新型コロナウイルス感染症 実際に診た医師の印象
国立国際医療研究センターから、3例の新型コロナウイルス感染症についての報告が日本感染症学会のホームページに速報として掲載されました。
このページの中の「当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者3例の報告(国立国際医療研究センター)(2020.2.5)」という報告がそれに当たります。
あれっ・・・2番目に書かれている著者の名前・・・どこかで見たことが・・・ってまあしらじらしいことを言ってる場合ではなく、そうです、私もこの診療チームの一員なのです。
「この医者、いつもヤフーで記事を書いててヒマなんだろうなあ・・・」って思われている方も多いと思いますが、実際はそうでもないのです!ちゃんと患者さんも診てるんです!
この報告について、メディアにも取り上げていただいています。
ここでは抗HIV薬の使用について取り上げていただいておりますが、この点についてはまだこの薬を飲んだお一人の患者さんが経過良好なだけです。今の時点でこの薬剤が有効かそうでないかは言えません。
それよりも我々が伝えたいのは、この感染症が特別な感染症ではなく、罹った患者さんは皆さん快方に向かっていますよ、ということです。
これを書いた時点では3例報告でしたが、今はもう少し多くの新型コロナウイルス感染症の患者さんを我々は診療しています。そして、この中で重症の方はいらっしゃいません。
「徐々に見えてきた新型コロナウイルス感染症の重症度と潜在的な感染症数」でも書きましたが、健康な方が罹っても重症化する可能性は高くない感染症だろうと思います。
ただ「だるい」という症状は強いようですし、インフルエンザと比べると症状の続く期間は長い印象ですので、仕事を休まないといけない期間は長くなるかもしれません。
この感染症が広がると、社会に与える影響は決して少なくないだろうと思いますが、健常者が罹った場合に命に関わる可能性は高くないだろうと考えます。
「今よりも、インフルエンザのときの方が辛かった」とおっしゃる患者さんも実際にいらっしゃいました。
一時期「死のウイルス」のように扱われていましたが、実態が明らかになるにつれ、持病のない若い方にとっては決して怖い感染症ではないことが分かってきました。
過度に恐れず、現状を正しく認識し、こまめな手洗い、咳エチケットといった普段から個々人ができる感染予防をより丁寧に行っていきましょう。
一方で、高齢者や持病のある方が新型コロナウイルス感染症に罹ると重症化しやすいと考えられていますので、これらの方が罹らないように社会全体で守る必要があります。
現在の横浜港のクルーズ船での感染者については一般人口に比べ高齢の方が多いのではないかと推測されます。
今回のクルーズ船での感染者から重症化する方が出ないことを願います。