世界を変えるジェネレーションZ「もうたくさん。銃規制を」立ち上がるアメリカの高校生
ワシントンに80万人
[ロンドン発]アメリカ・フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で生徒や教師ら17人が殺害され、19歳の卒業生が逮捕された銃乱射事件をきっかけに、高校生らが中心となって銃規制の強化を求めるデモ「私たちの命のための行進」が24日、全米各地や世界の主要都市など800カ所以上で繰り広げられました。
背景には、タカ派色をますます強めてきたドナルド・トランプ米大統領が「教師が銃を隠し持つ。特別な訓練を受け、銃を持って学校にいれば、もはや学校は銃器所有が禁止された場所ではなくなる」と教師による銃武装を求めたことに対する強い反発があります。
首都ワシントンでは約80万人(主催者推計)が目抜き通りを埋め尽くし、「もうたくさんだ」「私たちは変わる」「もう黙っていてはダメだ」「全米ライフル協会(NRA、会員数500万人)のカネを政治から追い払え」と声を上げました。主な要求は半自動小銃を含め攻撃用兵器や大量の弾丸を装填できるマガジンなど殺傷能力の高い火器の販売禁止です。
キング牧師の孫娘も「銃のない社会」訴え
人種差別撤廃に取り組んだ黒人公民権運動指導者、故マーチン・ルーサー・キング牧師が1963年のワシントン大行進で「私には夢がある」と訴えたナショナル・モールの近くに特設されたステージから孫娘のヨランダ・リネー・キングちゃん(9)がこう訴えました。
「私の祖父には夢がありました。4人の小さな子供たちが肌の色ではなく、個性の中身で判断されるようになることです。私も夢があります。もう(銃乱射事件は)たくさんです。銃のない世界になるべきです。おしまい」
そして「世界中、国中に私たちの声を届けましょう。私たちは偉大な世代になりつつあります」とアピールしました。ヨランダちゃんと登壇したマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の生徒ジャクリーン・コリンさんも一緒に訴えました。
3月24日が18歳の誕生日だった犠牲者のために、同高校の同級生が「ハッピーバースデー」の合唱を呼び掛け、参加者の涙を誘いました。どうして銃文化の根付くアメリカでこんなに大きな銃規制を求める抗議活動が起きたのかと言えば、人口構成と関係があります。
アメリカの国勢調査局のデータから2018年の人口構成を見ておきましょう。高校生世代が他の世代と比べて決して少なくないことが分かります。
ジェネレーションZとは
さらに世代ごとの人口構成を見てみると次のグラフのようになります。
グレート世代(91歳以上)210万人
サイレント世代(73~90歳)2445万人
ベビーブーマー(54~72歳)7277万人
X世代(38~53歳)6553万人
ミレニアル世代(20~37歳)8074万人
Z世代(0~19歳)8224万人
世代の定義にはばらつきがありますが、少子高齢化が進む日本と違って、アメリカではジェネレーションZ(Z世代)の人口が一番多いのです。インターネットのない世界を全く知らないZ世代の多くが2001年の米中枢同時多発テロのあとに生まれ、08年の世界金融危機をくぐり抜けてきました。
アメリカ社会が分断、二代政党の共和党と民主党が激しく対立し、機能不全に陥った政治ばかり見てきた世代です。既存政党に何も期待できないため社会や経済の問題を自分たちで解決していくしかないという意識を非常に強く持っています。
米ノースイースタン大学の調査では政治家を一番の自分のロールモデルと見ているのはZ世代のわずか3%でした。銃規制の抗議活動を見てもZ世代がその前のミレニアル世代と違ってアメリカを大きく変えていくインパクトを持っていることが分かります。
トランプ大統領に反発するように行動を起こし始めたZ世代が今後、環境や医療、ジェンダーの問題で大きな影響力を持つのは間違いないでしょう。
(おわり)