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日本とは違う、米国で広がる賃料引き下げ求める動き、新型コロナで店舗閉鎖のテスラ、家主に減額要求

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)(写真:ロイター/アフロ)

 米ウォールストリート・ジャーナルによると、電気自動車(EV)大手の米テスラは、販売店やサービスセンターの賃料引き下げを家主に求めている。

「毎月の賃料負担を一刻も早く軽減したい」

 新型コロナウイルス感染拡大対策として、多くの事業活動を停止している同社は、こうした措置でコスト削減を図りたい考えだという。

 ウォールストリート・ジャーナルが入手した家主宛の電子メールには、次のように書かれていたという。

 「急速なパンデミック(世界的大流行)が、この国に大きな影響を及ぼしており、当社は長期的な成功と成長を確実なものにするため、戦略的決断に迫られている。事業活動に対する制限が厳しくなる中、毎月の賃料負担を一刻も早く軽減したい。これまで通り、双方に利益をもたらすパートナー関係を続けるため、近日中に協議したい」

 同社は米サンフランシスコ近郊のフリーモントにEV工場を持つ。しかし、カリフォルニア州の行政当局は、新型コロナの感染拡大抑制の措置として、テスラの事業を「不要不急」と見なした。これにより同社は5月上旬まで工場の閉鎖を余儀なくされた。

 こうした中、同社はさまざまな方法でコスト削減を図っている。先ごろは、全社員の給与を一時的に削減し、時間給労働者の一時帰休を実施すると伝えられた。

 米ニュース専門局のCNBCによると、米国ではバイスプレジデント以上の役職者の6月末までの給与を3割カットする。また、ディレクター以上は2割、一般社員は1割カットする。時間給労働者に対しては、無給の一時帰休を工場の操業再開まで実施した。

 CNBCは別の記事で、テスラの一時帰休は、米国の販売・納車担当者の約半数に影響が及ぶと伝えた。

シェアオフィスのWeWorkも打撃受ける

 テスラのように賃料の減額を求める企業は増えているという。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、シェアオフィス「WeWork」を運営する米ウィーカンパニーは、米国の一部の物件の賃料の支払いを停止した。オフィスの利用者が減少していることがその理由だという。同社は賃料負担の軽減や、収益分配型契約への移行に関して家主と交渉しているという。

米欧で賃料支払いの猶予措置

 なお、こうした企業や個人の賃料について、米欧などの各国が支払い猶予措置をいち早く導入したと伝えられている。米国では3月27日に緊急経済対策法が成立。日本経済新聞やNHKによると、この日から120日間、滞納があった場合でも、家主は延滞料を請求できない。また、この期間終了後も30日以内の立ち退きを要求できないという。

 英国では6月30日まで、滞納を理由とした立ち退き要求を禁止。ドイツでも6月30日までの賃料に関して、立ち退きを要求できないほか、4〜6月分の賃料に限定し、支払いを2年間猶予するという措置をとった。これら各国の法制化の動きに対し、日本は現在、家主への協力要請にとどまっているという。

  • (このコラムは「JBpress」2020年4月16日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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