「せいぜい頑張って」って嫌味?どんな意味?気になる「わざわざ」についても解説【日本語の疑問】
例えば会社で上司から「せいぜい頑張って」と言われたら、どう思いますか?「どうせうまくいかないだろうけれど」といったニュアンスを感じて、「嫌味かな?」「本当は期待されていないのかな?」と思う人もいるのではないでしょうか。しかし、それは心からの応援の言葉かもしれません。
「せいぜい」は副詞で、漢字では「精精」と書きます。辞書で意味を調べると、下記のとおりです。
確かに「それほど期待はしていない」という意味でも用いられるので、嫌味に使っても間違いではありません。しかし上記1にあるとおり、「精いっぱい」の意味でも問題なく使用できる言葉なので、実際嫌味かどうかは場面によるのです。思うに、上記2の「たかだか」というニュアンスが混じって一人歩きしてしまったのではないでしょうか。
ちなみに、2015年2月~3月に実施されたNHK放送文化研究所ウェブアンケートによると、すべての世代において「せいぜいがんばってください」という言い方については嫌味だと感じる人の方が多く、また特に若い世代の方がその傾向が強いようです。20代~30代では、「いやみとして言っている(言った人に、純粋に応援する気持ちはない)」と回答した人は約7割を占めました(参考:「『せいぜい』がんばって」?|NHK放送文化研究所)。
本来の「精いっぱい」「上限まで」という意味を考えれば正しい日本語ではあるものの、誰かを純粋に応援したいときに「せいぜい」を使うと誤解されてしまうかもしれません。そのため、「力の限り頑張ってほしい」という気持ちを伝えたいなら、「全力を出せるように応援しているね」などに言い換えるのがおすすめ。逆に、誰かから「せいぜい頑張って」と言われたときは「嫌味かな?」なんて落ち込まず、ポジティブな意味で受け取ってみましょう!
おやさいの余談メモ ~「わざわざ」も要注意~
同じく嫌味にとられがちな言葉に「わざわざ」があります。漢字では「態々」と書き、通常なら行わなくてもいいことを意図的に行うさまを表します。
「わざわざ」は、何か親切をしてもらったときに「わざわざありがとうございます」などと使われることもある一方で、嫌味として使われることも。実際、実用日本語表現辞典では、とくに敬語で使用する場合について「相手に皮肉として受け止められてしまうことがあるため注意が必要である」とされています。また、わざとらしいの意味をもつ古語「態々し(わざわざし)」が語源とされていることからも、ネガティブな意味でとられないか、ちょっと心配な言葉だといえるでしょう(参考:態々(わざわざ)の意味や読み方 わかりやすく解説 Weblio辞書)。
したがって、心から感謝するときに使いたいなら、「ご丁寧にありがとうございます」「過分なお心遣いありがとうございます」「○○さんもお忙しいのに~してくださってありがとうございます」などと言い換えるのがベター。もちろん相手に気持ちが伝わるなら「わざわざ」を使っても問題ありませんが、とくにビジネスシーンなど相手と完全に打ち解けていない場面では、なるべく誤解を与えない言葉選びを意識してみては?