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高齢者自身は「高齢者」を何歳からだと思っているのだろうか(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 高齢者を区分する年齢的な境界線は?(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

60代前半では「70~75歳ぐらいかな」で過半数

高齢者、シニア、お年寄り、シルバー…年を取った人達の総称は色々とあるが、年齢の明確な定義は定められていない。高齢者に該当するであろう人達自身は、何歳を「高齢者」の境目と考えているのだろうか。内閣府が2015年3月に発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」(※)の結果から確認する。

次に示すのは、「一般的には何歳頃から『高齢者』だと思いますか」との問いに対する回答。5歳区切りで60歳以上から85歳以上まで、そして具体的な年齢の記述、年齢では判断できず、分からないの選択肢が用意されている。ただし男女の差は言及されていない。

↑ 高齢者とは何歳以上か(男女別・年齢階層別)(2014年)
↑ 高齢者とは何歳以上か(男女別・年齢階層別)(2014年)

全体では70歳以上との意見が29.1%でもっとも多く、次いで75歳以上が27.9%。さらに80歳以上で18.4%。おおよそ70歳から80歳ぐらいが「高齢者」としての区分の認識。男女別では男性よりも女性の方が、より年を取ってから高齢者と見なすとの意見が多く、自身の性別を基準においているようすがうかがえる。

年齢階層別ではきれいに「年を取るほど『高齢者』判定の年齢も上昇する」動きを示している。おおよそ75歳になると、過半数の人が自身を高齢者と見なすようだ。70代前半では4割近く。

一方でどの年齢階層でも1割ほどは「年齢では判断できない」との回答を示しているのも興味深い。高齢者の定義は人それぞれで、年齢以外、例えば身体的状況、心の変化、さらには自分が思っていればいつまでも高齢者では無いはずだとの認識を持つ人もいるのだろう(一応設問では「一般的には」との説明もあるのだが)。

世帯構成の違いで「高齢者」の意識に差は生じるのか

続いて世帯構成別に区分し直した結果を確認する。

↑ 高齢者とは何歳以上か(世帯構成別)(2014年)
↑ 高齢者とは何歳以上か(世帯構成別)(2014年)

本人と親が同居している世帯では、やや早いうちに高齢者の認識をする傾向がある。回答者とその親が同居している前提から推測するに、回答者自身は60歳以上の調査対象母集団の中でも比較的若い人が集まっているはずだが、自身の年齢そのものよりも、より高齢の親との同居に、自らも年を取っていること、高齢者入りをしていることを自覚してしまうのだろう。

「高齢者」の明確な、法的設定は無いため、今件はあくまでも当事者に近い年齢にある人たち自身の意見となる。若年層にも同じ質問をし、違いを確認できれば、さらに興味深い結果が出ることだろう。

余談だが、具体的な年齢区分を選択した人についてのみ集計をし直し、加重平均の形で平均値を算出したのが次のグラフ。

↑ 高齢者とは何歳以上か(具体的年齢回答者に限定した平均値、男女別・年齢階層別、歳)(2014年)
↑ 高齢者とは何歳以上か(具体的年齢回答者に限定した平均値、男女別・年齢階層別、歳)(2014年)

男性よりは女性の方が少し上、そして回答者が年を取るに連れて「高齢者」の境界線も上昇していく。おおよそ75歳が平均的な「自分も高齢者だな」と自認できるようになる年齢だ、と見ればよいのだろう。

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※平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査

2014年12月4日から26日にかけて層化二段無作為抽出法によって選ばれた日本国内に住む60歳以上の男女に対し、郵送配布・郵送回収形式で行われたもので、有効回答数は3893件。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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