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なかなか結婚相手に出会えない人が「やったほうがいいこと」世界的な哲学が示唆

ひとみしょう哲学者・作家・心理コーチ

実存主義の父であるキルケゴールはこう言ったとか、フランスの精神分析の権威であるジャック・ラカンはこう言ったなどという話は、それを精確に記そうと思えば、どうしても難しい話になりますので、今回はざっくりと何人かの哲学者の思想を総合的に捉えてお話したいと思います。

さて、婚活パーティーに行ったり、マッチングアプリをやったりしても、なかなか結婚相手に出会えない人がやったほうがいいことがあります。それは、あなたが意図的に隠しているものを表に出すことです。

世界の哲学者たちの指摘

世界の哲学者たちがしばしば指摘するように、私たちは自分「を」生きているのではなく、他人の人生を生きています。

例えば、経済学になどまったく興味がないにもかかわらず「偏差値が高い大学かつ就職に有利な学部に進学すれば有利だ」と思って、経済学部に進学するとか。本当はアニメが好きだからアニメの専門学校に行きたいと思っているにもかかわらず、アニメの専門学校に行ったら高校の同級生に見下されるかなと思って、その気持ちを押し殺し、就職に有利な大学の経済学部に進学する……。こういったケースは決して珍しいものではないと、多くの人が感じるのではないでしょうか。

「世間の基準」と自分が思っているところから外れないよう、細心の注意を払いつつ、私たちは暮らしています。だから、なかなか結婚相手に巡り合えないのです。

ところで、婚活パーティーやマッチングアプリというのは、データの世界です。すなわち、他者が見て「より良い」と思う肩書や学歴、年収などのデータが揃っていれば勝負しやすい。もちろん、データだけで結婚相手が見つかるとは思えませんが、しかし、私の聞いた話だと、お医者はマッチングアプリに登録すれば向こうから複数の女性が寄ってくるそうです。

人を好きになるとはどういうことか?

他方、私たちが人を好きになり、「この人と結婚したい」と思うのは決まって、相手の中に自分の居場所が見つかった時です。

つまり、相手が自分のために「空席」を設けてくれている、その感じを感じて「この人と一緒になりたい」と思います。

もちろん、そういう感じを感じないまま結婚する人もいるはずです。しかし、相手の中に「自分のための空席」を感じ取るからこそ、私たちは他者と裸の付き合いをしようと思うのではないでしょうか。

その空席とはじつは、あなたが意図的に隠しているところです。

例えば、「こんなアニメを見ていると人に知られたら恥ずかしい」と思って隠している、そこに、本来のあなたの良さがあります。

反対から言えば、世間の多くの人が評価すること――例えば、インスタ映えする暮らしをしているということは、あなたよりさらに「映える生活」をしている人に負けるだけですし、そこにあなたらしさ、つまり空席はありません。映える写真をたくさん撮っている女性とはつまり、「みんなのもの」であって、「あなただけのもの」ではないということです。

勇気ではなく正直さ

深夜にひとりでこっそりとマニアックなアニメを見ている事実を、婚活パーティーで告白するのは、一般的には、「勇気がいる」と言われます。たしかに勇気がいるのでしょう。

しかし、勇気というのがなんなのかよくわからないので、私は勇気という言葉をここでは使いたくありません。勇気がいるというより、「私が恥部と思っているところを見てよ」という開き直りに近い気持ち、すなわち「私は本当はこういう人間なのだから、こういう人間を受け止めてくれる相手を探しています」と正直に告白すること、つまり正直さが必要ではないかと思います。

自分の「いいところ」を隠して、結婚相手がなかなか見つからないと言う――これってへんだと思いませんか?(ひとみしょう/哲学者)

哲学者・作家・心理コーチ

8歳から「なんか寂しいとは何か」について考えはじめる。独学で哲学することに限界を感じ、42歳で大学の哲学科に入学。キルケゴール哲学に出合い「なんか寂しいとは何か」という問いの答えを発見する。その結果、在学中に哲学エッセイ『自分を愛する方法』『希望を生みだす方法』(ともに玄文社)、小説『鈴虫』が出版された。46歳、特待生&首席で卒業。卒業後、中島義道先生主宰の「哲学塾カント」に入塾。キルケゴールなどの哲学を中島義道先生に、ジャック・ラカンとメルロー=ポンティの思想を福田肇先生に教わる(現在も教わっている)。いくつかの学会に所属。人見アカデミーと人見読解塾を主宰している。

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