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9連勝中サントリー沢木敬介監督、好調チーム&話題の解説に触れる。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
沢木監督が解説した日本代表対ウェールズ代表戦。会場には約7万人のファンが集った。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

日本最高峰のラグビートップリーグが12月3日、約1か月間の中断期間を経て再開。前年度9位も今季開幕9連勝中のサントリーは、大阪・東花園市近鉄ラグビー場でNTTコムと対決する。今季就任した沢木敬介監督が、抱負を語った。

沢木監督は、昨秋のワールドカップイングランド大会に出場した日本代表にコーチングコーディネーターとして帯同。エディー・ジョーンズヘッドコーチと忌憚なく意見をかわせる日本人コーチとして、9月19日の南アフリカ代表戦の勝利につながるサインプレーを提案。それが後半28分の五郎丸歩副キャプテンのトライに繋がり、直後のコンバージョンゴール成功もあって29―29の同点に追いついた。試合は34―32で勝った。

11月29日の練習後に単独取材に応じるなかでは、練習でミスが起こった際のマネジメント方法についても話した。スポーツを問わずさまざまなシーンでも活用できそうだ。

日本代表は11月、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチのもと4つのテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこない1勝3敗で戦い終えた。沢木監督は、スポーツ中継チャンネルの「J SPORTS」でウェールズ代表戦を解説。敵地カーディフ・ミレニアムスタジアムで欧州6強の一角に30―33と肉薄するフィフティーンの姿を観て、低い声で端的なコメントを重ねた。その語り口はSNS上のラグビーファンの間で話題となった。

ジャパンの戦い方については忌憚のない意見を発信するが、かねて現体制への協力を惜しまない意思も示している。

以下、一問一答の一部(編集箇所あり)。

――練習の雰囲気、よさそうに感じました。

「雰囲気も、強度もよかったです。きょうは簡単なミスがありました。ただ、ミスした方がいいと思います。いまは」

――その心は。

「上手くいって心地のいい練習をするより、プレッシャーのなかでミスをしながら、ミスがあっても柔軟に対応できるようなチームにならなきゃいけないので。きょうのミスは個人のミス。(このことをきっかけに)個人の意識レベルも上げていきたい」

――ミスが続くと、練習を中断される場面も。

「ああいう時は、バッと止めます。集中力が切れている時に続けるのは、ただのコーチの自己満足になってしまうから。止めます。はい。シーズンを通して3回目ですかね。ああいうことはたまに、やります」

――改めて、後半戦に向けての準備を振り返ってください。

「ディフェンスの整備、セットプレーの再構築。あとはアタックのオプションの幅を広げ、そのなかでの絞り込みをやっています。まずはやってきたことにこだわりを持って、ベースはぶらさずにやっていきたい」

――日本代表へ招集される選手は2名と、例年に比べ多くはない。そのことはどう影響しましたか。

「チームとしてはよかったですけど、ジャパンに入る選手が増えるというのもいいことだと思う。残っている選手もチームにコミットしながら競争している。少しずつ、レベルアップはできていると思います」

――それはそうと、日本代表ツアーを観てどう感じましたか。

「インターナショナルレベルを経験している選手とそうでない選手の間の差。それは、ものすごくあると思います。(2019年のワールドカップ日本大会までの)3年をかけて経験値を積んでいくことは大事だと思います。

経験値をどう積ませてゆくか。そのプランニングは大事です。どの国もワールドカップ時に選手のキャップ数を気にするのって、それ(経験者にミスが少ないこと)が理由。いま南アフリカ代表がうまくいっていないのも、そこ(引退などで経験者が減ったこと)だと感じます。

また、ジェイミーもブラウニー(トニー・ブラウンアタックコーチ。チームの戦術略を構築する)も、とても優秀なコーチ。ただ、インターナショナルラグビーを経験したのは初めてだった。その意味でも、経験値を積んでいく必要があると思いました。

最後の試合(11月26日、25―38で敗戦)も、相手のフィジー代表はアンストラクチャー(互いの陣形が乱れた状態。現日本代表はアンストラクチャーからの攻撃を軸に据える)に持ち込んだら世界一、強い。普通のセオリーで行けば、ストラクチャーラグビーでフィジー代表の強みを出させないようにする。それをどこの国でもやる。ただ、いまのジャパンはアンストラクチャーに持ち込んでいるわけです。それを、どう考えるか、です。

フィジー代表のスクラムが強くなったといっても、いまのジャパンはそれに耐えうる力はあると思うんです。スクラムがいいのであれば、次はラインアウトを安定させるのが大前提。いくらアンストラクチャーに持ち込んでも、ラインアウトが捕れなければテストマッチは勝てないです」

――ラインアウト。現体制下では、正規の専門コーチがいないパートですね。

「(イングランド組は)スティーブ(・ボースヴィック、元イングランド代表キャプテンで、昨秋まで日本代表のラインアウトを指導。基本技術の徹底と相手防御の分析に長けた)を知っている。あのレベルを知っちゃったら、選手の眼も肥えてきてしまう。あれ以上のレベルのコーチングを求めるわけですから…」

――…日本代表と言えば、ウェールズ代表戦の解説が評判を呼んでいます。

「(笑いながら)まぁ…僕にやらせたらあんな感じです。万人受けはしないし、話も広がらないですけど、あんな感じならできます」

――試合の流れに沿って、重要なことは仰っていたように感じますが。

「そう観てもらえる人がいれば、よかったです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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