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元モーニング娘。鞘師里保が乳酸菌を推す広報ガール役で初主演「肩書きで括らず作品で何かを伝えられたら」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)テレビ東京

モーニング娘。のエースから、卒業後はソロアーティストとして活躍中の鞘師里保。一方で昨年は女優活動も増えたが、10日スタートの『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』では地上波の連続ドラマに初主演。食品メーカーの新入社員で、ヨーグルトを題材にした小説に登場するブルガリア菌を推す役どころだ。幼い頃からダンスと音楽に打ち込んできた中で、演技にはどんなスタンスで臨んでいるのか?

ヨーグルトを凍らせて食べています

――『推しを召し上がれ』で演じる朋太子由寿(ほうだいしゆず)はブルガリア菌を推していますが、鞘師さんは乳酸菌やヨーグルトに馴染みはありますか?

鞘師 めちゃめちゃあります。私、朝ごはんは軽くしたり、食べないことが多いんですね。でも、やっぱり何か食べたくなったら、ヨーグルトにするんです。

――ヨーグルトの中でもこだわりが?

鞘師 ずっとブルガリアヨーグルトを食べています。ドラマの宣伝で言うわけではなくて(笑)。あと、アイスクリームを食べたくなったとき、糖分を控えるために4個でパキッと割れるヨーグルトを買います。そのままでもおいしいですけど、冷凍庫に30~40分入れるとシャーベットみたいになるので、アイスの代わりに食べています。

――劇中の由寿は、生卵にヨーグルトを混ぜて食べたりもするようで。

鞘師 そのシーン、撮りました。変わった食べ方ですけど、お菓子ができるまでの過程で、そういう場面はあると思うんです。焼く手前だったり。実際、カスタードになりたい子たち、みたいな味でした(笑)。

ガチャガチャで食品サンプルを集めて眺めてます

――ファンから推される立場の鞘師さんが、推しているものはありますか?

鞘師 食品サンプル推しです。今回ご協力いただいている明治さんのチョコレートや果汁グミのミニチュアのキーホルダーもガチャガチャで取りましたし、特にテンションが上がるのは楽屋弁当ですね。カレーのオーベルジーヌやとんかつのまい泉、中華の喜山のお弁当が小さくなったものが売られていて。普段から楽屋に置いてあるのでコンプリートしたくて、ガチャガチャをやっていたんです。でも、生産している会社の通販サイトを見たら、全種類パックがあったので、速攻で買いました(笑)。

――買って、どうしているんですか?

鞘師 眺めてウフフとしているだけです(笑)。ディスプレイできるといいなと思いつつ、収納棚にある宝物ボックスの中のコレクションにしています。

――推しへの気持ちはわかると?

鞘師 由寿は人と話すとき、たとえば転勤のあいさつでも緊張が見えるんですね。でも、ブルガリア菌の話になった途端、饒舌になってベラベラしゃべり始めて。私も今、楽屋弁当のミニチュアの話で尺を取ってもいけないと思いながら話しているので(笑)、気持ちはすごくわかります。

演じるまでの道のりがわかると楽しくなって

――地上波連ドラ初主演になりますが、小さい頃からダンスに打ち込んで、モーニング娘。でデビューした鞘師さんが、演技に興味を持ったのはいつ頃からですか?

鞘師 演技をする機会はグループ時代からあって、ちょっとずつやらせていただきつつ、正直、苦手意識のほうが強かったんです。周りの方々から「向いていると思う。続けたほうがいい」と言われて、「本当かな?」と思いながら、そう言ってくださるなら……と1個1個チャレンジしてきました。その積み重ねで続けている状態なのと、同時にだんだん楽しくなってきた感じです。

――何かの作品で目覚めたわけではなくて?

鞘師 毎回それぞれ面白みは感じていた中で、『アノニマス』のとき、湯浅(弘章)監督と演技や役作りに関して、たくさんお話しさせていただいたんです。事前にリハーサルをしながら、お芝居の組み立て方を教わった結果、やり甲斐や楽しさが大きくなったので印象的です。

――『アノニマス』ではゲスト出演で、ネットでバッシングを受けた男性を信じる図書館司書の役でしたが、湯浅監督にどんなことを教わったんですか?

鞘師 相手役の方と会話する状況を想定してくださって、台詞を言いながら「この子の性格だと、こういうふうに話すと思うよ」とかアドバイスをいただいて、役を作っていきました。それまでは先に「こう話すんじゃないか」と想像して、そこをゴールに準備していたのが、役を演じるまでの道のり、辿り着くまでの順序が何となくわかった感じがして。「なるほど」となることが多かったです。

リズムを作るのはライブと演技で共通してます

――もともとの演技に対する苦手意識は、どんなところで感じていたんですか?

