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核廃絶訴え、オスロから広島と長崎へ祈り フィヨルドに浮かんだとうろう

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ノルウェーでの祈年行事には5千人以上が参加 Photo:Asaki Abumi
6千人以上が集まった会場 Photo:Asaki Abumi
6千人以上が集まった会場 Photo:Asaki Abumi
オスロの広場にたつ広島の被爆石 Photo:Asaki Abumi
オスロの広場にたつ広島の被爆石 Photo:Asaki Abumi

8月6日、オスロの中心地にあるヨングス広場にて、広島と長崎へ平和の祈りをこめて、核兵器反対のコンサート「ヒロシマ70」が開催された。ジャズ界の巨匠であるハービー・ハンコック氏など知名度の高いアーティストが集まり、スピーチや歌を披露。主催者側によると、会場には6000人以上の人々が足を運んだ。

同広場には、1995年に50年目の節目で広島市から寄贈された、被爆石で作られた平和記念碑が立つ。石碑を建てたのは、核兵器に反対する現地のNGO「核兵器ノー」など。同団体は、毎年8月6日になると、核兵器廃絶を訴える催しを開催している。今年は原爆投下から70年目を迎え、例年より大きな規模でおこなわれた。

自身の被爆体験を語る藤森氏(左) Photo:Asaki Abumi
自身の被爆体験を語る藤森氏(左) Photo:Asaki Abumi

日本からゲストとして招かれていたのは、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の藤森俊希事務局次長。約1週間の滞在中に、コンサート会場やメディアを通して、自身の体験談を伝えた。藤森氏は1才の時に、広島の爆心地から2,3キロメートルの地点の土手で母親とともに被爆。人々を苦しめ続ける原爆の非人道性とともに、核兵器廃絶のための議論を、政治レベルから市民レベルまで高めることの重要性を訴えた。

Photo:Asaki Abumi
Photo:Asaki Abumi

被爆者の体験談をめったに直接聞く機会がないノルウェーの人々にとって、藤森氏の言葉は心に強く響いたようだった。ノルウェー国営放送局や通信社をはじめとする、国内の最大手メディアからは取材が殺到し、藤森氏の言葉はトップニュースとして報道された。

「ヒロシマ」を歌うハイアズアカイト Photo:Asaki Abumi
「ヒロシマ」を歌うハイアズアカイト Photo:Asaki Abumi
即時の核兵器廃絶を訴えるハンコック氏 Photo:Asaki Abumi
即時の核兵器廃絶を訴えるハンコック氏 Photo:Asaki Abumi

ハービー・ハンコック氏はスピーチで「われわれのゴールは同じであり、平和への唯一の道は核兵器廃絶です」と述べた。

同じく、影響力が強いノルウェーの人気バンド「ハイアズアカイト」(Highasakite)は、「ヒロシマ」という歌を披露。直接インタビュ−では「政治的な意味で、広島や原爆をイメージして作った曲ではありませんが、70年という節目に、この場で歌うことは重要なことだと思いました」とヴォーカリストのイングリ・ヘレーネ・ホーヴィック氏は語る。核をもつことで、核保有国の人々の命は守られると思うかという問いには、「ノー」とメンバー全員がすぐさま否定した。

オスロのフィヨルドに浮かぶとうろう Photo:Asaki Abumi
オスロのフィヨルドに浮かぶとうろう Photo:Asaki Abumi

同日の夜には、オペラハウス前でとうろう流しがおこなわれた。

とうろうにメッセージを書く現地の人々 Photo:Asaki Abumi
とうろうにメッセージを書く現地の人々 Photo:Asaki Abumi

藤森氏が広島から持参した30個と、現地の人々が作った100個のとうろうが、フィヨルドの水面を静かに流れ、ノルウェーから日本へ、平和への祈りが捧げられた。

広島とオスロで作られたとうろうが一緒に Photo:Asaki Abumi
広島とオスロで作られたとうろうが一緒に Photo:Asaki Abumi

Photo&Text:Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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