正しいマスクの着け方、できていますか?
基本的にマスクではかぜやインフルエンザは予防できない
今年はインフルエンザが例年よりも早く流行り始めていることもあり、地下鉄内や街中でもマスクを着けている方を多く見かけるようになってきました。
昔から日本人はマスクを着けるのが好きと言われますが、そもそも(感染症に関しては)マスクは予防のために使うものではなく、感染してしまった人が周囲に広げないために使うものです。
でも日本では予防目的にマスクを着けている人を多く見かけますが、マスクを着けることでインフルエンザの予防効果ってあるんでしょうか。
結論から言うと、これまでの研究ではマスク単独でのインフルエンザやかぜなどの予防効果は示されていません(BMJ. 2015 Apr 9;350:h694)。
マスクを着用した人と、マスクを着用しなかった人とを比べても、かぜやインフルエンザの発症率に差はないとする報告が多数あります。
残念ながらマスクを着けていてもかぜやインフルエンザを防ぐことはできないようです。
しかし、一部の研究ではマスクの着用と手洗いとを組み合わせることによって予防効果があるとする報告もありますので、私自身は感染症を防ぐためのマスク着用を完全に否定するものではありません。
ただし、これは正しいマスクの着用ができていることが前提となります。
皆さんは正しいマスクの装着の仕方をご存知でしょうか?
マスクのつけっぱなしはダメ
まず、マスクを着けるタイミングです。
ときどき朝から晩まで一日中マスクを着けている方がいらっしゃいますが、感染対策的にはダメです。
なぜならば、マスクはしばしばウイルスで汚染されてしまうからです。電車で周りの人からくしゃみを浴びたとき、あちこちを触った自分の手でマスクを触ったときなど、マスクは一日の中でだんだんと汚染されていきます。
かぜやインフルエンザは飛沫(くしゃみや咳)だけでなく、触れることでもうつりますので、マスクに触れた手で目や鼻を触ったりすると感染してしまいます。
マスクは咳やくしゃみをしている人と接したり、表面を触ってしまったらこまめに付け替えることが大事です。そして、その後は手洗いをしましょう。
「だてマスク」として、ファッションとしてマスクを着けられている方もいらっしゃるようです。「だてマスク」のWikipediaによると「『マスクを完全に外すのは飯、風呂、寝る時だけ』と証言する者もいる。」とありますが、感染対策上はこまめに着け替えることをお勧めします。
マスクは着け方も大事
このマスクの着け方はどこがおかしいかお分かりでしょうか?
そうです、鼻が出ていますね。
これは通称「鼻マスク」と呼ばれる間違った着け方で、ときどき医療従事者でもこの鼻マスクをしていることがあります。
マスクは鼻から顎までしっかり覆わなければいけません。
こちらは厚生労働省のインフルエンザ予防啓発ポスターです。
「お口をカバー。手を洗いグマ」ということで、マスクと手洗いの重要性を伝える素晴らしいポスターですが、このカバも鼻マスクであって、正しくは口だけでなく鼻もマスクで覆わなければいけません。
カバにもカバの事情があるのだと思いますが(顔の解剖学的問題など)、鼻をしっかり覆わないと自分が具合が悪いときはくしゃみが飛んで周囲に感染してしまいますし、周囲に具合の悪い人がいるときは鼻にウイルスが入ってくるかもしれません。
またマスク表面にくっついたウイルスも手で触って鼻に入りやすい状態です。
ではこれはどうでしょうか。
「顎マスク」と呼ばれるもので、これもよく見かけます。
もはや鼻も口も完全にオープンになっており、マスクの役目が全く果たされていません。これをやるくらいならマスクを外しましょう。
この方も顎マスクです。鼻と口をしっかり覆うようにしましょう。
使わないときは捨てましょう!
さらに、マスクを着けていないときに肘に着けている人もいます。「肘マスク」と呼ばれます。
こういう人を見ると「あなた、そこに口ないでしょッ!」と思ってしまいます。
これも肘があちこちに触れてマスクの汚染の原因となります。
もったいないと思う気持ちは分かりますが、マスクは一度外したらそのまま捨てましょう。
最後に、マスクの着け方よりもインフルエンザ予防に大事なのは
というわけでマスクについてお話をいたしましたが、冒頭で述べた通り、マスクの着用についてはかぜやインフルエンザの予防効果は証明されていません。
それよりも科学的にインフルエンザの予防効果が示されているものがあります。
ワクチンです!
「なんかこのオッサン、ワクチンの話ばっかりやな」と思われるかもしれませんが、インフルエンザになりたくなくてマスクを一日中着けてるくらいなら、ワクチンを接種して予防しましょう!
詳しくは「こちら」をご覧ください。
今シーズン、インフルエンザに罹らないように、みんなで気をつけていきましょう。