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乗用車の世帯普及率の現状をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 移動ツールとして乗用車は多くの人にとり必要不可欠な存在(ペイレスイメージズ/アフロ)

多様な属性による乗用車の普及率

公共交通機関の発達やライフスタイルの変化、お財布事情などを受け、都心部の若年層における乗用車離れが世間ではたびたび話題に登っているものの、多くの人にとって相変わらず乗用車が必要不可欠な移動ツールであることに変わりはない。そこで今回は内閣府が定期的に調査、結果内容を公開している「消費動向調査」の結果を基に、乗用車の普及状況についてその現状を確認していく。

まずは全般的な世帯普及率。単身世帯は47.5%、二人以上世帯は79.1%。単身、つまり一人身世帯では2人に1人近く、二人以上世帯では5世帯に4世帯が乗用車持ちとの計算になる。ちなみに総世帯で換算すると69.2%、1保有世帯あたりの保有台数は1.48台との結果が出ている。

↑ 乗用車世帯主性別普及率(2017年3月末)
↑ 乗用車世帯主性別普及率(2017年3月末)

必要度合い、さらには初期購入費用だけでなく、運用コストの負担(ガソリン代、駐車場代、そして車検代)を考えると、「単身世帯」の普及率が低いのは当然。特に「単身女性」は4割程度でしかない。

続いて「保有世帯単位」における平均保有台数。元データにある「保有の有無を問わず全世帯における」平均台数では無いので注意が必要。保有世帯における保有状況を把握するには、この値の方が理解しやすい。

↑ 乗用車世帯主性別・保有世帯あたり平均保有台数(2017年3月末)
↑ 乗用車世帯主性別・保有世帯あたり平均保有台数(2017年3月末)

「単身世帯」はほぼ1台。世帯を構成するのは回答者=世帯主だけなのだから、当然の話。趣味趣向で、あるいは仕事の都合上、複数台保有している単身者もいることから、実際には1台をわずかに上回る値が出ている。

一方「二人以上世帯」では大体1.6台前後。世帯主以外に配偶者、あるいは子供が別途保有している事例が多々あるものと考えられる。妻が子供の送迎、そして買い物やパートなどへの通勤で使われるパターン。

世帯主の年齢階層別では?!

続いて世帯主の年齢階層別保有率。男女別とクロスした大別世代区分と、より細かい年齢階層区分のデータが確認できるので、それぞれを基に別途グラフを生成する。

↑ 乗用車世帯主性別・年齢階層別普及率(2017年3月末)
↑ 乗用車世帯主性別・年齢階層別普及率(2017年3月末)
↑ 乗用車世帯主年齢階層別普及率(2017年3月末)
↑ 乗用車世帯主年齢階層別普及率(2017年3月末)

どの年齢階層でも「単身世帯」よりも「二人以上世帯」の方が普及率は高い。また、概して中堅層、30代から50代の保有率が高めとなる。金銭的余裕や行動力の高さ、そして「二人以上世帯」では必要性の増加(子供の送迎、仕事への出勤)など、多種多様な要因がこの年齢階層での普及率を押し上げている。

高齢層の動向では男性が「単身世帯」でもそれなりの普及率だが、女性が低い値に落ち着いている。「自分自身のための(単身世帯だから)移動手段」としての自動車への考え方の違いが表れているのだろうか。

世帯年収では大きな違いを見せる!?

次に世帯年収別普及率。

↑ 乗用車世帯年収別普及率数(2017年3月末)
↑ 乗用車世帯年収別普及率数(2017年3月末)

「二人以上世帯」では「400~550万円未満」までは年収と共に増加し、それ以降はほぼ横ばい。9割近くでほぼ飽和状態なのだろう。

気になるのは「単身世帯」。「300万円未満」で普及率が5割を切り、41.9%にまで下がる。必要性が薄く、さらに金銭的に維持できないのが理由と考えて間違いないが、厳しい現実でもある。とはいえ、必要のないものをコストを抱えながら保有するのは、無駄には違いないのだが。また高齢単身世帯の可能性も多分にある。

なお単身世帯で950~1200万円未満の層に多分なぶれが生じている。これは回答数が極端に少ないのが原因。2013年まではこれらをすべて合わせて「750万円以上」との項目をあえて作り対応していた。このぶれは仕方がないのかもしれない。何しろ該当世帯数が750~950万円では19世帯、950~1200万円5世帯、そして1200万円以上では11世帯しかいないのだから。

都市部と地方と

最後に世帯主=該当世帯全体の居住地域別の普及率。

↑ 乗用車世帯主居住地都市規模階級別普及率数(2017年3月末)
↑ 乗用車世帯主居住地都市規模階級別普及率数(2017年3月末)

グラフ中項目にある「別掲大都市」とは県庁所在地以外の大規模な都市を意味する。具体的には「札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、東京23区、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市」。

乗用車が敬遠されている、若年層は乗用車に乗らないとの話に対し、地方では乗用車が生活必需品の場所も多いのでそのような話は都市部のみだ、とする反論も良く成される。このデータの限りでは、それがある程度裏付けられる結果が出ている。人口5万人未満の市町村では、人口5万人以上の市よりも大よそ乗用車普及率が高い。

また人口5万人以上の市に限ると、上記にリストアップした「別掲大都市」の低さが目に留まる。とりわけ「単身世帯」が低い。

もちろんこれは「大都市圏ほど公共交通網(バス、電車など)が整備されている」「乗用車を必要としない距離内に多種多様な施設がある」などの理由により、乗用車を保有する必然性が低くなるのが原因。またそれと同時にそのような大都市圏では、駐車場の確保には相当なコストがかかり、ランニングコストが底上げされてしまう。これもまた普及率の下落の一因ともいえる。

少子化、地方の過疎化と都心部への生活機構の集中化、ライフスタイルそのものの変化など、乗用車所有意向に関与しうる要素は次々積み増しされ、予想がつきにくい状況なのは否定できない。数年の単位で大きな変化が生じることは無いが、少しずつ、確実に社会の変化に対応する形で、各属性別の値が変わっていくことは間違いあるまい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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