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長崎県は「特別警報」、韓国は1,000ミリ超の大雨

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
気象庁のレーダー画像に筆者加筆

長崎県五島列島や対馬に特別警報が発令されました。数十年に一度のこれまでに経験したことのないような雨が降っていて、災害が発生していてもおかしくない状態です。

※特別警報とは

「特別警報」は、予想される現象が特に異常であるため、重大な災害の起こるおそれが著しく大きい旨を警告する防災情報です。

出典:気象庁

線状降水帯

レーダーには、南北に延びた雨域、線状降水帯が写っています。新上五島町では12時間で7月としては観測史上最も多い149.5ミリ、北松浦郡小値賀町では観測史上最も多い114.5ミリの雨が観測されました。

NHKによると、土砂崩れで一部の集落が孤立、住宅の裏山が崩れて土砂が家屋に侵入、また浸水などの被害が起きているようです。

大雨の原因

気象庁発表の実況天気図に筆者加筆
気象庁発表の実況天気図に筆者加筆

大雨の原因は台風5号と太平洋高気圧です。

台風5号に向かって吹き込む南西の風と、太平洋高気圧の縁を流れる南東風が収束し、発達した雲を発生させています。線状降水帯がかかり続けているのは、台風が比較的遅いスピードで北上を続けていること、さらに太平洋高気圧が勢力を強めて居座っていることから、同じような風が吹き続けているためです。

九州の西の海上では、まだ発達した積乱雲の塊があり、今後も北上し続けるおそれがあります。

台風5号、韓国に上陸へ

一方台風5号はまもまく韓国に上陸する見込みです。12時時点の台風の中心は、韓国南部のすぐ西にあります。中心気圧は985hPa、最大風速は23m/sで、済州島では昨日から1,045ミリの雨が観測されています。

5号は今後やや東向きに進路を変える見込みで、そうなると日本にかかる線状降水帯の位置も東にずれていくことが考えられます。気象庁は他の地域にも特別警報が出る可能性を示唆しています。

雨の予想

気象庁発表の土砂災害の危険度分布 (筆者加工)
気象庁発表の土砂災害の危険度分布 (筆者加工)

長崎県では夕方にかけて1時間に80ミリを超えるような猛烈な雨が降る可能性が出ています。今日昼からの24時間で200ミリ、さらにその後の24時間で50ミリから100ミリの雨が降るおそれもあるとのことです。

昨日からすでに400ミリ近い大雨が降っており、深層の地盤までもが崩壊してしまうような「深層崩壊」と言われる大規模な土砂災害が起きる危険性も高まっています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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