コロナの影響で都心マンションは値上がりする? 不動産業界が用地探しに積極的な理由
新型コロナウィルスの影響でマンション価格が下がる、という予測が広まっている。
景気の後退感で、購入意欲が下がり、販売が滞る。すると、不動産会社はたまらずに値引きを開始する、という図式が想定されるからだろう。
先行きの暗さに、不動産会社各社は頭を抱えている……そんな姿を想像しがちだが、実は不動産業界に別の動きが出ていた。
別の動きとは、都心部で新たな土地の売り物がでないか、用地探しに積極的というものだ。
狙いは、便利な場所のホテル
不動産会社が狙い目とするひとつは、都心のホテルだ。
新型コロナウィルスの影響で、都心部のホテルでは宿泊者が大幅に減少。これまで数を増やしてきた都心のホテルだが、一部整理する動きも出てきそう。できれば、その土地を購入したい、というのである。
ホテルが建つ場所であれば、利便性が高く、分譲マンションに最適だし、場所によってはオフィスビルや飲食ビル、もしくはそれらの複合でも利用できるだろう。
利用価値の高さから、ここ数年、都心部ではまとまった広さの土地が手に入りにくくなっていた。その希少な土地を入手できるチャンスとみているわけだ。
新築マンションがさらに値上がりする?
といっても、都心のマンションはすでに値段が上がり、必ずしも売れ行き好調というわけではない。にもかかわらず、新たな土地を仕入れて大丈夫なのだろうか。
心配になるのだが、そこでキーワードになるのが「インフレ懸念」だ。
今、国は悪化した経済を立て直すため、給付金を大規模に支給する計画を打ち出している。その総額は100兆円を超えるような規模になりそうだ。先進国では、どこも同様のお金が支給されそうである。
それだけのお金を用立てるために、日本をはじめ各国で国債の大量発行などが必要になる。そのことが日本経済、そして世界経済に少なからぬ影響を及ぼすことが想像される。
まず、想定されるのが、大金を支給することによるインフレの進行だ。インフレが起きれば、お金の価値が下がり、金、プラチナといった貴金属の値段がさらに上がる。そして、インフレに強いとされる土地の値段も上がる、というのが経済の原則である。
土地の値段があがれば、当然、新築マンションの価格も上がってしまう。
インフレが明らかになってからでは、遅い
今後の不動産価格を推測するとき、「新型コロナウィルスで経済が悪化する」可能性だけでなく、「大型の経済対策によるインフレ懸念」も考慮に入れなければならない。
インフレが起きれば、現在、「高すぎる」と言われる都心マンションの価格は、「それほど高くない」とみられるようになり、さらに高額のマンションを販売できる余地が生じる。
そうなったときに、新たな土地を探しても、もう遅い。インフレが明らかになったとき、都心部や郊外駅近の土地は大きく値段を上げてしまうからだ。「新型コロナウィルスの影響で、都心の不動産価格は下がる」と多くの人が考えている今こそが、用地取得のチャンスということになる。
まさに、危機こそがチャンスということなのか。これからマンションを買おうとする人には、あまりうれしくない動きではある。