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中央銀行と市場との対話の事例、今回のFRBの0.5%の大幅利下げはダドリー発言から予想ができた?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 13日にダドリー前ニューヨーク連銀総裁は、17、18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で当局が0.5ポイントの利下げを実施する余地があるとの見方を示した(ブルームバーグ)。

 この発言によってFRBは利下げを実施し、その幅は0.25%ではなく0.50%となる可能性が高いと私はみていた。現実にFRBは18日に0.5%の利下げを決定した。

 12日にはウォール・ストリート・ジャーナルと英フィナンシャル・タイムズは、FRBが利下げ幅を0.25%にするか0.5%にするか難しい判断に直面していると報じていた。

 その翌日にダドリー前ニューヨーク連銀総裁が、0.5%の可能性を示唆したのはどうしてなのか。

 中央銀行と市場との対話は難しい問題である。いや、正確にいえばこれは「日銀にとっては」と言えるものなのかもしれない。

 日銀がメディアを通じて、金融政策の方向性を示唆することがあるが、これを市場参加者は「リーク」と呼ぶことがある。

 そう言いながらも、市場参加者の多くが予想外としていた金融政策の修正が実施されると、市場との対話を問題視するような発言が出てくる。

 中央銀行にとっては、金融緩和を決定する際にはサプライズを意識したもの、金融引き締めに際しては、市場への織り込みを意識させる必要があるとの見方がある。

 その効果、もしくは影響を見越してのものとなるが、現在ではどちらの方向の調節でも、市場にある程度、事前に浸透させる必要があると思っている。

 ダドリー前ニューヨーク連銀総裁の発言に戻るが、ここで注意すべきことは、発言のタイミングと発言者となる。

 発言はいわゆるブラックアウト期間内に行われた。ブラックアウトとはFOMCの12日前からFRB高官が金融政策に関する発言を自粛する期間となる。ダドリー氏は現在はFRB高官ではないのでこのタイミングの発言に問題はない。

 ただし、ダドリー氏は前ニューヨーク連銀総裁、つまりFRB副議長に相当する立場にいた人物である。発言のタイミングそのものからも、その発言が個人的な憶測であるとはむしろ考えづらかった。

 このあたりは市場も理解しており、それによって0.5%の利下げを織り込んできたと思われる。

 WSJなどの報道から、12日以前では利下げ幅を0.25%にするか0.5%にするか、参加者の意見がまとまっていなかった可能性がある。しかし、13日にはある程度、方針が固まりつつあったとの見方もできるかもしれない。

 このダドリー発言をリークと呼ぶ市場参加者はいないと思われる。これもひとつの市場への織り込み手段といえるものではなかろうか。

 日本でも、あまりリーク、リークと騒ぎ立てるより、メディアを通じたものであれ、事前の市場への織り込みと認識する必要があると思う。

 中央銀行と市場との対話に必要なのは、中央銀行の姿勢や意思、方針を市場参加者全員がアクセスできるもので報じられることであり、そうであればそれをリークと捉えて非難する必要はないと思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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