【名古屋市南区】旧東海道の趣を残す、貴重な一里塚があるのは名古屋でここだけ。「笠寺一里塚」を探訪
歴史の印象がそれほど名古屋ですが、江戸時代には街道の結節点でした。
東海道をはじめとして、秋葉街道や飯田街道など、山間部に張り巡らされた小さな街道も交わり、大きな経済圏の中心的な役割を担っていたのです。
有松絞で栄えた有松の街並みなどが有名ですが、その他にも歴史の痕跡が市内には散りばめられています。
南区にある「笠寺一里塚」もその一つ。
一里塚とは、江戸時代初期に幕府が主要街道を整備した際、一里(約4km)ごとに塚を築き、その上に木を植えて道しるべとしたものです。旅人に距離を示しただけでなく、荷物の運賃計算と基準ともなりました。
笠寺一里塚は、愛知県内に現在も残る5つの一里塚のひとつで、名古屋市内では唯一の残存事例です。かつては、道を隔てた南側にムクノキが植わった1基があり、2つで1つの塚だったのですが、その1基は宅地造成のために撤去されました。
笠寺一里塚は、東海道の江戸から88里目にあたり、塚の上にエノキの大木が植えられています。旧街道の道標の役割を終えてなお「ここにいるぞ!」と言わんばかりの迫力。塚の上に大きな根を張って、圧倒的な存在感を醸し出しています。
かつての東海道の繁栄が偲ばれる場所。当時生きていたわけではないのに、なぜか人の活気を感じてしまいます。
時代を経て、刻々と周囲の景観が変わっても、変わらず佇む一里塚。むしろ、もっと強く根を張り、人の時代の流れを見守ってきたように感じられます。
街道の歴史と自然の生命力が織りなす、神秘の笠寺一里塚。小さな空間に、いろいろな感情が想起されるスポットです。
<笠寺一里塚>
住所:愛知県名古屋市南区笠寺町下新町
アクセス:名鉄名古屋本線・本笠寺駅から徒歩約10分