「一番のライバルは現金」新しい金融のかたちを創るOrigami Payの康井社長にインタービューした
[シンガポール、ロンドン発]世界最大級のフィンテック(金融とテクノロジーの融合)・イベント「マネー20/20」が3月13~15日にシンガポールで開かれました。「未来マネーの祭典」がアジアで開催されるのは初めてのことです。
イギリスに次いで規制の枠組みを柔軟にしてフィンテックの開発と活用を促進する「サンドボックス」制度を導入、東南アジアのフィンテックハブを目指すシンガポール。
アジアや世界から集まった超スマートなテクノロジー・スタートアップの中で日本の若者も注目を集めました。スマートフォンのお支払いアプリ「Origami(オリガミ)Pay」の康井義貴・代表取締役社長(Founder&CEO)もその1人。
「25歳の時に自分でやるしかないと決意しました。起業したらオンとオフの境界線が消えて、土曜も日曜もなくなり、常にオンの状態です」。アジアで成功した若い起業家4人と登壇した康井さんはこう話しました。
康井さんは1985年トロント生まれ。10歳から東京に住むようになり、シドニー大学や早稲田大学で学びました。米大手投資銀行リーマン・ブラザーズでM&Aアドバイザーとして働き、シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルでアメリカや日本、中国でのスタートアップへの投資を手掛けるようになりました。
そして新しい金融のかたちを創ろうと2012年にスタートさせたフィンテック会社がOrigamiです。クレジットカードを登録するだけで使えるようになるOrigami Payには現在、全国で2万店が加盟しています。超多忙な康井さんがメールでのインタービューに応じてくれました。
――アジアでのフィンテックの可能性についてお伺いできますか
康井さん「インドのPaytm(ペイティーエム)や、中国のAlipay(アリペイ)、WeChat(微信)など、各国それぞれ、スマホ決済がスピード感を持って浸透しており、日本でも同様にキャッシュレスが広がっていくものと信じて、サービスの提供に努めています」
――日本ではまだまだ現金決済が多い理由についてどう見ておられますか
「個人として『これだ』という風に断言するのは難しいのですが、委員を務めている経産省の会合でもよく課題として挙がります。日本は他国に比較すると金融教育が遅れている部分はあると思います」
「とは言っても、日本国内ではスマホを活用した金融サービスの出現からまだ日が浅いので、金融サービスとしてどれだけの経済合理性があるか、どれくらい認知度をあげていけるかが大事だと考えています」
――日本でどれぐらいのスピードでどれぐらいのシェア獲得を目指されていますか
「政府が昨年、10年後に40%のキャッシュレス化を目標としたように、今後ますますこれが加速するものと考えています。特に、本年はキャッシュレス元年として普及を促進させることができると考えています」
「オフライン(実店舗)決済は大きな市場なので、具体的な数値目標というよりもここで一定の存在感を持つことを目標にしています」
――ライバルは?
「圧倒的に現金比率が高い国内においては、現金が1番のライバルです。また、多様な企業がキャッシュレス決済サービスを提供することで、市場全体の発展につながることを期待しています」
――日本でビジネス展開する難しさについてどう思われますか
「海外と比較しても、特別難しいという風には考えていません。ただ、産業全体としてどのように盛り上げていくかが必要かと思います」
「例えばクレジットカード一つをとってみても、ダイナースがクレジットカードの仕組みを最初に始めて、それから他社が全く同様のサービスを提供していなければ、プラスチックカードを使用するという習慣がここまで根付くことは無かったように思います」
「同様に、スマホ決済についても、様々な企業がサービスを提供し、その利用を推進していくことにより、習慣化を目指すことが大事だと考えています」
――フィンテックが持つインパクトと可能性について教えて下さい
「インターネットの登場により、通信コストがほぼ無料になり、代わってFacebookやGoogleなどのビジネスが生まれたように、フィンテックによって金融のあり方が大きく変わっていくと考えています」
(おわり)