Yahoo!ニュース

100均の「クエン酸」で無双状態?! 特徴を最大限に活かせる掃除場所3選

藤原千秋ライター、住生活ジャーナリスト
(提供:kumagaiyuka/イメージマート)

酸味成分として知られ、pH調整剤や酸味料といった食品添加物としても広く使われている「クエン酸」

食品スーパーの製菓材料売り場などで粉状の商品を見かけますが、「100円ショップの洗剤売り場」にも置いてあること、ご存知でしたか?

近年、酸性の洗浄剤としても重宝されているこの「クエン酸」。今回は、主にその掃除分野での活用法についてご説明します。

「クエン酸」って何?

写真:shibainu/イメージマート

「クエン酸」の「クエン」はカタカナ表記するのが通常ですが、漢字の「枸櫞」が元。枸櫞はミカン科ミカン属の常緑低木樹で、レモンによく似た果実をつけますが、酸っぱすぎて生食はできません。

この枸櫞や檸檬を含む柑橘類に含まれる、代表的な酸のひとつが「クエン酸」です。

工業的にクエン酸はデンプンや糖をコウジカビの一種で発酵させて作ることができます。精製されたクエン酸の見た目は白い粉状で、においはありません。非常に水に溶けやすい性質(潮解性)を持っており熱しても溶けます。化学式C6H8O7・H2Oで、水に溶かすと弱酸性を示します。

酸っぱい味つけのみならず、「酸」の力で掃除に使えるこの「クエン酸」。重曹同様、界面活性剤が含まれていないことから「洗剤」ではないという点、洗剤ではなく「洗浄剤」という位置付けになる点、とりあえず頭の片隅に残しておいてください。

「クエン酸」が活躍する掃除場所とは?

「クエン酸」の代表的な特徴(水に溶けやすい、弱酸性、においがない)を活かすことのできる、クエン酸と相性のいい代表的な掃除ポイントを3つご紹介します。

⒈こびりついた水垢汚れ(浴室、洗面所、キッチン等)

写真:maroke/イメージマート

私たちの暮らしと水(水道)はつねに切り離しがたく、炊事洗濯に次いで掃除に際しても水は必須のパートナーといえます。しかしこの水そのものが、家の汚れの原因にもなるので困ります。

浴室の鏡やガラスドア、水栓金具、風呂椅子や洗面器、また洗面所の鏡、水栓、キッチンの水栓などといった箇所に、「白いカピカピした」「硬い」汚れが付くことがあります。これは「水垢」「スケール」「鱗状痕(りんじょうこん)」などと呼ばれる、水道水に含まれるミネラル成分。炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムがこの汚れの正体です。

ほぼ石状の汚れなので、通常の界面活性剤、洗剤では簡単に落とすことができません。化学的に「溶かす」ことが必要です。そこで活躍するのが比較的安全(食品添加物)な酸である「クエン酸」。水に溶かすと弱酸性。また水によく溶ける性質を利用して、スプレー状の掃除道具にすると汎用性高く使えます。

水1カップに小さじ半分程度が希釈の目安です。空のスプレーボトルにこの水溶液を入れ、水垢(鱗状痕)が付いている部分に吹き付け、数分置いて水垢が溶けたところでペーパーやマイクロファイバークロスで拭き取ります。金属は錆びてしまうので必ず濯ぎ拭きを行うようにしましょう。

クエン酸水はにおいがないのも利点です。酸を利用する意味で食酢、穀物酢を掃除に使うという方法もあるのですが、浴室などにこもる「酢臭い」においが不快な人にも使いやすい素材です。

⒉アンモニア臭(トイレ、リビング、寝室、ペット周り等)

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

トイレの便器、便座周り、床、壁などから漂う特徴的なアンモニア臭。小さいお子さんやペットなどと暮らす際には、なかなか避けがたいおしっこの粗相があると、リビングや寝室といった居室でも悩まされることがあります。

アンモニアは主にトイレ内などにこぼれたり飛び散るなどした尿の尿素が雑菌に分解されることで発生しますが、近年では私たちの身体そのものからも漂い出てしまう(疲労臭)ことがわかっています。特に粗相の被害のない、リビングソファや寝具にも知らず知らず染み込んでしまっているかも知れません。

このアンモニア臭を伴う箇所の掃除(ケア)にも、前述のクエン酸水スプレーを活用できます。クエン酸水は界面活性剤を含まないので汚れ落とし効果はマイルドですが、若干の剥離効果が見込めるのでこまめなトイレ掃除に使う際には、掃除効果プラス、アルカリ性のアンモニア臭を中和して消臭する効果があるため一手間でも一石二鳥なのです。

アンモニア臭の気になるソファ等、寝具類は本来洗濯してしまうのが根本的対応にはなりますが、洗濯する日までのつなぎとして、クエン酸水スプレーを吹き付け、乾燥させることで嫌なにおいを減らすことができます。

⒊もらい錆(浴室、洗面所、キッチン等)

写真:アフロ

浴室や洗面所に、不用意に置いてしまったカミソリやヘアピン跡が茶色く残ってしまったり、キッチンなどで缶詰の空き缶を置いていた作業台などに丸い跡がついてしまい、容易に落とせなくなってしまった、という経験がある人、少なくないのではないかと思います。

この汚れは「もらい錆(さび)」と呼ばれます。あるもの(本来さびないもの)に対して他の金属が出した錆びが付着してしまうことで、一度もらい錆が付くと、通常の洗剤ではなかなか落とすことができなくなってしまいます。

もらい錆を落とすための専用クリーナーも市販されてはいますが、あまり一般的ではありません。しかしクエン酸を使えば、この汚れを溶かすように落とすことができます。

もらい錆の付いてしまった箇所に、クエン酸(粉)を、錆部分を覆う程度に乗せ、少量の水で溶かします。そのまま20〜30分置いたら、少量のクレンザー(キッチン用など、粉状が良い)をふりかけ、ブラシやスポンジの硬い部分でこすり落とし、水でしっかり濯ぎます。

クエン酸が掃除に適さない場所

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

クエン酸には、「酸」ゆえに掃除に使えない箇所があります。くれぐれも間違えないようにしたいものです。

代表的なものが、玄関の三和土や床などに使用される「大理石」。美しいツヤが溶けて消されてしまい元に戻りません。

「鉄」のものや「コンクリート」に使用するのも止めましょう。錆の原因になります。

意外なクエン酸の活用法「スライムを溶かす」

提供:zukky/イメージマート

子どものおもちゃであるスライム。これは、座布団やラグ、衣類などに付着してしまうと、柔らかいままでも、乾いてしまってもとても厄介な存在です。

しかしクエン酸を溶かした水でスライムごと溶かして落とすことができます。衣類など洗える素材の場合には、5%程度に希釈したクエン酸水に浸けて、スライムを緩め溶かし、洗濯板など用いてぬめる成分をこそげ落とします。

ラグや布団など洗いにくい素材に浸み込んだスライムは、クエン酸水に浸けたタオルを軽く絞ったものを被せて湿らせ柔らかくしたのち、このタオルを使ってやはりこそげるように拭き取ります。少し手間はかかりますが意外としっかり落ちるので、諦めずに頑張ってください。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

ライター、住生活ジャーナリスト

「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『人生が整う 家事の習慣』(西東社)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。2020年1月より東京中日新聞にてコラム『住箱のスミ』連載中。

藤原千秋の最近の記事