記録ずくめのNumber_iのアルバム「No.Ⅰ」は、本気の海外進出の布石となるか
Number_iが9月23日にリリースした1stアルバム「No.Ⅰ」が、初週40万枚超えで、2024年度で3番目に多い売上を叩き出すなど、様々な記録を達成しているようです。
「No.Ⅰ」は、ビルボードの総合アルバムチャートで1位になった上に、オリコンチャートでも、自身2度目のデジタルランキング2冠を達成。
さらに、オリコン週間デジタルシングルランキングでは、1位〜4位までをNumber_iの楽曲が独占し、男性アーティストとしては史上初の快挙となったようです。
まさに「No.Ⅰ」というアルバムタイトルにふさわしいスタートを切ったということが言えるでしょう。
もちろん、Number_iは、デビュー曲である「GOAT」の頃から様々なチャートで1位になってきたグループですので、こうした国内チャートの1位入りはある意味当然と言えるかもしれません。
Spotifyの新アルバム世界ランキングで4位に
ただ、今回の「No.I」で特に注目していただきたいのは、Spotifyの世界ランキングである「TOP ALBUMS DEBUT GLOBAL」というチャートで4位にランクインしている点です。
このチャートは、タイトル通りその週にデビューをかざったアルバムの中での再生数をランキング化したもので、Number_iの「No.I」は、レディー・ガガさんやアレックス・ウォーレンさんのアルバムに並んで4位に入っているのです。
実は、日本の楽曲がSpotifyのグローバルチャートの上位に入ることは、あまりあることではありません。
これには日本でサブスク型音楽配信サービスの普及が遅れた関係で、世界における日本のユーザー数が少ないことも影響しています。
Spotifyの世界の月間アクティブユーザー数が6億1500万人といわれている中で、日本の月間アクティブユーザー数は1415万人程度といわれています。
Xの世界のアクティブユーザー数5億7000万人に対して、日本は6700万人いると言われていることに比べると、Spotifyにおける日本のシェアが、かなり低いことが分かって頂けると思います。
実際に、現時点でSpotifyのグローバルの週間チャートのトップ200には日本のアーティストのアルバムは一つも入っていないことが象徴的です。
そうした中で、Number_iのアルバムが、その週のデビューアルバム限定とはいえ、Spotifyの世界チャートの4位に入ったことは快挙と言えるでしょう。
海外に広げる地道な努力が結果につながる
こうした快挙には、年始にデビューしたNumber_iが、4月に世界最大の音楽フェスである「コーチェラ」に出演して、海外のファンに直接パフォーマンスを披露できたことも貢献していると考えられます。
参考:Number_iとAwichのコーチェラ出演に学ぶ、日本の音楽の世界への広げ方
ただ、おそらくそれ以上に、Number_iやTOBEが、地道に海外に楽曲を広げる努力をしてきた積み重ねが重要だと言えるでしょう。
例えば、Number_iのX公式アカウントは、開設当初から英語メインで投稿を続けています。
また、Number_iのデビューのタイミングからSpotifyと連携して、屋外広告を米国等で何度も展開していることも効いていると考えられます。
参考:デビュー曲がいきなりYouTubeで世界1位。「Number_i」と「TOBE」の無限の可能性。
さらに、Number_iのメンバーが、Stationheadで頻繁に公式のリスニングパーティーを開くなど、サブスク型音楽配信サービスの普及に貢献する企画に注力されているのも着実に海外ファンの増加に貢献しているようです。
現時点のリリース日は国内チャート優先
ただ、現時点でのNumber_iのメインの活動は、まだあくまで国内中心であるということも言えそうです。
象徴的なのは、今回のアルバム「No.I」のリリースが9月23日の月曜日だったことでしょう。
実は国内においては楽曲のリリースは月曜日が一般的ですが、海外においてはグローバルチャートの集計期間が金曜日始まりなのもあり、金曜日リリースをするのが一般的です。
今回世界4位に入った「TOP ALBUMS DEBUT GLOBAL」も、集計日は金曜から日曜の3日間が対象のため、実は「No.I」のリリースが金曜日であったならば、さらに上位の3位以上にランクインできたのではないかという指摘もされています。
参考:Number_i"世界4位"報道、レディー・ガガ日本アカウントの発信から考える、日本のグローバル意識について
逆に言うと、Number_iとTOBEにとって、今回のアルバム「No.I」での最優先市場は日本であったということが言えるでしょう。
なにしろNumber_iはまだ今年1月にデビュー曲をリリースしたばかりのグループですから、1年目の今年は日本市場の足固めを優先するのは普通のアプローチと言うこともできます。
その状態で、Spotifyの「TOP ALBUMS DEBUT GLOBAL」で4位に入ることができたのは、最初から狙ってチャートインするよりも自信になる出来事だったはずです。
来年は本気で海外進出に挑戦する年になるか
そういう意味で注目なのは、Number_iの来年以降の活動の重心が明確に海外にシフトしていくかどうかという点でしょう。
海外のファンを増やすために、海外でのツアーの実施やフェスでの参加が重要であることは、既にBABYMETALや新しい学校のリーダーズなど、多数の日本のアーティストが証明しています。
ボーイズグループにおいても、LDH所属のPSYCHIC FEVERがタイを拠点に活躍しながら世界にファンを増やしているようですし、Travis Japanも海外留学をきっかけとしてチャンスをつかみ、今年のワールドツアー実施につなげることができました。
現在Number_iは、全国をまわる国内ツアーの真っ最中ですが、当然本気で海外進出を目指すのであれば、今回の「No.Ⅰ」を布石として、海外ツアーの実施や海外のフェス参加に展開する可能性は高いように思います。
冷静に振り返ってみれば、Number_iが結成された昨年の10月15日から、まだ1年も経っていないことになります。
1年でここまでの快挙を成し遂げた彼らが、2年目にどんな景色を私たちに見せてくれるのか。
今から楽しみにしたいと思います。