鞘師 ダンスや歌はリハーサルをたくさんして、やっとステージに立つことが多いんです。お芝居でも舞台だと稽古期間がありますけど、ドラマはほとんど自分で役を作って、撮影の日に1回テストしたら、すぐ本番。自分の知っていた世界とは違うなと、ちょっと距離を感じていました。

――今までで特に難しかった役はありますか?

鞘師 役が難しいというより、取り組み方で苦労してきました。今までいただいた役柄は、自分との共通点を見つけやすくて。でも、役を作る作業の中でもどかしさがあったり、「もうちょっとできた」となることが多かったです。

――ダンスや音楽をやってきたことが、演技に役立つ部分もありますか?

鞘師 ライブではどんなセットリストでやるか、ストーリー作りを意識しています。曲には元からリズムがありますけど、空間としてのリズムを自分で作らないといけない。そこは演技でどう話すか、どう相手に伝えるか、空気感を作ることとの共通点なのかなと考えています。

――ダンスグループ出身の女優さんから、「お芝居でもリズム感は大切」と聞いたこともあります。

鞘師 それはあると思います。歌のような一定のリズム感ではないですけど、役者たちで独自のリズムを作っていくことは、大事にしないといけないと思います。

ほっとけないかわいらしさを感じました

――今回の由寿役はどう組み立てていったんですか?

鞘師 今までいろいろ演技の機会をいただいてきた中で、自分のやり方みたいなものが何となくできてきたところでした。今回は連ドラではたぶん珍しく、撮影に入る前から全話の台本が出来上がっていて。リズムを作るという意味では、由寿の気持ちが変わるポイントがわかって、どういう人間なのか、各話の台本で読み取る以上の想像ができました。

――キャラクターとして魅力に感じた部分は?

鞘師 都会に出て慣れない環境にもがきながら、自分の信念を貫く意志はすごく強い人だと思いました。あと、人と人が出会い人生が成り立っていると、私が普段から感じているように、由寿も本当にいろいろな人に助けられていて。先輩にごはんに誘われて打ち解けて、仕事を頑張るきっかけをもらう。そんな場面が多くて、ほっとけないかわいらしさがある感じもします。

――今回も自分と重なる部分はありました?

鞘師 私はものにつまずきやすいんですね。ステージでもちゃんと階段を上り切れたら、拍手される節があって(笑)。そこで由寿にシンパシーを感じています。スタッフさんにも「すっとこどっこいなところをそのままやればいいよ」と言われました(笑)。しっかりしすぎないでいいかなと気が楽になり、ナチュラルに演じていこうと思いました。

家でスイッチが切れたらヘナーッと

――OL役は今までもありましたが、広報ガールについて調べたりもしました?

鞘師 今回はお仕事の内容がメインというより、由寿が成長していく姿を素直に演じられたらと思って。広報に関しては、台本をしっかり読み取ることを重視しています。

――会社勤めの雰囲気は、過去のOL役のときに掴んでいたとか?

鞘師 オフィスを舞台にしたドラマを観たことはあります。交番のお話でしたけど『ハコヅメ』とか、お仕事ドラマを参考にさせてもらいました。

――普段からドラマはよく観ているんですか?

鞘師 正直あまり観ていません。観るとしたら、洋画や海外ドラマが多いです。休業していたときは、『ブレイキング・バッド』や『プリズン・ブレイク』にハマっていました。長いシリーズだから、ちょうど良くて。

――由寿は広報部に来て、「愛想は良いしコミュニケーションも大丈夫」で向いていると言われます。そういう資質は鞘師さんにもあるのでは?

鞘師 由寿と同じで、めちゃくちゃエネルギーを使ったらできます。人と話すのは好きですけど、相手に楽しんでもらえることを意識しすぎてしまうときもあって。家でスイッチが切れて、ヘナーッとなったりします(笑)。

田舎から来て東京が怖い感じはわかります

――由寿と同じ経験はなくても、自分にも覚えがある心情はないですか?

鞘師 田舎から出てきた由寿が、東京の人混みや空の狭さに驚いているのは、私もいまだにあります。夜なのに暗いはずの空がネオンでオレンジっぽくなっていたり、地元の広島では見える星が見えなったり。「わかる、わかる」みたいなことがいっぱいあります。

――由寿は「東京怖い。会社怖い」とLINEしています。鞘師さんが上京したときは12歳だったから、なおさらでしたかね?

鞘師 怖いと感じることもありました。たとえばテレビの収録に行くと、キャストの方たちが皆さんかわいくて、キラキラしていてオシャレ。私はこの中にいていいんだろうかと、思ったりもしました。

――ストレスでお腹が痛くなったりも?

鞘師 緊張で眠れなくなったときはあります。今回のクランクインの前日も、全然寝られなかったです。主演ですし、作品についていろいろ考えてしまって。

――家に帰るやベッドにダイブしたりもしますか?

