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「働き方改革」で賃上げ・デフレ脱却?=現実は厳しく、過剰期待は禁物

窪園博俊時事通信社 解説委員
働き方改革で物価上昇を上回る賃上げを確保し、経済の持続成長を目指す岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 政府が「働き方改革」を進めています。過剰労働を防ぎ、「ワークライフバランス」を改善する、男女格差をなくす、働く方の多様化などは望ましいことで、個々の課題をこなすのは実行可能と考えられます。一方、「働き方改革」では、労働市場の流動化を通じた賃上げとデフレ脱却も期待されます。転職しやすい環境を作れば、労働者はリスキリング(学び直し)に励み、全体として賃金が上昇。家計所得が増大して経済と物価が好循環で上がる、というシナリオです。ただ、デフレ脱却まで至るのは現状では厳しいのが実情です。過剰期待は禁物でしょう。

▼「働き方改革」は2017年に計画策定。18年に推進整備の法律成立

▼働き方改革では、経済復活に向けた賃上げが重要

▼日銀の金融政策運営も賃金上昇を通じた物価目標の安定達成を目指す

▼岸田首相、リスキリングや退職金課税などで労働市場の流動化を促進。賃上げで経済成長の持続を目指す

▼しかし、日本の低賃金はいくつも要因が重なり、打開は難しいのが現状

▼また、日本型雇用慣行は物価安定の自動装置となっており、このままではインフレ鈍化で賃金も伸び悩む公算が大きい

 わが国は、バブル崩壊後の長期低迷に際し、労使協調路線の下で、経営側は解雇をなるべく回避する一方、労組側は雇用安定を優先して賃下げを受け入れてきました。結果的に起きたのは、賃下げによるデフレ圧力の増大でしたが、同時に米国のように簡単に解雇されず、欧米対比で失業率がかなり低い、というメリットもありました。もし、終身雇用を見直して労働市場を流動化するなら、好況時に賃金は上がりやすく、インフレにもなる反面、不況時に失業者があふれ、失業率が大幅に上がる、という負の側面も覚悟する必要があります。労働市場の流動化とは、要は雇用の安定性が崩れることも意味します。好況時のメリットだけではなく、不況時のデメリットもよく考えた方がいいと言えるでしょう。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサー編集部とオーサーが共同で企画したキュレーション記事です。キュレーション記事は、ひとつのテーマに関連する複数の記事をオーサーが選び、まとめたものです】

時事通信社 解説委員

1989年入社、外国経済部、ロンドン特派員、経済部などを経て現職。1997年から日銀記者クラブに所属して金融政策や市場動向、金融経済の動きを取材しています。金融政策、市場動向の背景などをなるべくわかりやすく解説していきます。言うまでもなく、こちらで書く内容は個人的な見解に基づくものです。よろしくお願いします。

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