韓国に強硬姿勢に出た北朝鮮の次の手は? 軍事パレードも?
金正恩委員長が昨年末に開催された労働党中央委員会全員会議(12月28-31日)で「世界は我々が保有することになる新しい戦略兵器を目撃するだろう」と予告してから半年が経つ。
米国や韓国では「もうそろそろ」と待ち構えているが、今のところ、北朝鮮は「まあだだよ」という感じのようだ。
過去の事例を参照すると、2017年9月4日に行った6度目の核実験(水爆実験)は「我々が今までに見せてきた核戦略武力の味をとくと見届けることになるだろう」との外務省の「予告」があってから20日後に、同年11月29日に発射されたICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星15号」は「我々が敵の制裁と封鎖、軍事圧殺策動を水の泡にし、核武力完成目標をどのように達成するかを米国とその追随勢力は自分の目ではっきりと見ることになるだろう」との「労働新聞」の予告があって48日目に発射されている。
予告から発射まで最も長かったのは「火星12号」である。金正恩委員長が2017年3月19日に高出力エンジンの燃焼実験に立ち会った際に「今日成し遂げた巨大な勝利がどのような意義を持つか、世界が目の当たりにすることになる」と予告してから56日後の5月14日に発射されている。
こうしてみると、金委員長が予告した「新しい戦略兵器」はどうやらミサイルでも、核でもなく、現在建造中のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)が3発搭載可能な新型潜水艦を指しているようだ。まだ、完成に至ってないのか、進水のタイミングを見計らっているのかどちらかだろう。
新型潜水艦のお披露目まで時間がかかるならば、それまでの繋ぎとして軍事パレードを決行することも考えられる。今月25日は朝鮮戦争勃発70周年に当たる。
金正恩政権は2012年に発足してから軍事パレードを6回行っている。中でも2013年は7月27日の朝鮮戦争勝利(休戦協定)記念60周年と9月9日の建国65周年と、2度も行っていた。また、米朝開戦危機にあった2017年の年も「4月25日」が人民革命軍(抗日パルチザン部隊)創建85周年だったこともあって盛大に行われていた。
最後に軍事パレードが行われたのは一昨年(2018年)2月で、金正恩政権下で軍事パレードが厳冬の2月に行われたのはこの時が初めてであった。それもこれも、この年の2月8日は人民軍(正規軍)創建70周年と節目の年だったからである。
平昌五輪開幕(9日)の前日に行われたこの「軍創建70周年軍事パレード」で金委員長は17分にわたって演説を行い、「米国とその追随勢力がせわしく騒ぎ立てている現情勢下で人民軍隊は高度の激動状態を維持し、戦う準備に拍車をかけなければならない」と檄を飛ばしていた。
この年の軍事パレードは5日前に労働新聞が「8日に我が軍と人民は軍創建70周年を盛大に記念することになる」と予告していた。軍事パレードを強行する場合、前例に従えば、来週土曜日(20日)頃には予告があるかもしれない。
北朝鮮は実は、今年2月に軍事パレードをやる予定だった。節目の年ではないが、ハノイ会談が決裂したことや昨年末まで米国が北朝鮮の要求に応えなかったことから米国との対決姿勢への回帰を宣言し、年末の党中央委員会全員会議で国防力の一層の強化を打ち出していたからやる必要性があった。実際に平壌近郊の美林飛行場で大規模閲兵式を準備していた。それが1月下旬から発生した新型コロナウイルスによって中止となった。
軍事パレードは通常は閲兵式と群衆示威がセットになっている。前回のパレードでは軍人が延べ1万3千人、平壌市民5万人が金日成広場に集結していた。コロナウイルスの感染拡大を警戒するならばとてもできないだろう。
しかし、実際はどうかわからないが、北朝鮮は「感染者はゼロ」を公言している。人民は予防のためマスクを着用しているが、北朝鮮は3月に行われた平壌総合病院の着工式でも、また5月の順天肥料工場の竣工式でも1万人規模の群衆を動員していた。今も、数千人の市民を動員して韓国の宣伝ビラ批判集会を連日、開いている。
軍事パレードの決行は感染対策が成功していることを証明できるし、昨年5月から今年4月まで発射実験を繰り返してきた北朝鮮版「イスカンデル」や「ATACMS」を含む一連の新型単距離ミサイルや巡航ミサイル(空対地ロケット)さらには大口径放射砲(多連装ロケット)を見せつけることもできる。北朝鮮は新型単距離ミサイルの発射が成功する度に「米国には苦悶となるだろう」と豪語していた。
今朝の韓国大手紙「東亜日報」は2017年11月に「火星15号」が発射された平安南道の平城で「先月25~27日にかけてICBMを装着した移動式発射車両4~5台が試験運行(test driving)しているところを米当局が補足した」と報じていた。
試験運行が2週間後の軍事パレードへの準備とみても不思議ではない。