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元阪神・呉昇桓が日本で草野球!? 激似の会社員が東京にいた

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表/KBO取材記者
阪神当時のオ・スンファンと呉スソファソさん(写真:ストライク・ゾーン)

韓国球界で1982年生まれの選手は「黄金世代」と呼ばれている。

日本でもプレーしたイ・デホ(李大浩)、オ・スンファン(呉昇桓)、キム・テギュン(金泰均)、そしてメジャーリーグで活動するチュ・シンス(秋信守)も1982年生まれ。偶然にも韓国プロ野球が発足した年でもある。

今年38歳となった黄金世代の中で、先日2人の選手が引退を決断した。キム・テギュンと韓国代表チームの二塁手として長年活躍したチョン・グンウ(鄭根宇)だ。

(関連記事:「史上最大の下剋上」に貢献した元千葉ロッテ・金泰均 38歳での現役引退を決断

プロ入り当時から知る彼らが、余力を残しながらグラウンドを去る切なさ、コロナ禍により十分な引退セレモニーが行われない寂しさを筆者は感じている。

いつかイ・デホやオ・スンファンにもユニフォームを脱ぐ日が訪れるのか。

そんなことを思っていた時、オ・スンファンによく似た人物が東京にいるということを知った。それは会いたい。連絡を取り、顔を合わせることにした。

そっくりさんは49歳の会社員

待ち合わせ場所は東京・墨田区の錦糸公園。東京スカイツリーが間近にそびえるその場所は、ぽかぽか陽気に誘われたファミリーが芝生にレジャーシートを敷いて、日曜日の午後を楽しんでいた。

その向かい側、金網で囲われた一角に2面の野球場がある。

「室井さんですよね」

そう声をかけてきたのは阪神の帽子をかぶった男性。顔を見た瞬間、思わず関根勤さん(ラビー)ばりに「似てる~」と声を上げてしまった。

その男性は広島出身で都内在住の49歳の会社員。オ・スンファンのそっくりさん「呉スソファソ」(以下、呉さん)として草野球をしている。

試合前のキャッチボールをする呉スソファソさん(写真:ストライク・ゾーン)
試合前のキャッチボールをする呉スソファソさん(写真:ストライク・ゾーン)

本人のような厚い胸板こそないが、顔つきやユニフォームの着こなし、骨格が似ているからなのか声のトーンもそっくりだ。

呉さんはオ・スンファンが阪神入りした2014年頃から周囲の人に似ていると言われ、呉スソファソを名乗るようになったのは2年前。知人である新井貴浩さんのそっくりさん、新丼(あらどん)貴浩さん、そして桑田真澄さんのものまねパフォーマーとして活動する、桑田真似(ますに)さんとの出会いがきっかけだ。

呉さんに本格的な野球経験はない。しかし「ご本人は投げる時に前の足(左足)を踏み込む前に軽くステップする特殊な投げ方なので、それをYouTubeで何度も見てまねるようにしています」と動きも本人に近づけようと努力を重ねている。

投球後の足の角度も本人さながらだ。左は2014年の沖縄・宜野座キャンプでの練習試合(写真:ストライク・ゾーン)
投球後の足の角度も本人さながらだ。左は2014年の沖縄・宜野座キャンプでの練習試合(写真:ストライク・ゾーン)

素朴な一般人のものまねプレーヤー

錦糸公園の軟式野球場では桑田真似さんが主宰する、「ものまねプロ野球チーム」と草野球チームの対戦が定期的に開催されている。呉さんもその一員だ。

筆者が訪れた日のメンバーでタレント活動をしているのは桑田さんだけ。他のそっくりさんは一般の社会人男性。彼らは草野球仲間の紹介や、対戦相手の中からプロ野球選手に似ている人を桑田さんがスカウトして集まった人達だという。

左から平田艮介(平田良介)、畠マネ クマ洋(畠山和洋)、まさかぐち智隆(坂口智隆)、石#琢朗(石井琢朗)以上敬称略(写真:ストライク・ゾーン)
左から平田艮介(平田良介)、畠マネ クマ洋(畠山和洋)、まさかぐち智隆(坂口智隆)、石#琢朗(石井琢朗)以上敬称略(写真:ストライク・ゾーン)

ということで、「芸人さんが何かやってくれる」と勘違いして見ると物足りなさを感じるが、「プロ選手似で野球好きの面々が、なりきりコスプレでプレーしている」と思って見るとかなり楽しめる。見慣れたユニフォームにわくわくし、純粋に没入している素朴さに魅力を感じた。

左からまね田大和(前田大和)、桑田真似(桑田真澄)、岸リトール孝之(岸孝之)、奥州恭伸(奥川恭伸)以上敬称略(写真:ストライク・ゾーン)
左からまね田大和(前田大和)、桑田真似(桑田真澄)、岸リトール孝之(岸孝之)、奥州恭伸(奥川恭伸)以上敬称略(写真:ストライク・ゾーン)

桑田さんが同公園でものまねプロ野球を始めたのは6年前の2014年。続ける理由に「墨田区の観光の名物になれば」という思いがあった。この日も公園内を散歩する人たちが足を止めて、グラウンドを眺めていた。

桑田さんがマウンドに上がるとやはりこのシーンから(写真:ストライク・ゾーン)
桑田さんがマウンドに上がるとやはりこのシーンから(写真:ストライク・ゾーン)

墨田区は世界のホームラン王・王貞治さん(福岡ソフトバンクホークス取締役会長)が生まれ育った場所でもある。試合が行われた野球場B面のバックネット後方には「僕の野球の原点」と記された王さんの記念碑があった。

原点といえば、昔の男の子がするものまねといえば、王選手の一本足打法が原点だったなぁ、なんてことを思った。

そっくりさんに対戦相手も興奮

試合は3-9でものまねプロ野球が敗戦。対戦相手のヒマラヤボーイズで投手を務めた男性は、「プロ似の選手と対戦して、特に畠山選手(畠マネ クマ洋さん)に投げた時は興奮しました」と話した。

その男性の顔立ちはというと、巨人の坂本勇人選手似。彼も今後、桑田さんにスカウトされてものまねプロ野球入りするのかもしれない。

この日、呉さんは3番レフトで先発出場。3回表に1イニングを投げて、結果は3失点。呉さんは「もし本人に会えたら、コントロール良く、速い球を投げる投げ方を聞いてみたいです」と貪欲だった。

マウンド上の呉スソファソさん(写真:ストライク・ゾーン)
マウンド上の呉スソファソさん(写真:ストライク・ゾーン)

せっかくなので、呉さんに現在オ・スンファンが所属するサムスンライオンズのユニフォームを着てもらった。

サムスンのユニフォームを着た呉スソファソさん(写真:ストライク・ゾーン)
サムスンのユニフォームを着た呉スソファソさん(写真:ストライク・ゾーン)

やっぱり似てる~。

本物のオ・スンファンは昨年メジャーからKBOリーグに復帰。今季7年ぶりに母国のマウンドに立ち45試合に登板、3勝2敗18セーブ、防御率2.64だった。韓国通算300セーブまであと5つ。来季も現役生活を続ける予定だ。

いつの日か、イ・デホ似の草野球プレーヤーにも会いたい。そう思いながらたそがれの錦糸町を後にした。

(関連記事:「清原の分身」として生きる48歳 リトル清原「仕事ゼロ」でも通す男気

◇次回のものまねプロ野球は11月23日(月・祝)12時から東京・錦糸公園で行われる予定。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表/KBO取材記者

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FM那覇)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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