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11年前にワールドシリーズ優勝の瞬間をマウンドで迎えた投手が、40歳で球団に復帰

宇根夏樹ベースボール・ライター
セルジオ・ロモ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)OCTOBER 28, 2012(写真:ロイター/アフロ)

 今から18年前、2005年のドラフトで、サンフランシスコ・ジャイアンツは47人を指名した。セルジオ・ロモは、その25人目だった。指名順位は、28巡目・全体852位。それほど高い評価ではなかった。

 だが、ロモがジャイアンツで記録した515登板は、球団5位に位置する。リリーフ登板に限れば、3番目に多い。ロモは、2018年のタンパベイ・レイズで「オープナー」として先発マウンドに5度上がったが、それ以外の816試合は、すべてブルペンから登場した。

 また、84セーブは球団7位、141ホールドは最多だ。ジャイアンツ時代(2008~16年)のロモは、439.2イニングで奪三振率10.19と与四球率1.82、防御率2.58。2010~15年は6シーズン続けて60試合以上に登板し、2011~12年は両シーズンとも防御率1.80未満を記録した。

 2012年は、ワールドシリーズ優勝の瞬間をマウンドで迎えた。上の写真がそうだ。この年に三冠王となったミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)を、見逃し三振に仕留めた。カブレラは、最後もまた、ロモの決め球であるスライダーが来ると予想していたのだろうか。89マイルの速球に対し、バットを振ることができなかった。ロモは、その前のディビション・シリーズとリーグ・チャンピオンシップ・シリーズでも、シリーズ最後の打者を討ち取った。

 2016年のオフにジャイアンツを退団後は、ジャーニーマンとなり、7球団を渡り歩いてきた。そして、今月中旬にジャイアンツへ戻ってきた。

 ただ、今月初旬に誕生日を迎え、40歳となった。さらに、投げ続ける気はないらしい。ロモのジャイアンツ復帰を報じた、ジ・アスレティックのアンドルー・バッガリーの記事によると、3月27日にジャアンツの本拠地で行われるエキシビション・ゲームに登板し、そこでユニフォームを脱ぐ予定だという。

 キャリアを築いた球団と「1日契約」を交わし、その球団の選手として引退するのと、似たような形だ。そこに、「引退試合」もついている、といったところだろうか。

 2012年のワールドシリーズ優勝が決まった瞬間、フィールドにいたジャイアンツの9人中、その後もジャイアンツでプレーし続けているのは、ブランドン・クロフォードだけだ。現役選手も、クロフォードの他には、ブランドン・ベルトしかいない。今オフ、ジャイアンツからFAになったベルトは、トロント・ブルージェイズと1年930万ドルの契約を交わした。

 ちなみに、来月中旬に40歳となるカブレラは、今年がラスト・シーズンとなる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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