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藤井聡太名人への挑戦権&残留争いは大混戦!~第83期順位戦A級中間展望~

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 第83期順位戦A級は残り3戦となっています。

 藤井聡太名人への挑戦権をめぐる争いは、全勝と1敗者が消えており大混戦に。
 一方、残留争いも大混戦です。

 ここまでの戦い、そして2025年に行われるラスト3戦について、ここから解説していきます。

6回戦までが終了。8・9回戦は一斉対局で行われる
6回戦までが終了。8・9回戦は一斉対局で行われる

挑戦権争い

3勝3敗の3名も、この後の成績次第ではチャンスが残されている
3勝3敗の3名も、この後の成績次第ではチャンスが残されている

 全勝はおろか1敗もおらず、4勝2敗に4名が並ぶ混戦です。佐藤九段が4連勝とスタートダッシュを決めたものの、そこから2連敗を喫しました。

 1月に始まる第74期ALSOK杯王将戦七番勝負で藤井王将に挑戦する永瀬九段と、2月に始まる第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負で藤井棋王に挑戦する増田八段も、2敗で先頭グループにつけています。
 調子を落としている佐藤九段。そして永瀬九段と増田八段はタイトル戦と順位戦の並行を余儀なくされると考えると、順位戦に集中できる佐々木八段にチャンスが多いかもしれません。

 最終戦ではこの4名による直接対決が組まれています。場合によってはプレーオフにもつれこむ展開も考えられそうです。

残留争い

順位の関係で、3勝3敗の渡辺明九段は降級の可能性がかなり低い
順位の関係で、3勝3敗の渡辺明九段は降級の可能性がかなり低い

 1勝の稲葉八段と2勝の豊島九段&菅井八段が残留に向けてピンチですが、その3名よりも中村八段と千田八段は前期成績に基づく順位が悪いため、この5名による争いとなっています。

 順位戦開幕時、豊島九段と菅井八段はかなり調子を落としていました。3連敗同士の対戦となった4回戦時には、負けた方が降級に大きく近づきそうな予感もありました。
 しかしさすがに地力のある二人で、両者とも調子をあげて勝ち星を重ねてきました。

 7回戦では稲葉八段と菅井八段の同門対決が、残留争いにかかわる重要な一戦です。
 稲葉八段が勝てば混戦に拍車がかかります。

 他の3名は挑戦権を争うメンバーとの対戦です。この3局の結果次第では、挑戦権争いも残留争いも混沌としそうです。

スケジュール

 さて、今後のスケジュールを見てみましょう。

1月7日(火):佐藤ー中村

1月14日(火):豊島ー増田、稲葉ー菅井

未定:渡辺ー永瀬

1月28日(火):8回戦一斉

2月27日(木):9回戦一斉

 渡辺明九段は怪我のため休場中で、渡辺ー永瀬の対局日程は決まっていません。おそらく1月28日の8回戦一斉対局以降となるでしょう。

 ここからは、一つの白星、黒星が大きな意味を持ってきます。
 今後も詳報をお伝えする予定です。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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