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データからも一目瞭然! 八村塁が現時点でトップルーキーの仲間入りをしているワケ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シーズン開幕から期待以上の活躍を続ける八村塁選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【シーズン開幕と同時にチームの主力に】

 日本人として史上初めてドラフト1巡目指名を受け、周囲から多大な期待を集める中で初のNBAシーズンに臨んだ八村塁選手。彼にのしかかるプレッシャーの大きさは計り知れないものがあるが、ここまでの活躍は人々の予想をさらに上回るものではないか。

 11月11日現在(現地時間)で8試合すべてに先発出場し、平均出場時間28.5分(チーム3位)、平均得点13.6点(同3位)、平均リバウンド6.1(同2位)、平均シュート数12.5(同2位)が示す通り、すでにチームの主力選手の1人として機能している。

 残念ながら大黒柱のジョン・ウォール選手が長期離脱中ということもあり、チームはサウスイースト地区で最下位に甘んじている。それでも日本人ファンにとっては、毎試合八村選手がNBA公式戦のコートに立ち続けるだけでも、夢のような出来事だといっていい。

【ウィザーズのフロントも八村効果に大満足】

 八村選手の活躍を喜んでいるのはファンだけではない。いや、むしろ彼を獲得したウィザーズの方が八村選手加入による盛り上がりに大満足しているようだ。

 チームは公式ツイッターで、ホーム試合中に中継TV局が実施した取締役の1人、ジム・バンストーン氏へのインタビュー動画を日本語字幕付きで公開。日本メディアの熱心な報道ぶりとともに、それに伴う多大なマーケティング効果を手放しで喜んでいる。

【活躍度は有力新人の中でもトップクラス】

 八村選手の活躍ぶりは何もチーム内に限ったことではない。彼とともにドラフト上位指名を受けて鳴り物入りでNBA入りしてきた有力新人選手たちと比較しても、まったく引けを取らない活躍を続けているのだ。

 最近日本のメディアが、米国メディアの中から八村選手の新人王候補に加わる活躍をしているとの声が出てきていることを報じているが、現時点では間違いなく新人王有力候補の1人だと断言していい。

 その点については、しっかりデータが実証している。

【勝利への貢献度は新人選手で1位タイ】

 別掲の表を見てほしい。これは八村選手を含めたドラフト上位指名10選手に関して、『BASKETBALL REFERENCE.COM』に掲載されている3つのデータを表にまとめたものだ。

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 「MP」とは“Minutes Played Per Game”の略で、平均出場時間を示したもの。「PER」(Player Efficiency Rating)は、選手の影響力を示したもので、NBA平均が15として比較検証するもの。最後の「WS」(Win Shares)は勝利への貢献度を示すもので、数値が高ければ高いほどチームに貢献していることを示すものだ。

 ちなみに「WS」は試合ごとに加算、もしくは減算されていくもので、貢献度の試合が多ければ多いほど数値も高くなる。

 残念ながら全体の1位指名のザイオン・ウィリアムソン選手は負傷のため開幕から欠場が続いておりデータはないが、9選手の中で八村選手が相当に高い数値を残しているのが分かるだろう。

 「PER」でNBA平均を上回っているのは八村選手を含め3人しかいないし、さらに「WS」は0.3で、ジャクソン・ヘイエス選手と並び1位タイにつけている。

【主要データでは見えてこない八村選手の価値】

 いわゆる主要な個人成績では、2位指名のジャ・モラント選手(平均18.9点、5.5アシスト、3.5リバウンド)や3位指名のRJ・バレット選手(同15.5点、3.6アシスト、5.8リバウンド)の方が、八村選手を上回っている。

 だが前述の「WS」では、この2選手は八村選手より下だ。つまり八村選手のプレーは2人よりも質が高く、チームの勝敗に密接に関わっているということを示すものだ。ウィザーズが八村選手を9位指名したのも、こうした点が評価されていたからなのだろう。まさにチームが期待していた通りのプレーをしているというわけだ。

 もちろんシーズンはまだ始まったばかり。ウィリアムソン選手も復帰してくるし、20歳前後の他の選手たちも、NBAに順応していけばさらに活躍度を増していくだろう。

 だが八村選手も、そうしたトップルーキーたちの1人に加われるスタートを切ることができた。今後も彼のプレーに期待が膨らむばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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