対戦している。
守備的MFでスタメン出場。筆者も仁川(インチョン)の文鶴(ムンハク)総合スタジアムの記者席で試合を見守ったが、背番号17をつけてパク・チソンやユ・サンチョルを激しくチェックしていた姿が記憶にある。
その韓国対ポルトガル戦がベント監督にとっては自身最後のAマッチとなったが、あれから16年の時を経て今度は韓国代表監督に就任したという事実に、不思議な巡り合わせを感じざるを得ない。
それだけに就任当時から韓国メディアでは、ベント監督の現役時代の因縁や指導者としての経歴はもちろん、その人柄やプライベートも話題になっていた。これまでも韓国代表選手たちの“美女パートナー”が話題になることは多かったが、今後ベント監督とともに韓国で生活するという妻にも関心が寄せられていたほどだ。
(参考記事:【画像】ソン・フンミンの「恋人」は? 韓国代表の「美女パートナー」たちがかわいすぎる!!)
12年ぶりの“完売”、アイドル並みの人気選手たち
そんなベント監督率いる新生・韓国代表の初陣ということもあって、コスタリカ戦、チリ戦ともにチケットは完売。コスタリカ戦が行われた高陽(コヤン)スタジアムには3万6127人、チリ戦が行われた水原(スウォン)ワールドカップ・スタジアムには4万127人のサポーターが詰めかけたという。
韓国代表のホーム戦が2試合連続で売り切れたのは、2006年のドイツ・ワールドカップを控えて行われたセネガル戦とボスニア・ヘルツェゴビナ戦以来、12年4か月ぶりのことだというから関心度の高さがうかがえるだろう。
もっとも、人気の背景にはソン・フンミン、ファン・ウィジョ、ファン・ヒチャン、イ・スンウなど、先日閉幕したジャカルタ・アジア大会で金メダルを獲得して帰国した面々たちもチームに合流したことも大きいだろう。韓国ではアジア大会を機に女性ファンが急増しているらしい。
(参考記事:BTSと同列? 韓国で起こるサッカー選手の“アイドル化”。女性ファンが人気低迷のKリーグ救うか)
いずれにしても、ベント体制のデビュー戦には大きな関心が集まり、1勝1分けの成績を残したことで韓国メディアの新監督評も上々だ。
「“親善試合1勝1分け”…ベント号、希望を見た!」(『SBSニュース』)、「“素早い韓国サッカーが帰ってきた”…ベント号に合格点」(『TV朝鮮』)といった具合である。就任直後は一部ファンから失望の声もあがったベント体制だが、まずまずのスタートを切ったと言える。
(参考記事:韓国代表ベント新監督の就任に現地ファン大失望。「金がもったいない」「この決め方は違う」)
外国人監督デビュー戦の“ジンクス”
ただ、デビュー戦の結果だけでベント体制を評価するのは早計だろう。
振り返れば、韓国代表を率いてきた歴代外国人監督も、スタートこそ好調だったが尻すぼみしてしまうケースが多かった。
これまで韓国代表の指揮を執った外国人監督は、ベントを含め8人。1994年7月から約6カ月間代表チームを指揮したアナトリー・ブイショヴェツを皮切りに、フース・ヒディンク(2001年1月~2002年6月)、ウンベルト・コエーリョ(2003年2月~2004年4月)、ジョー・ボンフレール(2004年6月~2005年8月)、ディック・アドフォカード(2005年10月~2006年6月)、ピム・ファーベック(2006年7月~2007年8月)、ウリ・シュティーリケ(2014年9月~2017年6月)が代表監督を務めてきた。
そのデビュー戦の戦績を見ると、コスタリカ戦で勝利したベントを含め、6勝1敗1分けと白星スタートを切った指導者が圧倒的に多いが、その勢いは長くは続かなかった。
在任期間はいずれも1年前後と短く、最長(2年9カ月)のウリ・シュティーリケもロシア・ワールドカップ最終予選で成績不振に陥ると、最終予選2試合を残して更迭されている。
当然のことだが、デビュー戦の結果が良いからといって、その後の成績に期待できるわけではないわけだ。
ちなみに、唯一デビュー戦で敗れているのはフース・ヒディンクだ。香港で行なわれたカールズバーグカップでのノルウェー戦が初陣で、2-3で敗れている。
試合が終わって韓国記者たちとホテルに向かう帰り道、ちょうど旧正月時期だったことにもあって早じまいする店が多く、韓国の先輩記者は「試合も負けてメシにもありつけない。ヒディング号の行く先は不吉だ」と苦笑いしていたが、ヒディンクはその1年半後に韓国代表をワールドカップ・ベスト4に導くのだから、スタート・ダッシュがその後の成功を約束してくれるとは限らないだろう。
「外国人監督はヒディンクを除いて失敗の連続だった」(『スポーツ東亜』)とする韓国で、果たしてベントはデビュー戦の“ジンクス”を破ることはできるか。成功できるだろうか。
日本と同じく新体制のスタートを切った韓国代表には今後も注目していきたい。