鞘師 全然ありました。昔の話ですけど、「疲れたー」って玄関でバタンとなって、気がついたら朝だったり、お風呂で湯船に浸かったまま、朝まで寝てしまったり。考えたら、危なかったですね。

留学中に日本のチョコに感動して泣きました

――由寿には辛いことがあったときに、必ず食べるチョコレートがあります。鞘師さんにそういうものはありますか?

鞘師 それで言うと、これは運命的な作品だと思ったんですけど、私も疲れたときはチョコレートで癒やされるんです。ニューヨークに留学していたときも、おやつに現地の甘~いチョコレートをずっと食べていました。

――アメリカのチョコは甘さが濃いですよね。

鞘師 厚さも日本のチョコレートの2~3倍あって。それを毎日のように食べていたら、ある日、語学学校の日本人のクラスメイトが明治さんの板チョコを持っていて、分けてくれたんです。1年ぶりに食べたら、何て繊細な味なんだと感動して、泣いてしまいました。

――日本では100円くらいで買えるものが。

鞘師 そうなんです。日本を離れて気付いたんですけど、あんなおいしいものが100円台で買えるって、何てありがたいんだと。今も仕事の合間に、もうちょっと頑張ろうというときは、チョコレートを食べています。

10代でメラメラしていたのが今はほのぼのと

――地上波連ドラ初主演に「キラキラした文字の並びに戸惑いを感じつつも、とても光栄です」とコメントされていました。

鞘師 言い方が難しいですけど、すごく芸能界的な感じがしたというか。グループにいた10代のときは、メラメラと野心が強かったんです。「大きい会場でライブをするぞ!」「いっぱいテレビに出るぞ!」とか。でも、今は「てっぺんを獲る!」ではなく、面白い作品をやりたいとか、内容にフォーカスしているんですね。そこにニュースの見出しみたいなキラッとした言葉がドーンと来たので、戸惑いがありました。

――芸能界的というと、アーティストとしての取り上げられ方とは、違う感じがするわけですか?

鞘師 自分の主演作がクランクインしました、ポスターができました……とコンスタントにプレスリリースが出て、いろいろな媒体でニュースにしていただくことはない日常だったので。すごいなーと思います。

生駒里奈さんと「記憶がないね」と話しました

――広報部の先輩役で、元乃木坂46の生駒里奈さんが出演されています。共にアイドルグループのセンター出身で、シンパシーを感じたりもしますか?

鞘師 オフィスのシーンで生駒さんが隣りの席なんですね。セッティング中や待っている間に、たくさんお話をさせていただいてます。ほとんど同じくらいの時期にグループで活動していて、「あれが楽しかったね」「こういうことがあったね」とか、世代的な話題がよく出ます。

――バックグラウンドが別のグループでも、共通点は多くありましたか?

鞘師 乃木坂46さんはトップを走ってらっしゃったので、大変さは違うと思いますが、お互い田舎から東京に出てきて。淡々とした生活から環境がガラリと変わり、毎日忙しくなった。そんな頃の記憶がない、という話をしました(笑)。

歌と女優と二つやる意識ではなくて

――今回の撮影の現場では、どんな演出を受けていますか?

鞘師 何か言われるというより、「こういう動きをしていいですか?」「こんなふうに言っていいですか?」と監督に相談しながら、やらせていただいてます。

――自分から提案しているんですね。

鞘師 そうですね。由寿が真面目に成長していくお話ではありますけど、遊べるポイントも結構あって、そのチャンスを逃さないように楽しんでいます。

――今、大きい意味で、演技で大事にしていることはありますか?

鞘師 最近は特に、完成形をイメージするより、根本の部分を意識して現場に向かいます。台本を読んで、役の芯みたいなものを考えて。そこさえできていれば、どんな演出をしていただいても、共演の方がどんなトーンで来ても、いかようにもできる。そういうことがこの作品では楽しいと思いながら、撮影しています。

――これからの鞘師さんは音楽も演技もしながら、どんな存在を目指していくんですか?

鞘師 それはすごく考えることが多くなりました。これから30歳に向かっていくので、どういうふうにお仕事ができたらいいのか。歌と芝居、二つやっていますという意識より、作品を通じて表現する。そう大きく考えれば、別に肩書きで括らなくてもいいのかなと。音楽でもドラマでも、作品にして何かを伝えることを楽しむ存在になりたいです。

Profile

鞘師里保(さやし・りほ)

1998年5月28日生まれ、広島県出身。2011年にモーニング娘。の9期メンバーオーディションに合格してデビュー。2012年よりセンターを務め、2015年に卒業。2021年にソロアーティストとして1stEP『DAYBREAK』をリリース。女優として、2022年に『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』で連続ドラマ初レギュラー。主な出演作はドラマ『ワタシってサバサバしてるから』、『めんつゆひとり飯』、『俺の美女化が止まらない⁉』、舞台『スルメが丘は花の匂い』など。

『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』

1月10日スタート テレ東ほか・水曜25:00~

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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